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ミュートを忘れたら英語ネイティブVが世界一になった話  作者: 久家
第二章 : 二人の物語、二つの世界
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#044 : 広がる世界



 ユニバーサルVT歌謡祭での成功から、わずか数週間。カレンと美咲の日常は、劇的に変化していた。


 これまでは自宅での配信が活動の中心だったが、今では企業からのオファーや、テレビ番組へのゲスト出演など、多忙な日々を送っている。


Vtuberとしての活動の幅は、想像を遥かに超えて広がっていた。


「はい、OKです!」


 テレビ局のスタジオで、カレンと美咲はカメラに向かって笑顔を向けていた。


 二人のトークは息がぴったりで、スタジオのスタッフたちもその仲の良さに驚いている。隣に立つ美咲は、もはや「完璧な美玲エラ」を演じることに戸惑うことはない。


 自然体でクールな魅力を振りまき、プロとして堂々とした姿を見せていた。


「すごいね、美咲。もうプロだよ」


 撮影の合間に、カレンがそう言うと、美咲は少しだけ照れたように笑った。


「カレンのおかげだよ。一人じゃ、こんなに頑張れなかった」


 美咲はそう言って、カレンに優しく微笑んだ。美咲がVtuberになってから、二人はより多くの時間を共に過ごすようになった。仕事でもプライベートでも、いつも隣にいる美咲の存在は、カレンにとって何よりも心強いものだった。


 二人の関係性は、仕事の成功と共に、ますます強固なものになっていた。


 その日の午後。二人は事務所の会議室で、神田マネージャーと向き合っていた。神田さんは、二人の活躍を心から喜んでいるようで、いつも以上に笑顔だ。


「いやぁ、君たち二人の活躍には、正直驚いているよ。リライブプロダクションの評価も、うなぎ上りだ」


 神田さんの言葉に、カレンと美咲は顔を見合わせ、照れくさそうに笑った。


「それで、今日二人を呼んだのは、新しい仕事のオファーが来ているからだ」


 神田さんはそう言うと、タブレットの画面を二人に向けた。そこには、一つのゲームのロゴが映し出されている。


『イグニッション』


 そのロゴを見た瞬間、カレンは息をのんだ。彼女の心臓が、ドクンと大きく鳴り響く。


「このゲーム……」


 カレンは、無意識にそうつぶやいた。美咲は、カレンの様子に気づき、不思議そうな表情を浮かべる。


「RozeBiteは、このゲームを知っているかな?」


 神田さんが尋ねると、カレンはゆっくりと頷いた。


「はい……知っています」


「実は、この『イグニッション』の大型イベントに、君たち二人をゲストとして招待したいというオファーが来ている。イベントはチーム戦で、他のVtuberとチームを組んで、大会に参加してもらうんだ」


 神田さんの言葉に、美咲は目を輝かせる。だが、カレンは、その言葉を複雑な表情で聞いていた。


「カレン、どうしたの? このゲーム、もしかしてやったことあるの?」


 美咲がそう尋ねると、カレンはゆっくりと頷いた。


「うん……実は、Vtuberになる前から、ずっとやっていたんだ。誰にも言わずに、一人で……」


「え、そうなの!?」


 美咲は驚きを隠せない。カレンが、配信ではほとんど触れないゲームに、密かに熱中していたことを知らなかったからだ。


「君がRozeBiteとして活動を始めてから、僕は君の趣味や特技、あらゆる情報を集めていた。その中で、君が『イグニッション』で、かなりの腕を持っていることを知ったんだ」


 神田さんの言葉に、カレンは戸惑った。自分のプライベートな趣味が、仕事に繋がるとは思ってもいなかったからだ。


「このイベントは、ただのゲスト出演じゃない。チームを組んで、本気で勝ちを目指してもらう。そして、その様子を配信してもらう」


 神田さんの言葉に、カレンの顔が引き締まる。


「プロのVtuberとして、負けられない戦いだ。君たちの絆が試される、良い機会になるだろう」


 神田さんの言葉は、カレンの心に重く響いた。趣味として、純粋に楽しんでいたゲーム。それが今、プロとして、勝つことが求められる「仕事」になったのだ。


「カレン、やるの?」


 美咲がそう尋ねると、カレンは少しだけ躊躇してから、決意を固めたように、力強く頷いた。


「うん……やるよ」


 カレンの顔には、新しい困難に立ち向かう決意と、少しの不安が入り混じっていた。


 美咲は、そんなカレンの様子を心配そうに見つめる。新しい挑戦が、二人の物語に、また新たな波紋を投げかけようとしていた。

読んでくれてありがとうございます

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