#037 : 交差する想い、と初のコラボへ
美玲エラとRozeBiteの初の公認コラボ配信が決定してから数日。
カレンの部屋には、PCとマイク、そして二つのマグカップが置かれた机を挟んで、カレンと美咲が向かい合っていた。窓の外からは、穏やかな午後の日差しが差し込んでいる。
「さて、企画案なんだけど……」
美咲はそう言って、タブレットの画面をカレンに見せる。そこには、「美玲エラ&RozeBite 初のコラボ配信案」と書かれた資料がびっしりと並んでいた。
「クールな私と、キュートなRozeBite先輩のギャップを活かした『ギャップ萌え対決』とか、お互いのプライベートを暴露し合う『暴露トーク』とか……どうかな?」
美咲は真剣な表情で企画案を説明する。その眼差しは、Vtuberとしての活動に真摯に向き合うプロのそれだった。
「なんか、すごいね……美咲って、配信のこと、すごく真剣に考えてるんだね」
カレンがそう言うと、美咲は少しだけ照れたように笑った。
「そりゃそうでしょ。せっかくVtuberになったんだから、中途半端なことはしたくないし」
美咲の言葉に、カレンは少しだけ胸が熱くなった。
「ね、私としては、もうちょっと真面目な感じがいいかなって思ってて。ほら、RozeBiteと美玲エラって、ファンからはまだそんなに仲良しって思われてないから、まずは『ビジネスフレンド』としての距離感を、ちゃんと意識した方がいいかなって」
美咲がそう言って、少しだけ俯いた。
「『ビジネスフレンド』……?」
カレンは、美咲の口から出たその言葉に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
美咲がVtuberになったのは、カレンを支えるためだ。それなのに、「ビジネス」という言葉を使って、自分との間に距離を置こうとしているように聞こえた。
「だって、私たち、プライベートでは仲良いけど、配信上ではまだそうじゃないし。それに、いきなり仲良しアピールしても、ファンも戸惑うかもしれないし……」
美咲はそう言って、企画書をめくる。その顔には、プレッシャーと不安が入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。
「美咲……」
カレンは美咲の不安を察し、言葉を失った。美咲が自分を支えるために、どれほどの覚悟を持ってVtuberになったのか、カレンは知っている。だからこそ、その言葉が重く響いたのだ。
「ごめんね、なんか重い話になっちゃったね。ほら、次はゲーム企画について話そうか」
美咲はそう言って、無理に明るく振る舞おうとする。だが、カレンはそれ以上、話を続ける気になれなかった。
「ちょっと待って、美咲」
カレンは美咲の手を掴んだ。美咲は驚いたように顔を上げる。
「なんで……なんで、そんなこと言うの?」
カレンの震える声に、美咲は困惑した表情を浮かべる。
「だって、これ、仕事だから……」
美咲がそう言うと、カレンは首を横に振った。
「違う……違うよ。美咲は、私を支えるためにVtuberになったんでしょ? なのに、なんで『ビジネス』なんて言葉を使うの?」
カレンの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
美咲は、カレンの涙を見て、ハッとした表情を浮かべる。
「カレン……泣かないでよ」
美咲はそう言って、カレンの涙を指で拭った。
「だって、美咲は、私のために、Vtuberになったんだよ……? なのに、なんで、そんなに苦しそうなの?」
カレンはそう言って、美咲を抱きしめた。美咲は、カレンの腕の中で、小さく震えていた。
「ごめんね……私、カレンを支えるって決めたから、失敗したくなくて……」
美咲の言葉は、震えていた。
「大丈夫だよ、美咲は美咲のままでいいんだよ。私を支えてくれるのは嬉しい。でも、美咲も、美咲自身の夢を見つけてほしい。美玲エラとして、美咲が本当にやりたいことを見つけてほしい」
カレンの優しい言葉が、美咲の心を温かく包み込む。美咲は、カレンの腕の中で、静かに涙を流した。
「ありがとう……カレン……」
美咲はそう言って、カレンを抱きしめ返した。二人の間には、言葉はいらなかった。ただ、お互いの温もりを感じるだけで、心が通じ合っているのが分かった。
「さてと、そろそろ準備しないとね」
美咲はそう言って、カレンから体を離した。美咲の顔には、もう不安の色はなかった。そこには、カレンへの感謝と、Vtuberとしての活動への期待が満ち溢れていた。
「そうだね、美咲。明日の配信、楽しみだね!」
カレンはそう言って、美咲に笑顔を向ける。二人の間には、以前よりも深い絆が生まれていた。
翌日の配信に向け、二人は前向きな気持ちで準備を再開する。
それは、単なるコラボ配信の準備ではなく、二人の未来を拓くための、新しい一歩だった。
次回コラボ配信回だと思います!
読んでくれてありがとうございます。




