8.ピンチの二人
部屋に閉じ込められた二人。どうにか脱出を試みる。
気絶から目を覚ました順二と優子は、自分達が見知らぬ部屋にいることに気付いた。何も無いが、古びていて狭い部屋。天井から1本の黄色い電球がぶら下がっていて、仄かに部屋を明るく照らしている。
「ここは?」
順二は優子を見て、呟いた。
「知らねぇよ。どこかの部屋に閉じ込められたんだろ」
優子はぶっきら棒に返した。
二人が突然の状況に戸惑っていると、ドアが開いて五、六人の見知らぬ男達が部屋に入って来た。皆、屈強で怖そうな風貌である。
「どうして俺達をここに?」
優子が男達を睨みながら言った。
「お前達が仲良さそうに歩いてるのがムカついたんだよ」
男のうちの一人が言った。
「仲良さそうって……」
順二も唖然として呟いた。
「俺達をどうする気だ?」
優子は男を睨み続けて言う。
「決まってるだろう。思う存分ボコらせてもらうんだよ」
そう言いながら二人に歩み寄る男達。
「マジかよ……」
優子は詰んだと思って呟いた。
「順二君、考えがあるよ」
「何だ?」
二人は小声で話し合った。
男達が二人の至近距離まで歩み寄る。次の瞬間!
バン!
突如大きな音を立てて、部屋の照明が落ちた。ブレーカーごと落ちたのだ。
「何だ何だ!」
急に真っ暗になり、焦り出す男達。
その間に順二と優子は部屋から脱出した。
「逃げたぞ! 追うぞーっ!」
男達も後を追い始めたが、体が壁やドアにゴンゴン当たるなどして上手く追えない。
「優子、良くやったな!」
優子は言った。
「私の手の近くに石があったから、それを後ろ手で投げて部屋のブレーカーのスイッチに当ててブレーカーを落とした」
「その石のお陰で俺達は救われたわけか!」
二人は逃げながら話した。体勢を立て直した男達も部屋を出て二人の後を追って来る。
二人は逃げ切れるまで全速力で走り続けた。