表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミュートを忘れたら英語ネイティブVが世界一になった話  作者: 久家
第二章 : 二人の物語、二つの世界
46/85

#046 : イグニッション、熱狂の戦場



 ユニバーサルVT歌謡祭から二週間後。


 カレンと美咲は、大規模ゲームイベントの会場にいた。モニターには、ゲーム「イグニッション」のマップ情報や、各プレイヤーのステータスがリアルタイムで映し出されている。会場には、数千人の観客が詰めかけ、熱狂的な歓声が響き渡っていた。



「RozeBite先輩、緊張しますね……」


 コウがそう言って、少しだけ震える声でカレンに話しかける。



「大丈夫だよ、コウくん」


 カレンはそう言いながらも、コントローラーを握る手に力を込めた。プロとして、絶対に負けられない。そのプレッシャーが、カレンの心を支配していた。


「……RozeBite、Pingは安定してる。FPSも問題ない。サーバーも良好だ」


 ユウキが冷静に状況を報告する。カレンは、その言葉に小さく頷いた。


「了解。作戦通り、いくよ」


 そして、いよいよ試合が始まった。


 試合開始のカウントダウンが終わり、四人は広大なフィールドに降り立った。


「行くぞ! RozeBite、索敵頼む!」


 コウが元気に声をかける。


「了解。VCボイスチャットはオープンで。無駄な会話はなし」


 カレンはそう言って、チームメイトに指示を出す。


「コウくんは左、ユウキさんは右。美咲は僕の後ろについてきて」


 カレンの指示は、冷静で的確だった。彼女は、これまでの三日間の練習で、すでにこのマップの最適なルートを把握していた。


「了解!」


 コウがそう言って、左の建物へ向かって走り出す。


「……了解」


 ユウキも、カレンの指示に従う。


 カレンは、フィールドを素早く移動しながら、索敵を続ける。


「見つけた。あっちの建物の中に、敵が二体いる」


 カレンがそう言うと、コウが「了解!」と元気な声で返事をした。


「正面からフラッシュ投げる。コウくん、イニシエート頼む」


 カレンはそう言って、敵のいる建物にフラッシュを投げ込む。


「了解!」


 コウは、カレンの投げたフラッシュが炸裂したのを確認すると、建物の中へ飛び込んでいく。


「ロック!(敵を補足した!)」


 コウがそう叫ぶと、カレンは素早くコウの後ろに回り込み、ヘッドショットを狙う。カレンのエイムは、驚くほど正確だった。


「ナイス!」


 コウがそう叫び、カレンのキル(敵を倒すこと)を称賛する。


「次。リロード(弾薬装填)する。美咲、カバー頼む」


 カレンはそう言って、美咲に指示を出す。


「了解!」


 美咲は、カレンの指示に従い、カバーに入る。


 カレンのプレイは、まるで精密機械のようだった。感情を一切見せず、ただひたすらに勝利を追求する。そのプレイスタイルは、チームを勝利へと導いていく。


「やったー! 勝ちましたね!」


 コウがそう叫び、喜んだ。だが、カレンは冷静な表情を崩さなかった。


「まだだ。油断するな。次も、作戦通りにいくぞ」


 カレンの言葉に、コウの笑顔が少しだけ曇った。


 試合は、順調に勝ち進んだ。カレンの卓越したスキルと、的確な判断力は、他のチームを圧倒していた。だが、勝利に近づくにつれて、チームの雰囲気は悪化していく。


「コウくん、なんでリコイルコントロールができてないんだ!?」


 カレンは、コウのミスを厳しく叱責する。


「ご、ごめんなさい……!」


 コウは、カレンの厳しい口調に、少しだけ怯えたような声を出す。


「美咲も! なんでカバーが遅れたんだ!?」


 カレンは、美咲にも厳しい言葉を投げかけた。美咲は、何も言い返さず、ただ静かにコントローラーを握りしめていた。


 ユウキは、そんなカレンの様子を、冷静に見つめていた。


「……RozeBite、少し落ち着いた方がいい。チームの雰囲気が悪くなってる」


 ユウキがそう言うと、カレンはユウキを睨んだ。


「チームの雰囲気が悪くなったって、勝てばいいだろ! 僕たちはプロなんだぞ! 楽しむことなんて、どうでもいいんだ!」


 カレンの言葉に、コウとユウキは言葉を失った。



 美咲は、そんなカレンの様子を心配そうに見つめていた。カレンは、もうゲームを「楽しむ」ことを忘れていた。ただ、勝つことだけに囚われ、他のメンバーとのコミュニケーションも、すべて後回しにしていた。


 美咲は、カレンの心に寄り添いたいと思ったが、どう声をかけていいか分からなかった。


 そして、ついに最後の試合を迎える。


 相手は、業界でもトップクラスのゲーマーVtuberが集まる強豪チーム。


「いくぞ! みんな、ついてきてくれ!」


 カレンがそう言うと、コウとユウキは、少しだけ顔を曇らせながら、カレンの後を追った。


 勝利への執着が、カレンの心を支配していた。だが、その執着は、チームの絆を、少しずつ壊していった。


 そして、カレンの苦悩は、これから始まる。

読んでくれてありがとうございます。

いやぁここ書いてる時結構辛かったんですよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