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ウ○コの力 -能力がクソだけど、なんだかんだでキャッキャもてはやされたり尊敬されたりして幸せに過ごす物語-  作者: フェフオウフコポォ


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13話 アイーダVSテッサ


「テッサ! アンタねぇ! 今更何のつもりなのよっ!

 ちょっと前まで上辺だけ媚びて、全然タツに興味無かったようなクセして!」


「昔は昔、今は今です。

 今は心からタツ様をお慕いしているのですからなんの問題も無いでしょう?

 それに私はアイーダのような打算じゃなく、心からタツ様を愛してますから!」


「なっ!? アンタ、よりにもよってタツの目の前で私が打算とか、そんなこと言うっ?」

「あら? 違いますか? 私てっきり自分可愛さに好きなフリをしてたのかと?」


「さ、最初はそうだったわよ、ええ、最初は! 今は違うわ!

 あれだけ好きって言ってくれて大事にされて優しく愛してくれる人を好きにならないワケないでしょう?

 っていうか、そんな人を好きにならなかったアンタが、突然変わり身した方が不自然すぎるわよっ!」


「ふふふ。所詮アイーダは『好き』程度。

 『好き』止まりなのよね。

 私はタツ様を『愛して』いるの。

 彼が望むのなら身代わりになって死ぬことだって喜んでしてみせるわ!」


「……あのぉ……二人とも……」


「そ、そんなの私だって、愛してるわよ。 ええ! そうよっ! 愛してるわっ!

 それになによ! タツは優しいから私達二人で初体験って言ってるけど、本当に初体験の相手になったのは私じゃない!

 私の方がタツに愛されてるわ。出会った最初からねっ! 最初に抱かれたのは私なのよ!」


「なっ!? そんなのほぼ同時みたいなもんでしょうっ!

 そんなこと言うのならキスと、お口の初体験は私なんですからねっ!」


「もう勘弁してくださいっ!」


 いがみ合い今にも掴み合いのケンカでも始めそうな二人の間に、まるで格闘技のレフェリーのように膝から割って入り、二人の胸を押しながら距離を取らせる。


「お願いだからっ!

 二人が二人そろって、私をみんなの前で辱めようとしているのは十分に伝わっているからっ!」


 私とテッサがオアシスに現れてすぐに二人の口げんかが始まり、その賑やかさで私が戻ってきた事を知った手練れやその奴隷と監視員達が遠巻きに面白がって見ているのだ。


 他の手練れ達から見れば、童貞を女奴隷に喰われ、そして骨抜きにされて女奴隷にベタボレになっている男という評価だろう。


 事実であるし、二人を好きであることは間違いない。


 ただ……ほんのちょっと前まで童貞だったとか、そんなプライベートな事を声高に言われるのは恥ずかしい。

 それに今の二人の勢いだとプレイの内容の詳細な事まで飛び火しかねない為、急遽ストップに飛び込んだというわけだ。


「あ………そ、その、ゴメン……タツ。」

「あぁ! 申し訳ありませんタツ様! 私ったらタツ様の事になると……つい……」


「いいから! いいからもう! 二人が私の事を好きでいてくれることは十分に分かって凄く嬉しかったし、私も二人の事は大好きだから! ね?

 とりあえず……もう…やめてください。お願いします……」


 二人がおずおずと距離をとり、私は小さくほっと息をついて後ろを向く。


 うわぁ。

 なに? この周りから集まる生暖かい視線は。



--*--*--



 とりあえず、生暖かい視線と『愛されてんなぁ』と飛んでくるヤジを受けながら、ドウェインと交渉がうまくいったこと、というよりドウェインが事故死(・・・)したことを伝えると、手練れ達から驚きの声があがった。


