表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミュートを忘れたら英語ネイティブVが世界一になった話  作者: 久家
第二章 : 二人の物語、二つの世界
42/85

#042 : 照明のハーモニー

 


 ―――ユニバーサルVT歌謡祭当日。会場のボルテージは最高潮に達し、数万人の熱狂が、分厚い壁を隔てた舞台裏にまで伝わってくる。


「すごい熱気だね……」


 カレンはそう言って、緊張で固まっている美咲の肩を優しく叩いた。


「うん……」


 美咲の声は震えていた。クールな美玲エラのアバターとは裏腹に、マイクを握るその手は、まるで小鹿のように震えていた。


「大丈夫だよ、美咲」


 カレンはそう言って、美咲の手を優しく握った。美咲は、カレンの温かい手に、少しだけ安堵したように、ふっと息を吐いた。


「ありがとう、カレン。私、すごく緊張してる」


「私もだよ。でも……私たちは、私たちが信じる歌を届けよう。私たちが、私たちにしか歌えない歌を」


 カレンの言葉に、美咲は力強く頷いた。


「うん……私たちの歌を、届けよう」


 二人は、お互いの目をまっすぐに見つめ合った。そこに言葉は必要なかった。ただ、お互いの手の温もりを感じるだけで、心が通じ合っているのが分かった。


 そして、司会者の紹介とともに、二人は舞台に上がった。


 スポットライトが、二人のアバターを照らし出す。その瞬間、会場は一瞬静まり返り、そして、大きな歓声に包まれた。


「ユア・メロディ」のイントロが、会場に響き渡る。


 歌い出しは、美咲のパートだった。クールで力強い歌声が、会場の空気を一変させる。


 美咲の歌声に合わせて、カレンは美咲との出会いを思い出していた。


 美咲が、自分を助けるために、Vtuberの世界へ飛び込んできたこと。


 カレンに内緒で配信の準備をしていた、あの日のこと。


 Vtuberとしての自分を肯定してくれた、あの日のこと。


 美咲の歌声には、カレンへの深い愛情と、Vtuberとして完璧でありたいという、美咲の強い決意が込められていた。


 そして、サビに入ると、カレンのパートが始まった。優しくて、温かい歌声が、美咲の歌声に重なり合う。


 カレンの歌声に合わせて、美咲はカレンとの日々を思い出していた。


 カレンが、配信事故に苦しみ、一人で悩んでいたこと。



 カレンが、自分のために、優しさをくれたこと。

 そして、自分が無理して完璧な自分を演じなくても、カレンはありのままの自分を愛してくれていることを知った、あの日のこと。


 カレンの歌声には、美咲への深い感謝と、ありのままの自分でいることの喜びが込められていた。


 そして、二人の歌声が、一つのハーモニーとなって重なり合う。



『君が隣にいたから、私は強くなれた』



 その歌詞が、会場に響き渡った瞬間、観客の心に、二人の物語が、まるで映像のように流れ込んだ。


 二人の歌声は、温かく、そして力強かった。それは、言葉や理屈を超え、二人の絆が本物であることを証明していた。


 会場は、二人の歌声に心を打たれ、静かに涙を流す者がいた。コメント欄は、「泣いた」「最高」といった言葉で埋め尽くされ、感動の嵐となっていた。


 そして、舞台裏で二人のパフォーマンスを見ていた、以前二人を「ビジネスだ」と批判していた他のVtuberたちも、二人の歌声に心を奪われていた。その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。


 歌い終え、満場の拍手と大歓声に包まれる二人。



 カレンと美咲は、感動で言葉を失い、お互いを見つめ合った。その瞳には、安堵と達成感、そして、二人の絆を改めて確認できた喜びが満ちていた。


 舞台から降りると、神田マネージャーやリリス、ネアといった仲間たちが、二人の成功を称賛し、抱きしめ合う。



「Roze先輩! 美咲さん! 最高でした! 本当に最高でした!」


 ネアが涙を流しながら、二人に抱きついてくる。


「あんたたち、なかなかやるじゃない!」


 リリスもまた、クールな表情を保ちながらも、その瞳は潤んでいた。


「ありがとう、二人とも……」


 カレンはそう言って、仲間たちに感謝を伝えた。


 そして、最後に、美咲はカレンの手を優しく握った。


「カレン、私たち……やれたね」


 美咲の言葉に、カレンは力強く頷いた。


「うん。最高だったよ、美咲」


 二人の瞳には、互いへの深い愛情が満ちていた。




 この日の歌謡祭は、二人のVtuberとしてのキャリアを大きく変えるものだった。そして、それ以上に、二人の絆が永遠のものであることを証明する、かけがえのない一日となった。


 二人の物語は、これからも続いていく。

読んでくれてありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