7.話し合い
順二と優子は、互いに戻る方法について話し合う。
とある休日、駅前のカフェにて順二と優子は向かい合っていた。店内は比較的空いていた。その窓際の席にて、二人の話し合いが始まる。
事の発端は、順二(優子)である。順二と優子(順二)は互いに連絡先を持っていたため、某トークアプリにて、順二から優子にこんなメッセージを送った。
〈今度、一緒に会わない?〉
これに対して、優子は
〈なんで?〉
と、返した。一緒に会うのは面倒だと思ったためである。しかし、
〈お互いこのままでいいと思ってる? 私は嫌だよ〉
と、情に訴え掛けた。
〈そうだよな、どこかで会って今後の解決策について話し合おう〉
優子も合意したのだった。
それから、会う日時と場所を決め、この日と場を迎えたのである。
「これからどうすりゃいいんだ?」
切り出したのは優子である。
「それよりまず、今の君の状況はどうなの?」
順二は訊き返した。
「今の状況って?」
「まずは、お互い入れ替わってから今までどうしてきたか気になるでしょ?」
順二は念を押すように言った。
「そうだよな、俺は……」
優子は勉強が危機的な状況になり、担任の先生に家庭訪問されて説教された後、心を入れ替えて仕方なく勉強に励み、何とか巻き返したことを話した。それを聞いた順二は、「はぁ……」と溜息を吐いた。
「私の身体で何やってくれてんの? って感じ。元に戻って迷惑を被るのは私なんだからね。行きたい大学に行けなくなったらどう責任取ってくれるの?」
「そんなこと言うけど、あんたの状況はどうなんだよ?」
優子は即座に訊き返した。順二も同様に説明した。
クラスの生徒たちにいじめを受けるようになったこと。運動が急にできなくなり、体育でも馬鹿にされるようになった。このままではまずいと思い、体育の先生に懇願してマンツーマンで教えていただき、何とか巻き返したことを話した。
「あんたも人のこと言えねぇじゃねぇかよ」
優子は反撃した。互いに不利は被って、何とかカバーしたことに変わりはないのだ。
「そうだよね、ごめん」
順二は自分の過ちを認めた。続けて、
「私達、どうやって元に戻る?」
最大のテーマはそこである。順二は優子を真っ直ぐ見て言った。
「さぁな、もう一回ぶつかるとか?」
確かに優子の提案は最も有力なように思われた。しかし、
「わざとぶつかるの?」
「うん、自転車でな」
「そんなの……」
順二は一瞬言葉を引っ込めた。しかし、やはり本心は伝えなければ。
「怖くてできないよ」
二人の間に数秒間の沈黙が流れた。
「そうか……」
優子は残念に思った。優子の提案は却下された。
その後もいくつか方法を話し合ったが、どれも実現は難しい。結局、今後の進展は無いまま、互いに引き続き現状の生活を送るということで解散となった。
店を出て、途中までは一緒に歩く。互いに無言のままだ。
その時、二人の背後から急に邪悪な気配が……。次の瞬間――!
「んんーっ!」
順二と優子は、それぞれ何者かに口を押さえられ、そのまま体を掴まれながら連行され、車に乗せられた。そして、車は即座に走り去ったのだった。