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#079 : ハリウッドの夜景

 

 ロサンゼルスに到着した翌日、美咲と橘 カレンは、いよいよ「Project Harmony」最初の配信を迎えようとしていた。宿泊しているハリウッドエリアのアパートメントは、大きな窓からロサンゼルスの街を一望できた。夕闇が迫り、窓の外には、壮大でドラマチックな夜景が広がり始めていた。




 配信予定時刻まであとわずか。美咲とカレンは、新しい旅配信用の衣装に身を包み、最終チェックを進めていた。美咲の青と白を基調とした活動的な装いと、カレンの黒で統一されたクールな装いが、ロサンゼルスの光の中で際立っていた。


「カレン、マイクの感度チェック、大丈夫?」


 美咲は、配信機材が完璧に配置されたテーブルの前で、集中力を研ぎ澄ませていた。


「問題ないよ、美咲。完璧。私の声が、この世界中に響き渡る準備は万端だよ」


 カレンはそう言い放ったが、その声には、いつもの落ち着きとは違う、わずかな緊張が混じっていた。慣れ親しんだ日本での配信とは違い、ここは異国の地。しかも、この配信は、二人の旅の成否を占う、重要な第一歩だ。


 現地のサポートスタッフであるアイコとジョンも、部屋の隅で待機していた。アイコが、二人に小さく合図を送る。


「美咲さん、カレンさん、回線は安定しています。視聴者数は、すでに予想の二倍を超えています。世界中のファンが待っていますよ」


 その言葉に、カレンは深く息を吸い込んだ。


「二倍か。ふふん、当然だね。私の魅力が、国境を越えたってことだよ」


 カレンは、自信に満ちた言葉で緊張を和らげたが、美咲はその手を優しく握った。


「大丈夫だよ、カレン。いつもの私たちでいこう。リラックスして」


「うん、分かってるよ。この高揚感、まるで初めてのライブの前みたいだね」


 二人は、お互いの顔を見つめ、静かに頷き合った。その瞳には、不安を乗り越える、固い絆の光が宿っていた。


 ロサンゼルス、夜景配信と世界への第一声


 ロサンゼルス時間、午後7時。


「みんなー! こんばんは! 美玲エラだよ!」


 美咲の明るく元気な声と共に、配信画面がオンになった。


 画面には、旅配信用の新しい衣装に身を包んだ二人の姿が映し出された。そして、二人の背後には、言葉を失うほど美しい、ロサンゼルスの夜景が広がっていた。無数の街の明かりが、宝石のようにきらめき、まさに「映画の都」の夜景だった。


「ローズバイトだよ。お待たせ。地球の裏側から、愛とメッセージを込めて、ご挨拶するよ」


 カレンの落ち着いた挨拶と共に、コメント欄は瞬時に溢れかえった。


 視聴者数は、みるみるうちに跳ね上がり、コメント欄は多言語の洪水となった。


「OMG! So beautiful! The view is amazing! (アメリカ)」

(わあ!本当に美しい!景色が最高!)

「凄い! もうロサンゼルス!? 無事に着いて良かった! 」

「Hello from Manila! We love Rose and Ela! (フィリピン)」

(マニラからこんにちは!ローズとエラが大好きです!)

「わぁすげぇ」

「コメントえぐぃぃ」


 美咲は、驚きと喜びで目を丸くした。


「わぁ! すごい! みんな、たくさんの言語でコメントしてくれてる!」


 カレンは、涼しい顔を保ちながらも、その心は熱くなっていた。彼女たちの人気が、本当に世界に通じていることを実感した瞬間だった。


「ふふん、当然だよ。私のファンはグローバルだからね。美咲、まずは、私たちの旅の舞台を紹介してあげて」


 美咲は、カメラに手を振りながら、背後の夜景を指し示した。


「見て! みんな! 私たちの後ろに広がるのは、ロサンゼルスの夜景だよ! ここから、私たち二人の『Project Harmony』、世界旅行配信が、いよいよ始まります!」


 美咲の言葉に、ファンからの祝福のコメントが、夜空の花火のように咲き乱れた。二人は、その興奮を共有しながら、改めてこの旅の目的をファンに伝えた。


 カレンが、真剣な表情でカメラを見つめた。


「この旅は、ただの観光じゃないんだ。私たちローズバイトと美玲エラが、VTuberとして、そして一人の表現者として、どれだけ世界に通用するか、試すための挑戦だよ」


 彼女の強い声が、夜景に負けない意志を伝えた。


「私たちは、それぞれの個性と、二人の『ハーモニー』を信じている。この世界には、まだ私たちの歌を知らない人がたくさんいるんだ。私たちは、旅を通して、その一人一人に、私たちの歌と、私たちの絆を届けていくよ」




