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#084 : ロサンゼルス•ナイト


ロサンゼルスでの全日程を終え、テーマソングの核も完成させたカレンと美咲は、翌朝のフィリピン行きフライトに備え、荷造りを終えた。しかし、この旅の最初の成功を祝う**「打ち上げ」**をせずに終わるわけにはいかなかった。


配信終了後の開放感と準備


最終配信と創作作業を終えたアパートメントの一室には、深い開放感が漂っていた。カレンは、配信機材の片付けを終えた美咲に話しかけた。


「ねぇ、美咲。さすがに今日は、少し贅沢しましょうよ。このロサンゼルスでの成功を祝う、私たちだけの打ち上げを」


美咲は、その提案に目を輝かせた。連日の緊張と創作活動で、心身ともに疲労していたが、その提案は二人の間に新しい活力を生んだ。


「いいね、カレン!そうしよう。でも、外には出られないから、何をしようか?」


「ふふ、そこは私に任せて。ロサンゼルス滞在の最後に、私たちにふさわしい最高の夜を演出するわ」


カレンは、現地スタッフのアイコに、いくつかの高級デリバリーの注文と、特別な飲み物の手配を依頼した。もちろん、その際の会話は、周囲に聞かれないよう、全て英語で済ませた。


数十分後、ダイニングテーブルには、ロサンゼルスの有名ステーキハウスのテイクアウト料理と、高級なシャンパンが並んだ。カレンは、部屋の照明を落とし、夜景がよく見えるように調整した。


「さあ、美咲。これが私たち二人だけの、ロサンゼルス・ナイトの打ち上げよ」


孤独な道のりの果てに


シャンパンのグラスを手に、二人はロサンゼルスの夜景を眺めた。無数の光が、二人の成功を祝福しているように輝いている。


「乾杯、カレン。ロサンゼルスでのミッション成功と、テーマソングの核の完成に!」


美咲は、グラスをカレンに合わせ、優雅にシャンパンを口にした。


「乾杯、美咲。そして、私たち二人が、この世界で出会えたことにね」


カレンの言葉は、普段の強気な口調ではなく、心からの感謝が込められていた。


二人は、ステーキを味わいながら、この旅を振り返った。最初の配信の緊張、街での危機一髪の接触、そしてサンタモニカでのインスピレーションの獲得。全てが、濃密な出来事だった。


「ねぇ、カレン。ふと思ったんだけど、私たちがVTuberとして活動を始めた頃って、誰も信じてくれない孤独な時間があったよね」


美咲は、遠い目をして語った。美咲にとって、VTuberという新しいジャンルで、ただ一人で配信環境を構築していた時期は、未来が見えない孤独との戦いだった。


「そうね。私も、自分の歌が本当に世界に届くのか、不安に押しつぶされそうになったことは何度もあるわ。特に、自分のリアルな姿を隠して、**『ローズバイト』**という存在だけで勝負する怖さ。それは、誰にも理解してもらえない孤独だった」


カレンは、グラスを静かに置いた。彼女のハーフというバックグラウンドも、日本と海外、どちらにも属しきれない孤独感を抱えていた。


「でも、美咲。あなたに出会って、**『Project Harmony』が始まって、私の孤独は消えたわ。あなたが私の『技術的な支え』であり、『精神的な光』**なんだって、ロサンゼルスで確信したの」


カレンは、美咲の目をしっかりと見つめた。その言葉は、何よりも熱い、最高の告白だった。


「カレン……私もだよ。カレンの歌への情熱と、プロとしての姿勢を見るたびに、私自身も孤独じゃないって思えるんだ。私たちは、魂で繋がっているんだよね」


二人は、物理的な姿を隠して活動するVTuberという特殊な境遇で、真の絆を見つけ出していた。


テーマソングと未来への約束


夜も深まり、二人の会話はテーマソングへと移っていった。


「この**『ロサンゼルス編のテーマソング』は、私たちの旅の記録であると同時に、私たちのVTuberとしてのアイデンティティ**になるわ」


カレンは、テーブルに置かれた歌詞の草稿を指差した。


「孤独なメロディが、一気に希望に変わるサビの部分、あなたが『私のハーモニーは、あなたと響く』って歌詞を入れてくれた時、本当に感動したんだよ、カレン」


美咲は、そのサビを口ずさんだ。メロディと歌詞が、二人の絆を表現している。


「この曲の核は、ロサンゼルスで完成した。でも、まだ足りないものがあるわ。次のフィリピンで、この曲に**『熱い魂』を吹き込む要素を見つけなければならない。この静かな核を、世界に響かせるためのエネルギー**をね」


カレンの瞳は、夜景の光を反射し、次の目標への強い決意を映していた。


「うん、そのエネルギー、フィリピンの熱気がきっと教えてくれるよ。私は、その熱を表現できる最高の音色を見つける」


美咲は、プロデューサーとしての役割を再確認した。カレンの創造性を、最高の技術で世界に届ける。それが彼女の使命だ。


カレンは立ち上がり、窓辺に寄りかかった。


「ロサンゼルス、ありがとう。私たちに、最高のインスピレーションと、最高の絆を再確認させてくれて」


カレンは、美咲のほうに体を向け、力強い口調で言った。


「さあ、美咲。この成功を、次の国でも続けていくわよ。私たちは、世界を旅するVTuberとして、フィリピンで、この歌を完成させるの。約束よ」


美咲は、その力強い言葉に、力強く頷いた。


「もちろんだよ、カレン。最高のハーモニーは、私たちが作り出すんだから」


ロサンゼルス最後の夜、二人は互いの存在に感謝し、次の国での冒険への期待と、テーマソング完成への熱い決意を誓い合った。彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。

読んでくれてありがとうございます

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