去りゆく雪女を巴投げで部屋に戻した話
掲載日:2026/09/26
雪子は僕の部屋から去ろうとした。息子の雪夫を抱っこして。無我夢中だった。気がつけば雪子を巴投げしていたのだ。昔山で遭遇した雪女の話を彼女にしてしまったからだろう。そう、彼女が昔会った雪女だった。
あなたは私好みのイケメンですね……私と会ったことは決して誰にも言ってはだめですよ?約束するならあなたは凍らせないでおきましょうと言われていたのに。でも僕は納得いかなかった。
雪夫はどうなるんだ?父親がいないまま育つのか?今の時代ならそれでもいいのかな?雪子はキッと僕を睨み付け、こういい放った。
「あなたが愛おしいから凍らせないでおこうと思ったのに! 気が変わった……! 凍れ!!」
おまえに凍らせられるなら本望だよ……ん?あれ?凍らない?なんで?!
「なぜだ?! 最大の凍気を込めたのに!」
僕はギュッと雪子を抱きしめた。気がつけば雪子は大粒の涙を流していた。雪夫はだーうと言いながら僕の口を大きく引っ張って、うれしそうにしている。
「なあ、出ていくのは、もう少し後でもいいんじゃないか?」
凍える冬の日、日本昔ばなしであったようなストーリー、だが、セオリー通りにはいかなかった。抱きしめた体はとても冷たかったけど、涙と両手は世界でいちばん暖かかったとさ。おしまい。




