#051 : 取り戻した光
「ごめん、美咲……」
カレンの声は、VC越しに震えていた。
「私、君に酷いことを言った。一人で苦しませて、本当にごめん……」
美咲は、その言葉に何も言えなかった。ただ、涙を流しながら、小さく頷いた。
「私も、ごめんね、カレン。もっと早く、カレンの苦しみに気づいてあげられればよかった……」
二人の間に流れる空気は、これまでの冷たいものではなく、温かく、そして優しかった。
ゲームはすでに終わっていた。二人は、ただ静かに、互いの心の内を語り合った。カレンは、勝利に執着し、ゲームを楽しむ心を失っていたことを、美咲に打ち明けた。美咲は、そんなカレンを救うために、一人でゲームを始めたことを、カレンに伝えた。
「美咲……どうして?」
カレンがそう尋ねると、美咲は微笑んだ。
「だって、カレンは、ずっと私を支えてくれたから。今度は、私がカレンを支える番だって思ったの」
美咲の言葉に、カレンは再び涙を流した。
「ありがとう……美咲。君に会えて、本当に良かった」
二人の間にあった溝は、ようやく埋まった。ゲームの画面を通して、二人の心は、再び一つになった。
その日の夜、カレンは、コウとユウキに連絡を取った。
「コウくん、ユウキさん……ごめんなさい」
カレンは、頭を下げて謝罪した。
「イベントの時、私、酷いことを言った。勝つことだけにこだわって、みんなの気持ちを考えていなかった」
カレンの言葉に、コウは優しく微笑んだ。
「大丈夫ですよ、先輩。僕たち、みんなで頑張ったこと、楽しかったですよ!」
ユウキも、静かに頷いた。
「私たちは、負けを悔しいとは思っていません。ただ、あなたが、一人で苦しんでいる姿を見るのが、辛かっただけです」
ユウキの言葉に、カレンは、もう一度、頭を下げた。
「ありがとう……」
カレンは、これまでの自分の過ちに気づき、心から謝罪した。そして、コウとユウキは、カレンの正直な気持ちを受け入れ、快くそれを受け入れた。
「もし、よかったら……また、一緒にゲームをしないか?」
カレンがそう言うと、コウは満面の笑顔で頷いた。
「もちろんです! 次は、みんなで、ゲームを楽しみましょうね!」
ユウキも、静かに微笑んだ。
そして、美咲、カレン、コウ、ユウキの四人チームで、再び「イグニッション」をプレイすることになった。
新しい配信が始まった。
配信タイトルは「みんなでイグニッション!」。
カレンは、もうランクマッチには潜らなかった。ただ、仲間たちとゲームを心から楽しんでいた。
「わー! 美咲、後ろ後ろ!」
カレンは、敵に追われている美咲を見て、大声で笑った。
「へへ、大丈夫だよ、カレン! 見てて!」
美咲はそう言って、コントローラーを握りしめ、敵を倒した。
「ナイス! 美咲!」
カレンがそう叫ぶと、コウも「美咲さん、すごい!」と称賛した。
ユウキも、静かに微笑みながら、二人の活躍を見守っていた。
配信は、笑い声に満ちていた。リスナーからのコメントも、以前のような批判的なものはなく、「楽しそうだね!」「これが見たかったんだ!」といった、温かい言葉で溢れていた。
「This is the old RozeBite! She's back!」
(これこそが昔のRozeBiteだ!彼女が戻ってきた!)
「The team's chemistry is so good!」
(このチームの相性、すごく良いね!)
「ローズちゃん最高!」
カレンは、ゲームを「義務」としてではなく、心から楽しんでいた。勝利への執着は消え、そこにあったのは、仲間とゲームを共有する喜びだった。
そして、美咲も、カレンが楽しそうに笑っている姿を見て、安堵の表情を浮かべていた。
「私、やっぱりカレンと一緒にいるのが、一番楽しい」
美咲がそう言うと、カレンは優しく微笑んだ。
「私もだよ、美咲。君といるのが、一番幸せだ」
二人のVtuberとしての活動も、再び以前のような、明るく楽しいものに戻った。
カレンは、ランカーという肩書きを捨てた。だが、その代わりに、何よりも大切なものを取り戻した。
それは、ゲームを心から楽しむこと。そして、美咲という、かけがえのない親友の存在だった。
二人のハーモニーは、今、以前よりも、さらに強く、美しく響き渡っていた。
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