《エピローグ》
エミールは逝った。
尊敬すべき若い神父が、病が蔓延る貧民街から、彼の遺体を運び出した時、住民達は驚きの色を隠せなかった。
神父様自らが遺体を馬車に積み込もうとするなんて。
しかも、遺体が履いている靴は、厚く切ったコルクを貼り付けた不恰好な革靴だ。誰の靴かはすぐにわかる。
エミールの死は瞬く間に広がった。
しかし、デュボア子爵家は一貫してエミールの死亡を認めようとしなかった。
エミールは、療養中で、遺体は別人だと言い張ったのだ。
エミールの遺体は、デュボア子爵家に引き取りを拒否され、ルカの手によって、エミールが解剖した人々と同じように火葬された。
土葬にしなかったのは…、エミールのような輩に、彼の遺体を渡したくなかったからだ。
こっそり、アルマンにも意向を聞いてみたが、アルマンも火葬に賛成した。
神様は、死後の体の有無で、天国の扉を開け閉めはしないでしょう、と言って。
もし、彼が亡くなるまでにもう少し時間があったなら、彼は自分の体を切り刻めと言っただろうか。
エミールが亡くなった後に発見された悪趣味なコレクションは、サントルヴィルではかなりの値段がついたそうだが、ルカは詳しく聞こうとはしなかった。
秋になると、セント・クレール教会の庭に生えた白樺が黄金色の葉をつける。
彼ほど金色が似合う人はいなかった。
悪魔を思わせる真っ黒な髪と瞳が、胸元に輝くライオンをあしらった黄金のネックレスを何倍も際立たせていた。
サアサアという葉擦れは、あの傲慢ともいえる話ぶりを遠くから聞いているようだ。
ルカは日記をめくると、エミールを思い出しながら、彼の記録をまとめていく。
ペンの先が、紙に引っかかる。
エミールが作った紙だ。瞼の裏に、日焼けをするからと、顔を隠していた彼の姿が蘇る。彼の言葉には、一体、いくつの含みがあったのだろう。
気がつけば、インクが紙に黒い染みを作っている。新しい紙を出すと、ルカは、再度ペンを走らせる。
彼の罪と功績が、忘れられてしまわないように。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
まだ手直し中の作品ですが、改善できる点やご感想など頂けると嬉しいです!
また、同じ世界観でもう一作書けたらと思ってますw
その時はまたお付き合い頂けると嬉しいです!




