《待雪草》
待雪草、スノードロップの花言葉は、希望、慰め、そして、貴方の死を願います。
随分と酷い花言葉をつけたものだ。エミールは、先月まで小さくて白い花があった場所を見つめながら思う。
そして、ソファーに寝転ぶ。
遠くから、アルマンとルカの言い争う声が聞こえる。
何かあったのだろう。
「エミール!」
青ざめた顔、震える唇、頬に残る涙の跡…。
それから、膝に残る白い灰。
エミールは小さく舌打ちした。
あいつらめ、後始末は十分気をつけるように言ってあったのに。
いや、時間の問題か。
あいつらを責めても仕方ない。
エミールの考えがわかってかわからずか、ルカの顔は一段と白くなる。
エミールは、手を振ってアルマンを下げようとするが、彼は何かを言いかける。
「下がって、アルマン。」
今度は、ピシャリと言葉で指示した。
アルマンは、エミールに心配そうな目を向けると、そのまま部屋を出る。
部屋は2人だけ。
「悪魔め。」
エミールに聞きたい事は山ほどあった。
しかし、もはや、言葉にならなかった。
怒りに突き動かされ、ソファーから半分身を起こしたエミールを再びソファーに押し倒す。
そして、細い首に手をかけ…、締めた。
「くぅ…」
エミールの目には生理的な涙が浮かび、唇の端から唾液が垂れる。
ルカの体の下で、エミールの体が強張った。
エミールは、ルカを見ようとしなかった。
代わりに、ルカの手に触れた。
まるで、最後のに彼の感触を確かめたいとでもいうように。
手は震え、強張っていたが、抵抗する意思がない事は明白だった。
…出来ない。
ルカは、エミールの喉から手を離した。
エミールが咳き込む。
こいつは悪魔だ。
直感が告げている。
墓荒らしはコイツだと。
人を切り裂き、赤子を奪い、人を焼いて埋め…。
「教えろ!お前は一体、何をした!」
エミールの胸ぐらを掴み上げる。
彼の服の縫い目が、ブチブチと裂ける音がした。
「知ってどうするの?知ったら、僕を殺せるの?」
憎しみに満ちた瞳が、エミールを突き刺す。
エミールは不気味なほど、落ち着いていた。
瞳の奥には、さざなみ一つ立っていない。
「どうしても、知りたいの?」
ルカは、あともう少しで、エミールを殴りつけるところだった。
なぜ、コイツは、こんなにも人の神経を逆撫でするのか。
「教えろ。」
地を這うような、低い声で、ルカが命じる。
エミールがルカを押しのけてソファーから立ち上がると、ルカが彼の髪を掴んだ。
「逃げるなよ。」




