6.相互補助(優子ver.)
優子(中身:順二)は、高校の中間試験を控えて不安に駆られる。打開策はあるのか?
中身が順二の優子は、高校の勉強がただでさえ分からない上に、それを勉強する意味を見出せないでいた。しかし、先生の授業が面白く感じるようになってからは、少なくとも内容は聴いていた。そのお陰もあり、小テストでは半分以上の点数を取れるようになっていった。
二学期の中間試験も遂に二週間前に迫った。放課後、街のカフェで優子は、クラスの友人と今回の試験の範囲や内容などについて話し合っていた。
「ここは多分、この問題が出ると思う。答えを覚えて損はないかも」
クラスの友人が教科書を見ながら試験問題を予想していた。
「でも、ちょっとでも捻られたら答えられなくなるよ」
もう一人の友人も不安そうだ。
そんな二人の会話を、優子は黙って聞いていた。すると、
「優子ちゃんは、どうやったら解けると思う?」
急に振られた。優子の中身――順二は、「そんなこと、俺に聞くなよ」と心の中で思っていたが、入れ替わる前の優子は優秀だったのだろう。こうして、クラスの友人二人から頼られている。しかし、中身が中学一年生の順二にとって、高校の勉強は分からないので、
「逆に教えてもらいたいんだけど……」
と、恥ずかしながらも言ってみた。
「えっ、優子ちゃん。やっぱどうしちゃったの?」
「一学期は、そんな感じじゃなかったじゃん。勉強会でも私達に色々教えてくれてたじゃん」
などと、不思議がられた。
これはまずい。入れ替わった件については話していない――むしろ話さない方が良いため、本来の優子のキャラクターでないと怪しまれる可能性がある。
「ちょっと今日は調子悪いみたい。また、数日したら教えられるかも」
優子は何とか適切に対応し、友人達と解散した後、この件を家に持ち帰った。そして翌日、優子は策に出た。
翌日の放課後、優子は街の書店に足を運んだ。今回の試験範囲について、何か分かりやすい教材は無いか探した。その時、優子はこんな本に出会った。
『中学生でも高校の勉強が分かる本 科目別』
名前からして、いかにも優子が探し求めていた書物だった。手に持ち、ページをパラパラ捲った。見た感じ三〇〇ページほどの参考書だった。高校の現文・古文・数学ⅠAⅡB・英語といった科目に関して、それぞれ中学生でも分かるような記述や図解で構成されていた。
優子は、その本を読み進めた。とにかく、二次関数や三角関数など苦手分野が多すぎるので、全部理解しようと思うと困難を極めるが、取りあえずは自分の理解できるところから順々に理解しようと読み進め、問題もノートにペンを走らせながら解いてみた。その結果、中身の順二も高校の勉強が楽しいと感じるようになった。その調子で、優子は他の科目も含めて勉強を続けた。
それから二日ほどして、優子は友人二人に何とか教えられるレベルにはなった。中身の順二も違和感を感じざるを得ないが、口には出さないでいた。
そして、中間試験の期間を迎えた。優子も全ての科目の問題に挑んだ。
その後は答案返却だ。クラスの生徒も各々の点数に応じて喜怒哀楽の様相を見せる。優子の点数は次の通りである(以下、左側が優子の点数/右側が満点)。
現文:72/100
古文:68/100
数ⅡB:119/200
地学:82/100
日本史:61/100
世界史:62/100
英語Ⅰ:79/100
英語W:84/100
クラス順位は38人中9位、学年順位は320人中79位であった。
「一学期の優子ちゃんに比べると、まずまずの結果だよね」
「でも、地学とか英語はやっぱり強いね」
クラスの友人からも、それほど違和感は持たれなかったようだ。