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ウ○コの力 -能力がクソだけど、なんだかんだでキャッキャもてはやされたり尊敬されたりして幸せに過ごす物語-  作者: フェフオウフコポォ


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17話 砂漠の王国セグイン(貧)


 砂漠と岩の入り交じった荒野。


 バスタードソードをたずさえた男と、ショートソードと短剣を携えた男が、岩陰に身を隠しながら、500メートル程離れた距離にいる、ライオンの頭と山羊の胴体、蛇の尻尾を持つモンスターを眺めている。


「タツよぉ……なんでまた急にこんな依頼を受けようと思ったんだ?」

「いやぁ、なんと説明したらいいか……神託…まぁ、神様の気まぐれなお告げがあったって感じです。レスターさん。」


「お告げねぇ……でも、コレはさすがに2人でこなすには厳しいぞ?

 あのキマイラなんてモンスターはよ。」


「多分ですが……この距離から攻撃できるんで無傷でイケます。

 セグインに入るまでに結構色々実験できましたし、単騎を落とすのにちょうどいい技も思いついたので。」


「おっ? マジか?

 最初は変な魔法だなと思ってたが、存外頼りになるな。ソレ。」

「私もですよ。

 まさかここまでとんでもない能力だと思いませんでした。

 まぁ、とりあえず対象までの距離もかなりありますし、もし失敗しても逃げる時間は十分でしょう。

 実践で試させて頂きますね。」

「あぁ。任せた。」


 『糞動拳ふんどうけん』は、かなり使い勝手の良い技で、特大、極大と飛ばすカッチカチウンコの大きさを自由に変える事ができた。


 ただ、想像したのがブラウン管サイズだの、トラックだの、10階建てビルだの、かなり変わった形を想像してしまっており、形状としては、ほぼ長方形のカッチカチウンコが飛んでいく為、距離が離れていると減速しやすく、威力は非常に小さくなってしまう。


 この『ウンコ飛ばし』の能力における、射出速度や形状、質量は、どうやら私の想像が大きく影響するらしく、具体的にどれくらいと想像できる事が重要だった。


 そこで中長距離の離れた相手を迎撃する為に、私が想像した形は『大陸間弾道ミサイル』だった。

 ミサイルの速度、大質量のカッチカチウンコ。


 あまりに危険な為、実験もあまりできなかったが、いい機会だ。

 キマイラで試させてもらう。


 手を離れたキマイラに向け、『大陸間弾道ミサイル』を想像する。


「行けっ! フングニルっ!」


 フングニルと名付けられたカッチカチウンコはその射出速度に自壊しつつも、超スピードでキマイラに迫り、そしてその胴を吹き飛ばした。


 だが、フングニル自身もやはり所詮はカッチカチウンコの為、1kmほど先ですべてがバラバラに分散し飛び散ってしまう。


「おおおっ! すげーなタツっ!

