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#066 : 心穏やかな午後

 


 ライブを終えてから一週間が経ち、カレンと美咲の生活は、ライブ前の穏やかな日常に戻っていた。しかし、その日常は、以前とは少しだけ違っていた。二人の絆が、ライブという経験を経て、さらに深く、強固なものになっていたのだ。


 その日の午後、美咲は、リビングのソファで、カレンのために温かいココアを淹れていた。カレンは、美咲の淹れるココアが大好きで、美咲もまた、カレンのためにココアを淹れる時間が、心から好きだった。


「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」


 美咲がそう言うと、カレンは、美咲の隣に座り、ココアを一口飲んだ。


「んー! 美味しい! 美咲のココア、最高!」


 カレンは、そう言って、満面の笑みを浮かべた。その笑顔は、以前の、どこか寂しげな表情とは全く違っていた。


 二人は、ココアを飲みながら、静かに音楽を聴いていた。スピーカーから流れるのは、美咲が選んだ、穏やかなジャズのメロディーだった。


「ねぇ、カレンこのジャズめちゃチルだよね」


「そうだねココア飲みながら穏やかなジャズ、最高すぎる」


 それは、これまでの物語では、決して見ることのできなかった、穏やかで、心地よい時間だった。


 二人の間には、言葉は必要なかった。ただ、お互いの存在を感じるだけで、心が満たされていくのが分かった。


 美咲は、そんなカレンの横顔を、じっと見つめていた。


(カレン、本当に、変わったなぁ)


 美咲は、心の中で、そうつぶやいた。


 以前のカレンは、一人で、勝利だけを追い求めていた。しかし、今のカレンは、誰かと一緒に、幸せを分かち合うことを知っている。その変化は、美咲との出会いがあったからこそ、生まれたものだった。


 ココアを飲み終えた後、美咲が、今後の活動について、カレンに尋ねた。


「ねぇ、カレン。次の配信、何にしようか? 何か、やりたいこととか、ある?」


 美咲の言葉に、カレンは、少しだけ考えてから、答えた。


「うーん……そうだなぁ。最近、新しいゲームにハマってるんだ。美咲と一緒に、そのゲームをやりたいな」


 カレンの言葉に、美咲は、にっこりと微笑んだ。


「いいね! じゃあ、次の配信は、二人で、そのゲームをプレイしよう!」


「あと、二泊三日の旅行の事も忘れないでね?」


 美咲がそう言うと、カレンは、嬉しそうに頷いた。


「うん! 楽しみ!」


 二人は、その後も、今後の活動について、楽しそうに話し合った。


 それは、世界進出のような、大きな夢の話ではなかった。ただ、「二人で、どんなゲーム配信をしたいか」「どんな歌を歌いたいか」といった、ささやかで、温かい夢だった。


 しかし、そのささやかな夢の中に、二人の未来が、ぎゅっと詰まっていた。


 二人の夢が、これまでの苦悩を乗り越えたことで、より純粋で、温かいものになったことを、美咲は、心から感じていた。


 その日の夜、二人は、それぞれの部屋で、ライブのアーカイブを視聴していた。


 カレンは、自分の歌声を聞きながら、静かに涙を流していた。



 美咲との出会い、美咲との絆、そして、二人で成し遂げた、最高のライブ。


 その全てが、カレンの心に、深い感動を与えていた。


 カレンは、美咲の部屋の扉をノックした。


「美咲……ちょっと、いいかな?」


 カレンがそう言うと、美咲は、にっこりと微笑んだ。


「どうしたの? カレン」


 カレンは、美咲の隣に座り、美咲の肩に、そっと頭を乗せた。


「美咲……ありがとう」


 カレンの声は、震えていた。


「うん。どうしたの?」


 美咲がそう尋ねると、カレンは、美咲の肩に顔をうずめ、言った。


「美咲と出会って、私、本当に変わったんだ。..…美咲と出会って、誰かと一緒に、幸せを分かち合うこと、笑うことの大切さを、教えてもらったんだ」


 カレンは、そう言って、美咲の肩に、涙を流した。


 美咲は、そんなカレンを、優しく抱きしめた。


「うん。私もだよ、カレン」


 美咲がそう言うと、カレンは、美咲の方を向いた。


 カレンの瞳は、涙で濡れていたが、その瞳は、美咲への深い感謝と、愛情で満ちていた。


「美咲……これからも、ずっと、私の隣にいてくれる?」


 カレンの言葉に、美咲は、胸が熱くなった。


「うん。これからも、ずっと、カレンの隣にいるよ。だから……もう、一人で頑張らなくていいからね」


 美咲の言葉に、カレンは、美咲に抱き着き、嬉しそうに笑った。


 それは、言葉ではなく、二人の仕草や表情で、絆の深さを描いた、温かい時間だった。


 その日の夜、二人は、ベッドで、二人きりの時間を過ごしていた。


 カレンは、美咲の腕の中で、静かに眠っていた。その寝顔は、とても穏やかで、幸せそうだった。


 美咲は、そんなカレンの寝顔を、じっと見つめていた。


(カレン……本当に、ありがとう)


 美咲は、心の中で、そうつぶやいた。


 カレンが、自分を、VTuberマネージャーとしてだけでなく、一人の人間として、見てくれたこと。カレンが、自分のことを、心から、信頼してくれたこと。カレンが、自分の隣に、いてくれること。その全てが、美咲にとって、かけがえのない宝物だった。


 美咲は、カレンの髪を、優しく撫でながら、言った。


「ねえ、カレン……やっぱり、二人なら、何でもできるね」


 美咲がそう言うと、カレンは、美咲の腕の中で、少しだけ微笑んだ。それは、カレンもまた、美咲と同じ気持ちでいることの、何よりの証拠だった。


 二人のVTuberとしての物語は、今、新しいステージに進む。


 ライブという、一つの目標を達成した二人は、これから、どんな未来を、築いていくのだろうか。


 二人のハーモニーは、これからも、ずっと、続いていく。それは、二人だけのハーモニーではなく、二人を愛する、すべての人々に、永遠に、響き続けるだろう。

読んでくれてありがとうございます。

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