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ウ○コの力 -能力がクソだけど、なんだかんだでキャッキャもてはやされたり尊敬されたりして幸せに過ごす物語-  作者: フェフオウフコポォ


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19話 貧乏脱出実行


 場所はペラエス。

 タツが領主や魔法使い達に尋問を受け、そして大量の糞を手から放ったところまで時をさかのぼる。


 魔法使い達は王国の命を受ける程の力量を持っているが故に、皆それぞれ修羅場や鉄火場を超えた経験を持つ。つまり真に一騎当千、百戦錬磨の手練れ達なのだ。


 タツが手の平を自分達に向けた瞬間に魔法の発動を予見し、領主以外は各個対抗策をとっていた。


 水の魔法使い『ナレッシュ・ワッツ』と、火の魔法使い『ココ・ニコルス』は攻撃をされると同時に相手への攻撃を放った。


 6本の水の矢と、両手を目いっぱいに広げた程の大きな火の玉が、タツを仕留めんと飛び向かったが、突如現れた大量の糞により水の矢も火の玉も飲みこまれ、そしてその使い手も、その様を呆気にとられるように見ている事しかできなかった。


 風の魔法使い『ヴァンス・ビンス』、火の魔法使い『ファム・アシュリー』は先の2人とは違い防御に徹した。が、ヴァンスの風の壁も、ファムの火の壁も、その圧倒的な物量の前になす術はなく、2人ともあっという間に糞に包まれていくだけだった。


 紅一点の土の魔法使い『ジュリ・ヘラ』

 彼女は運が良かった。

 彼女もヴァンスやファム同様に防御に徹し、土の壁を作った。


 土の壁は物理的な面で糞に対して相性が良かったが、押し寄せる糞の圧力は凄まじく、作りだされた土の壁は、糞とぶつかった衝撃で根元から折れた。だが折れた土の壁が、押し寄せる糞に押されて倒れながらも彼女を壁際へと押しやる。やがて部屋の壁にぶつかるが、彼女の作り出した土の壁が、部屋の壁に先に当たり穴をあけた。


 運よく開いた部屋の壁の隙間によって彼女は圧死を免れ、そして押し寄せる糞に押されながらもなんとか隣の部屋に体を逃がす事ができた。だが、襲いくる圧は強く、彼女は隣の部屋に半分身体を逃がすも、糞の衝撃で気を失った。


 ……だが、生き残ったのだ。


 丸1日気を失った後、彼女は目を覚まし、そして領主や仲間があの一瞬で死んだことを知る。

 そして自分が見ていた相手が恐ろしい化け物だという事を理解し、最後の領主とのやり取りを思い返して震えあがる。


 化け物はこう言ったのだ。


 『そうですか。分かりました。

 じゃあ、この国の全てが私の敵ですね。』


 と。


 デオダード王国からの命令は、

 『ブラス砦で功績をあげたタツの力量を計り、ドウェイン殺害の真相を探れ』

 という内容だった。


 この命令には少し補足があり、


 優れているか、ドウェイン程の魔法使いを仕留める程の力を持っているようであれば、王都にて相応の地位を与え仕えさせる。


 敵対するようであれば、狩れ。


 そういう命令だった。


 だが、実際に当の本人を見たところ、パっとしないただの若造であり、肝心の魔法使いに必須の魔鉱石も一つしか身につけていなかった。


 王都に仕える自分達は最低で3個以上は身につけているし、力の差は開きすぎていると慢心していたのだ。

 その結果が、領主と魔法使いの仲間4人の死。


 ジュリ・ヘラは即座に馬を走らせ王都へと向かった。


 失態の言い訳を考えるも、全てはもとよりペラエス領主が怒りを買ったせいであり、その相手は死んだ。それを止めなかった自分の処遇も危ういだろうが魔法使いである限り殺される事は無い。

 だが、やはり何かしらの罰を受ける事になるのは間違いないだろう。


 それでも今すぐに伝えなければ、あの『けがれの魔法使い』によって王都は未曾有の危機に晒されるに違いない。

 もし自分が相手の立場であると考えれば、敵の喉元に容易に忍び込める状況。

 すぐにでも忍び込んで攻撃を始めるからだ。


 王城が戯言と切って捨て一切信じずとも、自身の友人や家族だけでも避難させなければならない。


 彼女は急ぎ、数日で王都へと辿りつき、すぐに知人親類を衛星都市へと避難するよう指示を出し、そして王城へと報告に向かった。


 彼女の報告は王城の政務官達には真偽半々に取られる。

 予想通り戯言と切って捨てる者が多かったのだ。それを理解しながらも


 『今すぐに国として許しを請うべき』


 と訴える。

 だが、彼女を政務官達は笑う。


 自分達の失態を隠す為、相手が強大過ぎるように見せ誤魔化そうとしていると思われたのだ。

 国という大きな存在がワケの分からぬ事の尻拭いをさせられるのはゴメンだ。と。


 ジュリはその対応に、まるでタツと対峙した時の自分を相手にしているような感覚を覚え、苦々しく思いつつも説得を続ける。すると、その必死さから政務官達の意見が片方へと寄り始めた。