 一撃じゃねーかっ!」

「ええっ! 限界距離もわかりましたし、これなら楽にモンスターを狩れますよ! レスターさん!」


 レスターと共に、キマイラの首を取りに向かう。


 ……なぜこのような事をしているのかを説明しよう。


 タツはデオダード王国の王都に対して攻撃を行った。

 どのような攻撃かというと、まずは王都の中心である王城に対して10階建てビルサイズの様々な糞の混じった水分多めの塊をぶつけた。

 丘から見える範囲で放出したのだが王城は完全に埋まるには至っていない。

 王城にいる人間を皆殺しにすることが目的ではないので、それで良い。


 次に人糞、鶏糞、牛糞、豚糞といった家畜の糞を王都の周りを埋め尽くすように10階建てビルサイズを次々に飛ばし、王都を様々な大量の糞で囲った。


 そう。王都は四方八方糞だらけ。

 糞に包まれたのだ。


 これは無関係な都民を生き埋めにして殺すという殺生を避けたかった為の措置。

 だが、王国に対して十二分にダメージを与える為の戦略でもある。

 人を殺さずにどのようにダメージを与えるか。


 狙うは糞による環境汚染。


 衛生環境の低下、土壌汚染に水質汚染。さらに悪臭とガスによる大気汚染。

 囲われてしまっており、その量と大きさから脱出も命がけ。

 各衛星都市からも遮断され、物流もシャットダウンされる。


 そうなれば、備蓄で都民の食を賄う必要が出てくるが、王城も被害を受けているため、そちらを優先することになるから、都民は十分な支援を受ける事は出来ない。

 そうすると都民に不満がどんどん溜まっていく。


 やがて不満は爆発し、優先される特権階級を憎む連中も多く出はじめ治安も荒れる。

 その内、通行できる程度に除糞されるだろうが、そうなるまでの時間で、都民は王都を離れる決心を固め、各衛生都市に逃げ出し、あっという間に王都の人口は減少。


 そして逃げ、辿り着いた衛星都市で、王国がケンカを売ったが為に自分達が被害にあった事を耳にし、さらに王国に対して憤る。


 そうなればデオダードという国の求心力も大きく低下して王政ががたつき、衛星都市同士の権力争いも起き始めるだろう。


 国は人あっての国。

 人の心が離れ、国に人がいなくなれば立て直す事は不可能だ。


 その内、見限った権力者が別の国へと逃げ、残った愛国者達から奴隷の派遣などがされ、除糞作業が行われるだろうが、奴隷達も作業の辛さに逃げ出すだろう。


 だが、やがて片付き、治まった頃に逃げ出した権力者連中が我が物顔で帰ってきて、自分達の安全の為に非難と怒りの矛先を向ける先を探す。

 それが私になるか王になるかは不明だが、そこまではセグインに攻めに来る余裕はないはず。


 『窮鼠猫を噛む』のように、追い詰められたデオダードがヤケになってセグインを襲う可能性もあるが、その場合は私がセグインの先兵として糞動拳を見舞うことにしよう。


 セグインでデオダードに対抗する為の力を蓄える時間を得た事を確信しつつ、アイーダやテッサと共にセグインへ移動を始め、護衛のレスターは依頼完了で別れる事になっていたのだが、念の為に領主や魔法使いを殺害したことを伝えておくと一拍考えた後に


 「俺も一緒に行っていいか?」


 と言った。

 私の首狙いかとも思い、動向を希望する理由を問うと


 「理由は単純だ。お前についていった方が良い目が見れそうな気がする。

 見返りとして、護衛役を継続して引き受ける。 どうだ?」


 と申し出があり、彼の性格上、嘘を言っているようには見えなかった。

 良い目は見れない可能性が高い事を伝えたが、それでも楽しそうな気がすると引かなかった為、同行を許可した。


 こうして、私、アイーダ、テッサ、レスターの4人でセグインへと向かう事になり、砂漠を超え、ようやくセグインの王都に辿り着いたのだ。

 テッサはもう5年も前に離れた土地だったが、それでもどこか嬉しそうに見えた。


 セグイン王都はいくつかの街が寄せ集まって形成されており、王都が大きな街そのものとなっていて、各街の区画毎に様々な役割を持っている。


 王宮、鉱物収集街区、食糧生産街区、商業街区、工業街区、住宅街区、防衛特区。貿易特区だがどの街区も活気は無く、その原因は砂漠や荒野が多い事による食糧不足が大きな要因となっていた。

 家畜のエサとなる草も一定量のわずかな土地にしか生育しない為、慢性的な食糧不足となっており、交易によってなんとか食いつないでいる状態なのだ。


 私は家畜のエサとなりそうな物に、心当たりがあった。


 ……私の能力では、一つしか思い浮かばないだろうが『糞』だ。


 草食動物の中には糞を食べる動物も多い。

 有名なところではコアラなんかは幼い子供に糞を食べさせる。これは、ユーカリの毒を無毒化させる抗体を得させる為という説もある。

 チンパンジーやカバなんかも時々食べる。

 兎や象も食べるし、犬だってストレスを受けたりすると食べる事がある。


 野生動物においては糞を食すことがよくあるのだ。


 その中でも『ナキウサギ』は身体の大きさが小さく、消化器官の短さから1度目で十分にエサから栄養を消化吸収しきれない為、1度目に食料となる糞をしてそれをしっかり食べる。そして2度目の糞は完全な糞となる。


 これらの食糞行動に総じていえるのは『未消化で栄養が残った糞』があるということ。


 そして私は、それをきっと手から出せる。


 流石に他動物の糞をそのまま食べさせるのは害もあるだろうから、どのように飼料化したらいいか研究が必要になるのだが、セグインでは食糧難ということで肝心の生きた家畜を手に入れ実験をすることが非常に難しかったのだ。


 一番有益で望まれそうな取り組みに思えた為、どう形にしたものかと苦心をしていると、久しぶりに神託がおりてきた。


 『ギルドの困りごと解決するといいかもよ?』


 と。


 その神託を受け、ギルドに困りごとを聞きに行くと、モンスターも食糧不足からかキマイラが根城から離れた場所に出没するようになり、家畜場が襲われたらセグインは大変な事になる! と沈痛な面持ちの職員がおり、討伐を引き受けたという流れだ。


 こうして、無事に討伐を終了させ、私とレスターはギルドに一目置かれる事になり、私は家畜の食料となる糞の研究をする機会を得るのだった。


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