「事故死って本当かい?」

「一体どんな事故で!?」


 と、質問が当然上がる。

 だが、嘘を付けばそこから墓穴を掘る事があるため


「事故は事故ですよ。

 詳しいことは知りませんし『魔法使いが事故で死んだ』それ以上でも以下でもない。」


 と、一蹴する。


「で、皆さんにご相談なのですが、私はペラエスの領主に最も功績をあげてくる事を約束にしました。

 申し訳ないのですが、もし街に戻り『最も手柄を上げたのは誰か?』と質問があったら『ペラエスのタツ』とお答え願いたいのですが……もちろん皆さんと協力しての討伐であり、みな同様に手柄がある事ですので『もし敢えてあげるとすれば』と質問があった際に、私であると口添え頂けると嬉しいのです。

 ご協力願えませんでしょうか?」


 手練れ達の中で若干名渋い顔をする者がいたが、ほとんどの者は普通通りの顔をしている。


「いや、そもそも俺たちが到着したら終わってたんだから、当然の事だろう。

 むしろ俺達の協力など必要なく一人で討伐したと言わない方がおかしい。その提案なら俺達が礼を言うべきさ。」


 バスタードソードを持った手練れの一人がすぐに声を上げてくれたおかげで、私の意図する方向で全員の了承を得る事が出来た。


 監視員も同席しているが私とデニスさんの関係のような者ばかりに見えるし、この監視員は『手練れ達の死に様を確認する』という事が仕事。ブラス砦の実態を確認する事や逃げ出す者がいなかったかどうかの確認が目的の監視員であり、攻略が終わった今となっては、報酬をちょっとの袖の下に渡せば如何様にも辻褄が合わせられるだろう。


 和やかな雰囲気になった時、手練れ達の中から


「で、アンタはどうやって火の魔法使いを仕留めたんだ?

 そっちの奴隷の女……いや…恋人か。

 その人の為に頑張ったんだろう?」


 と声があがる。


 そりゃあ『殺してやるっ!』と狂乱していたテッサが、とても穏やかになっているのだから、そう思うのも当然だ。


 「……だから事故死ですよ。それ以上でも以下でもないです。」


 当然答えるワケも無い私。

 にべも無い返事しか答えないでいると渋々と言った感じで引いてくれた。

 向こうにすれば、もしかすると魔法使いを無傷で殺せるようなヤツの機嫌を損ねるのは宜しくないという気持ちもあるだろうから、強く聞いてくる事は無い。


 そんなこんなで説明とお願いも一区切りつき、手練れ達全員が解散した頃、若干テッサとの関係にむくれ気味のアイーダが私に不穏な事を告げる。


 『領主が報酬を支払わない可能性がある。』


 と。


 帰りが同じバスタードソードの男レスター・アビラと話をすると、彼も口約束でした報酬がそのまま払われる事はないと踏んでいた。せいぜい金貨10枚が関の山だろうと。


 ギルドに依頼した契約がある話もしたが、抜け道を作られる可能性も高く。

 アイーダの話を聞く限り、確実にそうなるだろう。


 どうしたものか悩んでいるとテッサが声をかけてくる。


「タツ様。

 もしペラエスにいて不満が溜まるようであれば、いっそのこと私の生まれ故郷……砂漠の王国『セグイン』へ渡りませんか?


 貧しい国ですが、領主は人を思う素晴らしい方でした。

 セグインで必要な知識の最低限は私が持っています。

 デオダードから戦争を仕掛けられたら、またどこかへ逃げる事になりますが……ペラエスでお辛いようでしたら、考えてもいいのかもしれません。


 ……タツ様さえ幸せで居てくれれば、私はそれだけで満足ですから。」


 と、優しく微笑む。


 『デオダード』という国でどう幸せを掴もうかと考えている私に、テッサの言葉は新しい可能性を与えてくれた。


 このまま領主に使い捨てにされる人生か。


 貧しく苦しく、さらに戦争で攻められる可能性があるが、自由のきく国で新しい人生を始めるか。


 ペラエスへと歩みを進めながら、考えるのであった。


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