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#064 : 二人だけの時間、夢の旅へ

 


 ライブを終えてから数日後、カレンと美咲は、久しぶりにゆっくりと、二人だけの時間を過ごしていた。リビングのソファに体を沈め、温かい紅茶を片手に、窓から差し込む午後の陽射しを浴びていた。


 ライブの熱狂は、まだ心の中に残っていた。ファンからの温かいメッセージや、ライブの感想を読み返すたびに、胸が熱くなった。


「ねぇ、美咲。ライブ、本当に最高だったね」


「本当に最高だった」


 カレンがそう言うと、美咲は、にっこりと微笑んだ。


「うん。カレンの歌声、最高だったよ」


 美咲の言葉に、カレンは、少しだけ照れたように笑った。


「違うよ。美咲が隣にいてくれたからだよ」


 二人の間には、言葉は必要なかった。ただ、お互いの存在を感じるだけで、心が満たされていくのが分かった。


 そんな穏やかな時間の中、美咲が、ふと口を開いた。


「そういえば、ライブで結構、稼いだよね。何か、買いたいものとか、ある?」


 美咲の言葉に、カレンは、少しだけ考えてから、答えた。


「うーん……何か、買いたいもの……」


 カレンは、そう言って、美咲の顔を見つめた。


「あのさ、美咲。私、美咲と、二泊三日の旅配信がしたいんだ」


 カレンの言葉に、美咲は、少しだけ驚いた表情を浮かべた。


「旅配信?」


「うん! 美咲と二人で、どこか遠い場所に行って、配信するの。みんなに、私たちの、ありのままの姿を見せてあげたいんだ」


「3D機材とかそう言うもの持ってったり、とかできないし、そうだ顔だけバレなきゃ大丈夫だよね?神田さんにも連絡してみる」




――――――――――――――――――――――

 -美玲エラ:あの、聞きたいことがあるんですけど良いですか?


 —30分後


 -神田マネ:はいなんでしょう

 -美玲エラ:カレンと二泊三日の旅行配信行きたいんですけど、その配信中で顔以外って出しても大丈夫ですか?だめですか?

 -神田マネ:あぁ社長に聞いてみたら良いそうだ。

 -美玲エラ:まじですか?ありがとうございます♪

――――――――――――――――――――――

 


 カレンの瞳は、夢と希望に満ちていた。



「いいよ、カレン。行こう! 許可出た!二人で、最高の旅配信をしよう!」


 美咲がそう言うと、カレンは、美咲に抱き着き、嬉しそうに笑った。


 二泊三日の旅配信。


 行き先は、どこにしようか。二人は、スマホを片手に、楽しそうに話し合った。


「温泉とか、どうかな? 美味しいもの、たくさんあるよ!」


「いいね! でも……もっと、非日常的な場所がいいな」



 カレンは、そう言って、スマホの画面を美咲に見せた。


 そこに映し出されていたのは、南国の美しい海と、白い砂浜だった。


「フィリピンとか、どうかな?」


 カレンの言葉に、美咲は、目を丸くした。


「フィリピン!?」


「うん! ずっと、行ってみたいって思ってたんだ。美咲と二人なら、きっと、最高に楽しいと思うんだ」


 カレンの瞳は、まるで、子供のようにキラキラと輝いていた。


 美咲は、そんなカレンの瞳に、心を動かされた。


「分かった! 行こう! 二人で、フィリピンに、行こう!」


 美咲がそう言うと、カレンは、美咲に抱き着き、嬉しそうに笑った。



「ねぇ美咲!フィリピンってタガログ語を使うんだって!あと年上の人には最後に”ポ”って言わないと失礼らしいよ!」


「そうなの?じゃぁ日本語で言う、です ます的なものなのかな?」


 二人は、フィリピンでの旅の計画を立て始めた。


 どんな場所に行くか。どんなものを食べるか。どんな配信をするか。


 二人の間には、夢と希望が満ちていた。


 それは、かつて、カレンが一人で、勝利だけを追い求めていた頃には、決して感じることのできなかった、温かくて、幸せな時間だった。



 旅の計画を立てていると、美咲のスマホが鳴った。


 神田マネージャーからの電話だった。


「はい、美咲です……神田さん旅行の件ですか?え? はい……はい、分かりました」


 美咲は、電話を切り、少しだけ真剣な表情を浮かべた。


「カレン、神田マネージャーが、明日、事務所に来てほしいって。何か、大事な話があるみたい」


 美咲の言葉に、カレンは、少しだけ不安そうな表情を浮かべた。


「大丈夫かな……?」


 美咲は、そんなカレンの不安を察して、カレンの手を、優しく握った。


「大丈夫だよ。二人なら、きっと、どんな話でも、乗り越えられるから」


 美咲の言葉に、カレンは、頷いた。


 翌日、二人は、事務所を訪れた。


 神田マネージャーは、いつものように、穏やかな笑顔で、二人を迎えた。


「カレンちゃん、美咲ちゃん。今日は、君たちに、ある話があって、来てもらったんだ」


 神田マネージャーがそう言うと、カレンは、美咲の手を、ギュッと握った。


「実はね、君たちのライブが、日本だけでなく、海外でも、大きな反響を呼んでいるんだ」


 神田マネージャーの言葉に、カレンと美咲は、驚いた表情を浮かべた。


「特に、オリジナルソングが、海外のファンから、すごく評価されている。そこで、事務所として、君たちに、世界進出という、大きなステージに進んでほしいんだ」


 神田マネージャーの言葉に、二人は、息をのんだ。


 世界進出。それは、二人が、漠然と夢見ていた、大きな目標だった。しかし、それが、今、現実のものとして、目の前に現れた。


「でも……世界進出なんて……」


 カレンは、そう言って、言葉を詰まらせた。


 美咲もまた、大きな話に、戸惑いを隠せないでいた。


 そんな二人の様子を見て、神田マネージャーは、続けた。


「もちろん、簡単なことじゃない。言語の壁、文化の違い……たくさんの困難が、君たちを待ち受けているだろう。でも……君たちなら、乗り越えられると、私は信じている」


 神田マネージャーの言葉に、美咲は、カレンの顔を見つめた。


 カレンは、美咲の顔を見つめ返し、静かに頷いた。


 それは、美咲と一緒なら、どんな困難も、乗り越えられる、という、カレンの強い意志の表れだった。


 美咲は、神田マネージャーに、にっこりと微笑んだ。


「神田さん。私たち、やります!」


 美咲の言葉に、カレンも、力強く頷いた。


「うん! 美咲と、二人で、世界進出、頑張るよ!」


 二人の瞳は、もう、戸惑いの色ではなく、新しい夢に向かって進んでいく、強い決意に満ちていた。


 事務所からの帰り道、二人は、再び、夜空を見上げていた。


「ねぇ、美咲。本当に、私たち、世界進出するんだね」


 カレンがそう言うと、美咲は、カレンの手を、優しく握った。


「うん。二人で、世界中の人々に、私たちの歌を、届けようね」


 美咲の言葉に、カレンは、にっこりと微笑んだ。


 二人のVtuberとしての物語は、今、新しい夢を乗せて、加速していく。


 それは、二人だけの夢ではなく、世界中の人々に、幸せを届ける、大きな夢だった。


 フィリピンへの旅は、しばらくお預けになったが、二人の心の中には、もう、新しい旅が始まっていた。


 世界という、広大な海を、二人で、手を取り合って、進んでいく、新しい旅が。

読んでくれてありがとうございます。

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