#061 : レコーディング
オリジナルソングのレコーディング当日。
カレンと美咲は、事務所のマネージャー神田に連れられ、レコーディングスタジオを訪れた。地下にあるスタジオの扉を開けると、そこには、無数の機材と、防音壁に囲まれた、小さなブースがあった。
「ここが君たちがレコーディングする所だよ、結構広いでしょ」
「うわぁ……すごい……!」
カレンは、そう言って、目を丸くした。
「ここが、私たちの歌が生まれる場所だよ」
美咲がそう言うと、カレンは、美咲の手を、ギュッと握った。
カレンの顔は、期待と、そして少しの緊張で、こわばっていた。
美咲は、そんなカレンの気持ちを察して、優しくカレンの頭を撫でた。
「大丈夫だよ、いつでもカレンの側に、私が、隣にいるから」
美咲の言葉に、カレンは、少しだけ安心したように、頷いた。
美咲とカレンは、スタッフの指示に従い、ブースの中に入った。
マイクの前に立つカレンの姿は、とても小さく見えた。
美咲は、カレンの隣に立ち、カレンの肩に、そっと手を置いた。
「大丈夫だよ、カレン。いつものカレンの歌声で、大丈夫だから」
美咲の言葉に、カレンは、美咲の方を向いた。
美咲の瞳には、カレンへの深い愛情と、絶対的な信頼が満ちていた。
「うん。美咲、ありがとう」
カレンは、そう言って、マイクに向かい、深呼吸をした。
レコーディングが始まった。
最初の数回は、カレンは、緊張からか、声が震えてしまった。
美咲は、ブースの外から、カレンに、優しく微笑みかけた。
「カレン、大丈夫だよ。ゆっくり、深呼吸して」
美咲の言葉に、カレンは、美咲の顔を見つめ、頷いた。
カレンは、目を閉じ、美咲との思い出を、頭の中で、巡らせた。
初めて美咲と出会った日。二人でゲームに熱中した夜。美咲が、一人で苦しんでいた自分を、救ってくれた日。そして、二人で歩み始めた、新しい日常。
カレンの心に、たくさんの温かい思い出が、蘇った。
そして、カレンは、再び、マイクに向かい、歌い始めた。
カレンの歌声は、もう、震えていなかった。
美咲の作ったメロディーに、カレンの歌声が、完璧に重なり、一つのハーモニーとなって、ブースの中に響き渡った。
それは、カレンが、これまでの苦悩を乗り越え、新しい未来に向かって、歩み始めたことを象徴する、力強い歌声だった。
レコーディングは、順調に進んだ。
カレンの歌声は、美咲のメロディーと完璧に重なり、スタッフからも、「素晴らしい!」と称賛の声が上がった。
レコーディングを終えた後、美咲とカレンは、完成した歌を、一緒に聞いた。
カレンの歌声と、美咲の作ったメロディーが、一つのハーモニーとなって、二人の心に、深く響いた。
「美咲の声すごくゾクゾクきた、なんかおかしくなるよ」
「美咲……すごい……」
カレンは、そう言って、美咲の顔を見つめた。
「うん。カレンの歌声も、最高だよ」
美咲がそう言うと、カレンは、美咲に抱き着き、嬉しそうに笑った。
それは、二人が、二人で作り上げた、最高のハーモニーだった。
レコーディングを終えた後、二人は、ライブに向けて、本格的な準備を始めた。
美咲とカレンは、ライブのコンセプトについて、話し合った。
「ねえ、美咲。ライブのタイトル、どうしようか?」
カレンがそう尋ねると、美咲は、少しだけ考えてから、答えた。
「うーん……そうだなぁ。『二人のハーモニー』とか、どうかな?」
美咲の言葉に、カレンは、にっこりと微笑んだ。
「いいじゃん! それにしよう!」
二人は、ライブのタイトルを、「二人のハーモニー」に決めた。
ライブの演出についても、二人は、たくさんのアイデアを出し合った。
「ライブの最後に、みんなに、私たちからのサプライズとして、メッセージを伝えよう!」
カレンがそう言うと、美咲は、静かに頷いた。
「うん。私たちの、素直な気持ちを、伝えようね」
二人の夢は、ライブという、具体的な形になって、一つになった。
ライブの日が、刻一刻と近づいてきた。
美咲とカレンは、毎日、歌とダンスの練習に励んだ。
カレンは、かつて歌うことをやめてしまったことが嘘のように、楽しそうに歌っていた。
美咲もまた、カレンと一緒に、歌を歌い、ダンスを踊ることが、心から楽しかった。
二人の練習は、順調に進んだ。
しかし、ライブ当日が近づくにつれて、カレンの心に、少しの不安が、芽生え始めた。
(もし、私たちの歌が、みんなに届かなかったら……)
カレンは、そう考えてしまい、練習に集中できなくなってしまった。
美咲は、そんなカレンの様子に、すぐに気づいた。
「カレン、大丈夫だよ。みんな、きっと、カレンの歌を、心から待ってるから」
美咲の言葉に、カレンは、美咲の方を向いた。
「でも……」
カレンは、そう言って、言葉を詰まらせた。
美咲は、カレンの手を、優しく握り、言った。
「カレンの歌は、カレンが一人で歌う歌じゃない。私たち二人で、みんなに届ける歌なんだ」
美咲の言葉に、カレンは、ハッと気づかされた。
「そっか……そうだね」
カレンは、そう言って、美咲の顔を見つめた。
「ありがとう、美咲。美咲が、隣にいてくれて、本当に良かった」
カレンの言葉に、美咲は、にっこりと微笑んだ。
「うん。私もだよ、カレン」
二人の夢は、もう、一人で追いかける夢ではなかった。
二人で、手を取り合って、一つになって、追いかける夢だった。
ライブ当日まで、あと、少し。
二人のVTuberとしての物語は、今、クライマックスに向けて、加速を始めた。
読んでくれてありがとうございます。




