もうすぐ成人です。
初潮についての表現があります。
それからそれから。
私は14歳になった。王様は24歳で、どんどん格好良くなるから心臓に悪い。私は彼をさらに好きになってしまう。だって彼は優しく、強い。私がさらわれてしまった時だって、助けてくれた。私が悲しいときは一緒にいてくれて、私が間違えたときは叱ってくれる。彼が私から離れていくことが、昔よりもずっと怖くなった。
寝室は別にあるのに、夜は未だに一緒に寝ている。親子だってもうこの年になって一緒に寝る人は稀だろうに、一緒に寝てるのはただの惰性かもしれない。
「今日は少し寒いから、先にベットに入って温めておこう。」
もう少しでとても寒い冬が来る。この国にも湯たんぽがあって、彼は冬になると「人間湯たんぽだ。」と言って私を抱きしめて眠るのがお気に入りだ。彼が望めば湯たんぽなんてすぐ用意してもらえるのに。
「なんでだろう、今日はすごく眠い。」
私ももうすぐ成人だから、少しずつ簡単なをお仕事を任せてもらっているけれど彼は年々忙しさを増しているように思う。そんな彼を待っていたいけど、なんだか、どうしても、目が、閉じてしまう…。
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「クララ、クララ起きて。」
「う?ギル?お勤めご苦労様…で…す。」
う、眠い…。
「私、寝ちゃったんですね、ごめんなさい。」
「いつも待っていてくれてありがとう。だけど待たずに寝てしまって良いからね。でも今日は…。うーん。ちょっとごめんね。」
よいしょっと声をかけて彼が私をシーツに包んで抱き上げる。
「なんですの??」
そのままベットから離れて歩き出した。
「こうやって抱き上げてもクララは大きくなったね。大人になったんだ。」
「初めてお会いした時から、7年経ちましたね。もうすぐ成人です。もう抱き上げるのも大変じゃないですか?」
大人と言われたのが嬉しくなるなんて、本当に子供だけれど。認められたようで嬉しくて笑いながら彼を見る。
「君が抱き上げられなくなったらもう私は隠居かな?」
「でもなんで急にそんなことを?」
彼の耳はなんでか真っ赤だ。
「本当にもう、大人の女性なんだね。ほら降ろすよ。侍女を呼ぶから、温まっておいで。」
そう言って彼は部屋にある浴場に私を降ろして出て行った。なんで急に浴場に降ろしたんだろう。私、もうお風呂には入ったのに。それに、大人ってなんでだろう。大人の女性?ってもしかして。
「きゃーーーーーー!」
「大丈夫ですか?!」
シェリーが浴場に飛び込んでくる。
「だ、大丈夫じゃないいいいいい!見られたああああ!」
シェリーは私の赤くなったネグリジェを見て手を合わせて喜ぶ。
「まぁまぁ!おめでとうございます!初潮がきたのですね。」
「全然良くないよ〜。ギルバート様にみ、見られたぁ。」
タイルの上に体育座りで泣く。私は前世こそ成人してたけど彼氏なんていなかったし今は14歳だ!14歳の女の子が好きな男の子に初潮を見られて平気な訳がない!はず!
「とにかく、タイルは冷えますから温まりましょう。」
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お風呂は出たけど。
「ギルに会いたくない…。」
「まぁまぁ。お気持ちお察ししますわ。しかし殿下も心配なさって眠らずにお待ちです。今日は汚れるのが心配でしたら、就寝のご挨拶だけして別れて眠られたらどうですか?殿下のベットも整えてありますから。」
「そうするわ。ありがとう。シェリーも夜更けにごめんね。」
「いえいえ。喜ばしいことですから、立ち会えて嬉しいくらいですよ。」
シェリーはそう言って出て行った。き、緊張する。
ギルはベランダの扉の前に立ってワインを飲んでいるみたい。
「不浄なものをお見せして申し訳ありませんでしたわ。お騒がせいたしました。」
恥ずかしいやらなんやらで彼の顔が見られなくて俯いてしまう。絨毯、こんな模様だったんだなぁ。あ、隠れ◯ッキーだ…。
「私ももっとスマートに伝えればよかったね。クララが大人だってことに驚いてしまって。」
「それは、その、」足音が響く。彼の靴が私の近くまで来た。彼が私の顔を両手で包んで上向かせる。
「おめでとう。クララは大人の女性だ。だからキスも少し進んでみよう?」
彼は少し屈んで、私の唇にキスをした。彼の唇は優しくて、優しくて、心臓が耳の裏に来たみたいに鳴り響いてよくわからなくなってきた…。
「ファーストキス…。」
「これからもずっと、私だけだよ。」
そう言って彼は私の耳元で囁いて、またちゅっと私にキスをした。ペロリと唇を舐めると、少し苦いワインの味がした。