突撃、隣の執務室!
まだ7歳です。
おはようございます。クララです。
結婚式からひと月ほど経ちました。結婚して変わったことといえばギルバート様と文字通り寝食共にするくらいで、日中のほとんどは勉強をするという代わり映えのない毎日を過ごしています。
「クララ様、クッキーは持ちましたか?」
「うん!持ちました!シェリーは心配性だなぁ。」
シェリーはひょっとこ侍女です。いつも私のお世話をしてくれる顔芸が得意な女性。今だって私の言葉にイラっとして口は微笑んでいるのに上半分は般若になってる。ごめんなさい。
「お菓子も持ったし、飲み物も持った!陛下はよろこんでくれるかな?執務室に行って邪魔じゃない?」
「宰相様がおっしゃったのですから大丈夫ですよ。きっととてもお喜びになります。陛下はクララ様が大好きでいらっしゃいますから。」
そうなのだ。今日は勉強はお休みして、ギルバート様がお仕事をしている執務室に遊びに行くのだ。なんでそんな話になったかというと、私が「陛下のお仕事見てみたいなぁ。」と言ったらギルバート様のお父様である宰相様がその話を聞きつけて
「あの子は少し根をつめすぎるきらいがある。きっと王妃様がいらっしゃったらあの子も心が休まるでしょう。」と私が執務室に訪れるのを許可してくれたのだ。今更だけど凄い権力が集中してるけどいいのかな。まぁ緊急事態だからしょうがないのかな。
「よし、じゃあ執務室に出発!ってシェリー、執務室にはどうやっていくの?」
シェリーに案内されて執務室に無事到着。背伸びをしてガンガン扉を叩く。
「たのもー。」
キィと扉が開くと目の前の大きな机で仕事をしていたギルバート様が顔を上げて目をまん丸にしてる。
「えっクララ様?疲れすぎたのかなぁ。かわいいお姫様が見えるよ。」
ギルバート様は立ち直りが早い。すぐに私の方に来て私を抱き上げて片腕に私を座らせてくれた。
「様は入りませんよ。ギルバート様のお仕事場を見学しに来たのです。いつもお仕事ご苦労様です。ちゅっ。」
この一ヶ月で分かったのだけど、ギルバート様はこのちゅっで大体機嫌を良くしてくれる。メロメロだ、子供的な意味で。
「ありがとう。クララも、ギルって呼んで。」
そう言いながら手前にあるソファーに座って私を膝の上に乗せた。
「もう私は7歳ですよ。恥ずかしいです。」
「うーん、私は17歳だけど寂しいから膝に乗ってほしいな。駄目かい?」
「そんな風に言うなんて、ずるい。」
首に抱きついてみる。
「それにしても大荷物だね。何を持ってきてくれたのかな?」
そう、今日はお土産を持ってきたのです。いそいそと膝から降りてかけてあったバックからお菓子を取り出す。
「クッキーはクララ様がお作りされたんですよ。」
シェリーは持ってきたバスケットからカップを取り出して紅茶を淹れた。
「美味しそうだ、食べてもいいかい?」
「愛情をたくさん入れたので、味わって食べてくださいまし。」
ドキドキ。
「とっても甘くて疲れが吹き飛ぶよ。」
「まぁ。愛情って甘そうだから砂糖いっぱいいれたんです。」
「たくさん愛情を感じたよ。今度は一緒に作ろう。」
そう言ってギルバート様はチュッとキスしてくれた。