14. VSイルミナティ① ~Prepare for action~
「イルミナティが敷地のすぐ外をうろついている」
ニコラス先生の一言で戦慄が走る。
イルミナティ。各地で目的不明の強盗殺人を繰り返すイカれた集団。
「まさか奴ら、学校に進入しようとしてるんじゃないでしょうね!?
そうなら今すぐ結界を強化しなけりゃならないわ!!」
眉間にしわを寄せてセレナ先輩が叫ぶ。
「同感するぜ。奴らを校内に入れたらどれだけの被害者が出ると思ってんだぁ?
それだけはさせねぇよ」
先ほどとは種類の違う緊迫感が室内を満たす。胃をキリキリと締めつける様な圧迫感をどことなく感じる。
「よく聞け」
先生は声の音量を上げて全員に呼び掛けた。
「無論イルミナティの進入は絶対に許さない。教員・生徒会・ジックの力を持って全力で迎え撃つ。規模は小さいが戦争みたいなものだ。即刻準備に取り掛かれ」
「了解」
黒谷先輩とジョット先輩はジックの召集のため放送室へと走って行った。フローズ会長とシレーナ副会長とライアン先輩も武具の準備のために武器庫へ向かった。ティア先輩は先生と作戦の打ち合わせ。セレナ先輩とワンファン先輩は情報が入るのを待っている。
「新学年開始早々に来るなヨ。気分悪いなア」
「いつ来ても気分悪くなるわ。できるなら攻めてくること自体なくしてほしいね」
「一年生、特に仁は戦闘させるわけにはいかないしネ」
二年女子の先輩は露骨に不満を言っている。通信機器のトランシーバーを握り潰してしまいそうだ。ん? ちょっと待て。素朴な疑問。なんで中世ヨーロッパにトランシーバーがあるんだ。使えんのかよ。
「……この世界って電波届くのか?」
こっそりディランに訊いてみる。
「校内に限って電波環境は整えてあるよ。パソコンと携帯電話は使えないけどね」
答えてくれたのはセレナ先輩。当のディランは先を越されてポカンとしている。妖怪って科学技術を使うんだ、というツッコミは口には出さない。
空気がほのぼのしそうになった所で先生が叫んだ。作戦会議が終わったらしい。
「作戦は決まった。教員で周囲の森を捜索する。ジックで西門と東門を、二年生は南の大門、一年生と三年生は北門を警護しろ。
そして不本意だが殺人を許可する。先に殺さなければ殺されるだけだ。ただし指揮官だけは生け捕りにしろ。最後に一つ、絶対に死ぬな。以上だ」
「仁さんも戦うんですか?」
サラがニコラス先生に直球で尋ねた。
「緊急だから人手を増やすために生徒会で目をつけたグループを戦力として加えることになった。俺個人としては戦わせたくないんだが、例外を認めると仁が妖怪で無いと他の生徒にばれる可能性が出てくる。
ある程度は校門に突入される前に教師でなんとかするつもりだ。ただ相手が相手だから何とも言えないってとこだ」
先生は淡々と告げる。
やっぱ自分の力で生き残るしか道は無さそうだ。イルミナティが相手じゃディランもサラもレベッカも自分のことで精一杯かもしれない。くっそ。どうすりゃいいんだよ。殺人鬼相手にどうしろってんだ。無茶苦茶じゃねぇか。
だけど俺には家族をキョウを元に戻すという使命がある。簡単にやられるわけにはいかない。
絶対に生き残ってやる。
今回は短めです。
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