 配信の熱気が高まる中、美咲が新しいコーナーを始めた。


「みんな、たくさんの応援コメント、本当にありがとう! じゃあ、ここでちょっと、みんなからの質問に答えるQ&Aコーナーを始めるよ!」


 コメント欄は、一斉に質問で溢れた。美玲エラが、素早くいくつか質問をピックアップする。


 美玲エラ:「最初はこちらだよ! 日本語と英語と、他の言語のコメントもたくさん来てるね! **『ローズとエラは英語が話せるの?』**だって!」


 ローズバイト:「あー、これね。美咲は、通訳アプリを片手に頑張って勉強してたけど、私に関しては、私はハーフだから、ペラペラだよ。アメリカ育ちみたいなもんだし、むしろ日本語の方が難しいくらいかな。安心しろ、緊急時の通訳は私がやってやるよ」


 美玲エラ:「ローズは本当に流暢なんだよ。私も負けないように頑張るからね! じゃあ、次の質問! 『ロサンゼルスで、VTuber以外の誰に会ってみたいですか?』」


 ローズバイト:「私は、映画監督に会いたいね。私とエラの才能を売り込んで、映画の主題歌を歌うんだよ。ハリウッドデビューってやつだ!私達の歌声は、スクリーンで流れるのがお似合いだからね」


 美玲エラ:「ローズらしいね! 私は、有名なアニメーターさんに会って、私たちのキャラクターデザインについて話してみたいな。世界的なクリエイターさんとお話できる機会があったら、本当に最高だよね!」


 この回答に、コメント欄は笑いと期待のコメントで溢れた。


 美玲エラ:「最後の質問だよ。**『旅を終えた後、二人の関係はどうなるの?』**だって!」


 この質問に、ローズバイトは、一瞬真剣な表情を浮かべた。


 ローズバイト:「関係が変わる? ありえないよ。私たちは、もう、魂で繋がっているんだ。この旅を終えたら、私たちは最高の相棒として、もっと固い絆で結ばれているに決まっているよ。」


 ローズバイトは、美玲エラの手を、そっと握った。


 美玲エラは、感動で少し涙ぐみながら、ファンに語りかけた。


 美玲エラ:「そうだね。私たちが、この旅で得た新しい景色、新しい音、新しい感情。その全てを、私たちの新しい歌に変えて、みんなに届けたいんです。それが、**『Project Harmony』**に込めた、私たち二人の誓いだよ」


 そして、二人は声を揃えた。


「最後まで、私たちローズバイトと美玲エラの旅を見届けてね!」




 配信が終わり、画面が暗転した後も、二人の興奮は冷めやらなかった。


「ねぇ、カレン。すごかったね。コメントの数が、尋常じゃなかったよ」




「うん、美咲。想像以上だったね。世界中のファンが、私たちのことを待ってたんだよ。これで、もう後には引けないよ」


 カレンは、配信機材を片付けながら、静かに言った。その声には、疲労よりも、強い達成感が滲んでいた。


 二人は、窓辺に立ち、ロサンゼルスの夜景を改めて眺めた。この広大な街で、自分たちの旅が始まったのだ。


「明日から、本当に大変になると思うんだ。慣れない環境、時差、そして言葉の壁……」


 美咲が、不安を口にした。


 カレンは、美咲の言葉を遮るように、美咲の肩に手を置いた。


「心配ないよ、美咲。私たちは、二人なんだから。そして、美咲がいるんだよ。美咲は、私達のハーモニーを、世界に響かせるための、大事の相棒なんだからね」


「カレン……」


 美咲は、カレンの手を握り締めた。カレンの言葉は、美咲の心に、再び強い力を与えた。


「さあ、明日に備えて寝よう。プロとして、体調管理は大事だよ」


 カレンは、そう言って、優しく微笑んだ。


 二人は、ロサンゼルスの夜景に、自分たちの未来を重ね合わせるように見つめ、静かに部屋の灯りを落とした。明日から、二人のVTuberとしての新しい歴史が、この異国の地で刻まれていく。

読んでくれてありがとうございます。

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