 ――数日後にまとめられた答えは、ジュリの立場が悪くなる方にだった。

 強大な魔法使いであるというのならば敵対した責任を取ってから出直せ。と。


 その答えが言い渡され、ジュリが苦虫をかみつぶした時、彼らは彼女の報告が事実だったと知る事になる。


 なぜなら、その時タツは王都を見渡す丘の上に居たからだ。


 タツの放った大量の糞に襲われた瞬間。ジュリは『穢れの魔法使い』が襲ってきたと叫び、そして震えあがった。

 ジュリの恐怖に震える様を見ていた者から、デオーダド王都は『穢れの魔法使い』により呪われたと噂がたつようになる。


 そして、デオダード王国はデニスの発する噂が蔓延し、やがて

 「ペラエスが『穢れの魔法使い』タツと敵対し、その恨みを買い、王都がタツに呪われた。」

 と、人々は口にするようになるのだった。


 そんな噂を耳にしたデニスは呟く。


「タツよう……えらいことになってんぞ……」



--*--*--



 所と時は変わり、セグイン王宮から使者がやってきたタツは、自分の想定通りに事が運んでいくことに上機嫌そのもの。


 使者に対しては二つ返事で、いつでも王宮に伺う事を告げ、


「むしろ今から行こうか?」


 と、半分冗談を言うと、本当に即日で参議と会うことができてしまった。


 参議と飼料についてや、紙の取り組みを交えながら話をしていると、どうやらブラス砦が落ち、デオダードがいつ攻めてくるかもわからないことに相当な神経をすり減らしているのが見て取れた。

 そこで、タツがデオダード王国の衛星都市のペラエス領主が自分にケンカを売ってきた事。そしてデオダードという国に対して個人的にケンカをしており、デオダード王都をしばらくの間身動き取れないようにしてきた旨を説明。


 もちろん。


「はっはっは。

 そうであれば大変嬉しいし心強いが、そなたは慰めが下手だな。」


 と、笑われる。


「ですよね~。そう思いますよね~」


 と相槌を打つが、後日デオダード王都からなんとか脱出した間者により事実である事を知った参議が直接住まいに訪ねてきて。


「敵対しないよね?

 大丈夫?」


 と、確認が入る事になる。


「そっちから敵対してこない限りは大丈夫。

 住みやすいし、むしろ手伝い頑張るっ!」


 と答えたことで、取り計らいにより、貧しい国ながらも一等地の屋敷を与えられる事になるのだった。



「……テッサ。

 なんか近くないですか?」


「そうでしょうか?

 私は心地よい距離ですが?」


 ニッコリ満面の笑みを浮かべながら右腕にべったりくっついているテッサ。


「……アイーダ。

 折角広い屋敷に住めるようになって、二人にも個室の部屋があるのに……なんで二人とも部屋を使わないんですか?」


「そりゃあそうでしょう?

 家事をする奴隷まで付いてるから私達の仕事なくなっちゃったんだもの。

 そうなると私達の仕事は、タツを満たして癒す事だけになるじゃない。」


 左腕にべったりくっついているアイーダ。


 新しく住み始めた屋敷では、アイーダとテッサではない若い女の奴隷が二人も付いていた。

 正直……


 正直『やったぁ!』って思った。


 ……ただ、アイーダは屋敷付きの女奴隷に対して


 『手を出すんじゃないわよ!』


 と、トゲトゲしい感情を直接向けているし……

 テッサは逆に何もせずにニコニコしている。


 ただ、


 『手を出すなら出してもいいけど……覚悟なさいな』


 的な事を目だけ笑ってない感じだから、なんというか私も女奴隷達を誘えません。はい。


 ……というか、2人が分かり易い姿を私に見せている事も、直接私に対して口には出さないけれど、私が女奴隷に手を出す事を阻止するような意図があるようにも思える。


 与えられた新しい屋敷では、そんな心中休まらない環境になってしまった為、正直に参議に相談して女奴隷の二人を外してもらうように頼み対応してもらった。

 

 ……残念なんて思ってない。

 全然思ってない。本当に。


 参議が


「あの奴隷達は中々見目麗しい方ですからな……実は奴隷商から特別に借り入れておったのです。」


 とか言ってたけど……全然残念なワケないよ。


 なんせアイーダとテッサが居るんだもの。ね。

 うん。


 うん……


 ……


 ……はぁ。


 参議ともっと親しくなれば防衛特区の秘密も知れる可能性もある為、なんだかモヤっとした気持ちを仕事にぶつける事にした。


 まず飼料に関して、広大な砂漠が広がっている事もあり、とりあえずそこに極大糞動拳で、いくつか山のように出しておいた。

 乾燥しても問題は無いだろうし、もし中の方が発酵したらしたで、なにかしら報告があるだろうから、その時はまた考えればいい。

 むしろ半発酵くらいなら栄養増すんじゃないだろうか?


