#081 : ハリウッドの夜景
前日の危機一髪の配信を乗り越えた美咲とカレンは、ロサンゼルスでの二日目の夜を迎えた。今日の「アメリカン・フード体験」配信も無事に終了し、プロとしての役割を完璧に果たした二人は、大きな安堵感に包まれていた。
配信で、二人はテイクアウトした巨大なハンバーガーを美味しそうに平らげた。美咲(美玲エラ)は元気いっぱいに食レポを担当し、カレン(ローズバイト)はアメリカの食文化や食材へのこだわりを冷静に解説することで、単なる食事配信に留まらない深みを加えた。
配信が終了し、部屋の興奮が冷めると、静寂が訪れた。美咲はすぐに配信機材のケーブルをまとめ、カメラを慎重にケースにしまう作業を始めた。カレンも、配信で使ったハンバーガーの包み紙や飲み物の容器をテキパキとゴミ箱に片付けていく。
「お疲れ様、美咲。今日の配信も完璧だったわ。胃袋を満たしつつ、仕事も完璧にこなすなんて、さすが私たちね」
カレンは、満足げに言った。
「ありがとう、カレン。カレンの食文化の解説があったから、配信が面白くなったよ。でも、早く片付けて、少し休もう」
美咲は、照明を落とし、部屋の隅にある大きな窓に向き直った。窓の外には、ロサンゼルスの街の光が、息をのむほど美しく輝いていた。二人の間には、配信中の賑やかさとは打って変わった、静かで穏やかな時間が流れていた。
「やっぱり、私たちはVTuberとして華やかな舞台に立っているけど、こうしてカレンと二人で過ごす、こういう静かな時間が一番落ち着くわ」
美咲はそう言って、優しく微笑んだ。
ハリウッドの夜、黄昏と信頼
片付けが終わり、二人はソファに座って、ロサンゼルスの夜景を眺めていた。無数の車のライトが、まるで流れる星のように見えた。
カレンは、美咲のほうに体を向け、静かに語り始めた。
「ねぇ、美咲。前日のあの接触、本当に怖かったわ。夜景を見ていると、あの時のことが嘘みたいね」
カレンの口調は穏やかで、静かな夜景に溶け込んでいくようだった。
「うん、私もだよ。あの時、一瞬、頭が真っ白になった。でも、カレンがすぐにミュートして、英語で対応してくれたから助かったのよ。あの瞬間、私たちは言葉じゃなくて、目で連携していたんだよね」
美咲は、カレンの手にそっと触れた。
「そうね。美咲が咄嗟に背景を切り替えてくれたから、私は安心して英語で話すことができたわ。美咲の機材操作の早さ、本当にプロフェッショナルだと思った」
カレンの言葉は、美咲のプロとしてのスキルに対する心からの賛辞だった。この旅での二人の役割は明確だ。美咲が技術と配信全体を守り、カレンが言語と外からの接触を防ぐ。
「私たち、運命で出会って、ここまで一緒に来たけど、この旅で、もっと特別な関係になった気がするわ」
カレンは、美咲の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「そうよ。この広い世界で、二人きりで立っているんだもん。なんだか、無敵になったみたいだね」
二人は、しばし言葉を交わさず、互いの存在の大きさを噛み締めるように夜景に黄昏た。その静寂は、互いの存在を深く感じ合う、二人だけの揺るぎない信頼の証だった。この孤独な旅路で、互いが唯一無二の支えになっていることを、改めて実感する瞬間だった。
しばらくの黄昏の後、美咲は夜景からカレンの方に視線を戻し、真剣な眼差しを向けた。
「ねぇ、カレン。私たち、このままロサンゼルスでの時間を無駄にはできないよ」
「もちろんよ。観光だけが目的じゃないもの」
「うん。このロサンゼルスの街の光、喧騒、全てが、私たちの五感を刺激してくれる。だから、このロサンゼルス滞在中に、次の目標を決めましょう」
美咲は、カレンの手を握り、力強く言った。
「私たち、このロサンゼルスで得たインスピレーションを形にして、『ロサンゼルス編のテーマソング』の制作を始めよう。この旅の思い出と、私たちの絆を込めた、最高の歌をね」
カレンの瞳に、再び強い光が宿った。音楽こそ、彼女たちの魂だ。
「そうね、いい目標だわ。このハリウッドの光の下で、私たちの**『Project Harmony』**の歌を、世界に向けて作り始めるのよ。最高の舞台じゃない」
二人は、ロサンゼルスの夜景を背景に、しっかりと手を握り合った。
「必ず最高の歌を作るわよ、美咲」
「うん、最高のハーモニーを届けるよ、カレン」
ロサンゼルスでの旅は、まだ始まったばかりだ。しかし、二人の心の中には、すでに新しい歌のメロディと、揺るぎない未来への誓いが、深く刻まれていた。
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