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二話

ふっと意識が飛んで、そして私はまた講義に戻る。

「現実世界はイデアという本当の世界に似せて作られた、いわゆる劣化した世界であると…」

私は一体何を求めて大学に入ったのだろう。高校のころ辛い思いをしていたのが、大学に入れば解消するとでも思ったのだろうか?どうせなら、法学部に行くべきだった。哲学が示してくれる未来なんて、所詮やっぱり個人にとっては一般論でしかないと、今ではそう思ってしまう。私が目指したいものはもっと高いところにあったはずなのに、今ではそれが何だったのかさえ霧が掛かったように見えない。


 自分の求めていることに手が届かないどころか、その存在さえも疑わしいなんて…。無意味に日々を過ごしているという事実を肯定したくない。けれど、多分それを認めなければ、私は前に進めないのだろう。

 講義を終えて、大学生協に寄る。文房具やノートを少し買って、ペットボトルの紅茶を片手に近くのベンチに座った。

 今晩は夕食会なのだ…。月に数回金曜の夕食を両親と弟夫婦と一緒に外で食べるのか習慣になっている。弟は私とはほぼ正反対にあらゆるものを選択してきた。姉弟なのにこうも生き方が違うものかと自分の家族のことながら、戸惑いを隠せないでいる。あやふやな理由で大学に進学した私と高校を卒業して市役所に勤めている弟、異性の友人さえいない私と10代で結婚した弟。

 こういう対比は俗っぽく感じることもあるけれど、いかに弟と私が人生の要所で違う選択をしてきた、そしてこれからもそうであろうということが良く分かる。もちろん家族とはいえ、私と弟はまったく別の人間だ。違う道を行くことは、勿論初めから分かっている。けれども、頭では弟のことを理解したつもりになっていても感情がどうしても追いつかない。同じ家庭で育ったはずが、…もしかすると他人以上に私は弟のことを理解できていない。姉弟でこんなに価値観が違うなんてことがあるなんて…。いやむしろ姉弟だから、なのかもしれないが。



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