 紙の資源の象の糞も同じく砂漠にドンと山を作って置き、必要になったら持っていて使ってもらえるようにしておいた。


 こうしておけば、象の糞を運ぶという仕事も生まれるし、労働者が対価として金を得られれば、食料も手に入れやすくなるだろう。


 さらに追加で交易品の提案も行うことにした。

 交易品が何かというと、私が出せるのはウンコだからウンコを交易品にする。


 もちろんウンコと言っても、ただのウンコではない。


 『コーヒー』


 日本でも最高級のコーヒーの中に『ジャコウネココーヒー』という物がある。


 ジャコウネコにコーヒーの実を食べさせ、腸内で腸内細菌により豆が発酵し、酸味や香りが変化し、最高級のコーヒー豆となるのだ。

 食べさせた物をどうやって手に入れるのか。


 そう。糞。

 ウンコだ。


 ウンコから手に入れる。


 その他、『モンキーコーヒー』という猿の糞のコーヒー、さらに『ブラック・アイボリー』という象の糞のコーヒーもある。


 コーヒーの味と、腸内での発酵には深い関わりがあるのだ。


 これまでの経験から、私はソレも出せるはず。


 コーヒーの実だけを食べた、ジャコウネコの糞。

 コーヒーの実だけを食べた、猿の糞。

 コーヒーの実だけを食べた、象の糞。


 そうイメージすると出たのだ。


 やっぱり出るよね。プリっと。


 ハハハ。

 クッソ。


 ……いや、いいけれど。

 出て嬉しいんだけどさ。


 よく洗って、そして乾燥。

 砂漠だから乾燥はもってこい。


 乾燥が終われば焙煎して砕き、熱湯を注げば、最高級コーヒーの出来上がり。

 まずはセグインで認知度を上げるところから始めたらいいだろう。


 実際に参議にコーヒーを提案したところ、最初は微妙な顔をしていたが飲むと頭がスッキリする気がして仕事の効率が上がるように感じたらしく、ある程度の量を提供し続けると見事にコーヒーにハマってくれた。


 参議を実験台がわりにして、三種類のコーヒーを渡しつつ様子を見ていると、徐々に日本でもよく見るような『仕事中の飲み物はコーヒー』のような感じになってきたので、アウローラでもコーヒーが受け入れられるだろうと考え、量産の相談をする。


 すると、既に『コーヒー無いと頭の切り替え難しいわ~』状態になっていた参議は飛びつき、量産の許可と人員の手配。さらに流通実験などにも取り組んでくれる事になった。


 この頃から、参議が自宅での食事に誘ってくれるようになり伺うのだが、その際に自分の娘と縁談を持ちかけてくるようになってしまった。

 参議と着飾った娘さんとの食事の最中、迫りくる縁談を躱しつつ世間話に興じていると、やはりデオダードに対して不安が大きいらしく、一つ提案をする事にした。


 『デオダード方面の砂漠に山を作って、容易にセグインに来れないようにして見るのはどうか?』


 やはり参議は


「はっはっは、いくらタツ殿でもそりゃ無茶な。」


 とって笑った。

 物は試しと15日の時間をもらって砂漠に向かう。

 国境沿いらしき箇所で国境線を作るように極大糞動拳を連発し続けたところ、無事糞の山が出来た為、そのまま一か所だけ通行できるような谷間を残してその他には糞の山脈を作ってゆく。


 糞山脈構築を終えて砂漠から帰り、同行者からの報告を受けた参議は流石にもう笑うしかない状態になるのだった。


「タツ殿……いや、タツ様よ。

 ……セグイン攻撃したりしないよね?」


「だから、敵対しない限りしませんって!

 良い国なんですからもっと自信もって! ね?」


 その後、激しくなる縁談の話から逃げ帰り、アイーダとテッサ二人と一緒に食事をしながら過ごし、長旅の疲れから、つい二人に参議の縁談攻めの事をぼやいてしまった。


 すると、アイーダは

「そうよね。

 どうせ奴隷女となんかは結婚出来ないわよね。」

 と拗ね。


 テッサは

 「タツ様がお望みならば私は構いません。

 むしろそうすべきでしょう」

 と微笑みながら涙をこぼした。


 二人の立場はやはり奴隷であり、それは生涯消えない。

 そして二人の根底に深く染みついている。


 私は日本の感覚を持ちながら二人と結構長くいた為、ちょっとくらい愚痴ってもいいだろという油断をして、二人のデリケートな部分を考え無しに触れてえぐってしまったのだ。


 慌てながら


 「奴隷とか関係なく二人には傍に居て欲しいし、ちょっと愚痴っただけで縁談を受ける気はないよ。」


 と、必死に二人を慰めるのだった。

 拗ね、泣く二人を慰めながら、ふと思う。


 「強い酒が飲みてぇ」


 と。


 そう思った時、


 『ん? もしかして……』


 と、閃くのだった。


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