#046 : イグニッション、熱狂の戦場
ユニバーサルVT歌謡祭から二週間後。
カレンと美咲は、大規模ゲームイベントの会場にいた。モニターには、ゲーム「イグニッション」のマップ情報や、各プレイヤーのステータスがリアルタイムで映し出されている。会場には、数千人の観客が詰めかけ、熱狂的な歓声が響き渡っていた。
「RozeBite先輩、緊張しますね……」
コウがそう言って、少しだけ震える声でカレンに話しかける。
「大丈夫だよ、コウくん」
カレンはそう言いながらも、コントローラーを握る手に力を込めた。プロとして、絶対に負けられない。そのプレッシャーが、カレンの心を支配していた。
「……RozeBite、Pingは安定してる。FPSも問題ない。サーバーも良好だ」
ユウキが冷静に状況を報告する。カレンは、その言葉に小さく頷いた。
「了解。作戦通り、いくよ」
そして、いよいよ試合が始まった。
試合開始のカウントダウンが終わり、四人は広大なフィールドに降り立った。
「行くぞ! RozeBite、索敵頼む!」
コウが元気に声をかける。
「了解。VCはオープンで。無駄な会話はなし」
カレンはそう言って、チームメイトに指示を出す。
「コウくんは左、ユウキさんは右。美咲は僕の後ろについてきて」
カレンの指示は、冷静で的確だった。彼女は、これまでの三日間の練習で、すでにこのマップの最適なルートを把握していた。
「了解!」
コウがそう言って、左の建物へ向かって走り出す。
「……了解」
ユウキも、カレンの指示に従う。
カレンは、フィールドを素早く移動しながら、索敵を続ける。
「見つけた。あっちの建物の中に、敵が二体いる」
カレンがそう言うと、コウが「了解!」と元気な声で返事をした。
「正面からフラッシュ投げる。コウくん、イニシエート頼む」
カレンはそう言って、敵のいる建物にフラッシュを投げ込む。
「了解!」
コウは、カレンの投げたフラッシュが炸裂したのを確認すると、建物の中へ飛び込んでいく。
「ロック!(敵を補足した!)」
コウがそう叫ぶと、カレンは素早くコウの後ろに回り込み、ヘッドショットを狙う。カレンのエイムは、驚くほど正確だった。
「ナイス!」
コウがそう叫び、カレンのキル(敵を倒すこと)を称賛する。
「次。リロード(弾薬装填)する。美咲、カバー頼む」
カレンはそう言って、美咲に指示を出す。
「了解!」
美咲は、カレンの指示に従い、カバーに入る。
カレンのプレイは、まるで精密機械のようだった。感情を一切見せず、ただひたすらに勝利を追求する。そのプレイスタイルは、チームを勝利へと導いていく。
「やったー! 勝ちましたね!」
コウがそう叫び、喜んだ。だが、カレンは冷静な表情を崩さなかった。
「まだだ。油断するな。次も、作戦通りにいくぞ」
カレンの言葉に、コウの笑顔が少しだけ曇った。
試合は、順調に勝ち進んだ。カレンの卓越したスキルと、的確な判断力は、他のチームを圧倒していた。だが、勝利に近づくにつれて、チームの雰囲気は悪化していく。
「コウくん、なんでリコイルコントロールができてないんだ!?」
カレンは、コウのミスを厳しく叱責する。
「ご、ごめんなさい……!」
コウは、カレンの厳しい口調に、少しだけ怯えたような声を出す。
「美咲も! なんでカバーが遅れたんだ!?」
カレンは、美咲にも厳しい言葉を投げかけた。美咲は、何も言い返さず、ただ静かにコントローラーを握りしめていた。
ユウキは、そんなカレンの様子を、冷静に見つめていた。
「……RozeBite、少し落ち着いた方がいい。チームの雰囲気が悪くなってる」
ユウキがそう言うと、カレンはユウキを睨んだ。
「チームの雰囲気が悪くなったって、勝てばいいだろ! 僕たちはプロなんだぞ! 楽しむことなんて、どうでもいいんだ!」
カレンの言葉に、コウとユウキは言葉を失った。
美咲は、そんなカレンの様子を心配そうに見つめていた。カレンは、もうゲームを「楽しむ」ことを忘れていた。ただ、勝つことだけに囚われ、他のメンバーとのコミュニケーションも、すべて後回しにしていた。
美咲は、カレンの心に寄り添いたいと思ったが、どう声をかけていいか分からなかった。
そして、ついに最後の試合を迎える。
相手は、業界でもトップクラスのゲーマーVtuberが集まる強豪チーム。
「いくぞ! みんな、ついてきてくれ!」
カレンがそう言うと、コウとユウキは、少しだけ顔を曇らせながら、カレンの後を追った。
勝利への執着が、カレンの心を支配していた。だが、その執着は、チームの絆を、少しずつ壊していった。
そして、カレンの苦悩は、これから始まる。
読んでくれてありがとうございます。
いやぁここ書いてる時結構辛かったんですよね。




