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ミュートを忘れたら英語ネイティブVが世界一になった話  作者: 久家
第二章 : 二人の物語、二つの世界
37/85

#037 : 交差する想い、と初のコラボへ

 


 美玲エラとRozeBiteの初の公認コラボ配信が決定してから数日。


 カレンの部屋には、PCとマイク、そして二つのマグカップが置かれた机を挟んで、カレンと美咲が向かい合っていた。窓の外からは、穏やかな午後の日差しが差し込んでいる。




「さて、企画案なんだけど……」


 美咲はそう言って、タブレットの画面をカレンに見せる。そこには、「美玲エラ&RozeBite 初のコラボ配信案」と書かれた資料がびっしりと並んでいた。



「クールな私と、キュートなRozeBite先輩のギャップを活かした『ギャップ萌え対決』とか、お互いのプライベートを暴露し合う『暴露トーク』とか……どうかな?」


 美咲は真剣な表情で企画案を説明する。その眼差しは、Vtuberとしての活動に真摯に向き合うプロのそれだった。



「なんか、すごいね……美咲って、配信のこと、すごく真剣に考えてるんだね」



 カレンがそう言うと、美咲は少しだけ照れたように笑った。



「そりゃそうでしょ。せっかくVtuberになったんだから、中途半端なことはしたくないし」


 美咲の言葉に、カレンは少しだけ胸が熱くなった。



「ね、私としては、もうちょっと真面目な感じがいいかなって思ってて。ほら、RozeBiteと美玲エラって、ファンからはまだそんなに仲良しって思われてないから、まずは『ビジネスフレンド』としての距離感を、ちゃんと意識した方がいいかなって」




 美咲がそう言って、少しだけ俯いた。


「『ビジネスフレンド』……?」


 カレンは、美咲の口から出たその言葉に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。


 美咲がVtuberになったのは、カレンを支えるためだ。それなのに、「ビジネス」という言葉を使って、自分との間に距離を置こうとしているように聞こえた。



「だって、私たち、プライベートでは仲良いけど、配信上ではまだそうじゃないし。それに、いきなり仲良しアピールしても、ファンも戸惑うかもしれないし……」


 美咲はそう言って、企画書をめくる。その顔には、プレッシャーと不安が入り混じった複雑な表情が浮かんでいた。


「美咲……」


 カレンは美咲の不安を察し、言葉を失った。美咲が自分を支えるために、どれほどの覚悟を持ってVtuberになったのか、カレンは知っている。だからこそ、その言葉が重く響いたのだ。



「ごめんね、なんか重い話になっちゃったね。ほら、次はゲーム企画について話そうか」



 美咲はそう言って、無理に明るく振る舞おうとする。だが、カレンはそれ以上、話を続ける気になれなかった。


「ちょっと待って、美咲」


 カレンは美咲の手を掴んだ。美咲は驚いたように顔を上げる。


「なんで……なんで、そんなこと言うの?」



 カレンの震える声に、美咲は困惑した表情を浮かべる。


「だって、これ、仕事だから……」


 美咲がそう言うと、カレンは首を横に振った。



「違う……違うよ。美咲は、私を支えるためにVtuberになったんでしょ? なのに、なんで『ビジネス』なんて言葉を使うの?」


 カレンの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。



 美咲は、カレンの涙を見て、ハッとした表情を浮かべる。


「カレン……泣かないでよ」


 美咲はそう言って、カレンの涙を指で拭った。


「だって、美咲は、私のために、Vtuberになったんだよ……? なのに、なんで、そんなに苦しそうなの?」



 カレンはそう言って、美咲を抱きしめた。美咲は、カレンの腕の中で、小さく震えていた。


「ごめんね……私、カレンを支えるって決めたから、失敗したくなくて……」


 美咲の言葉は、震えていた。



「大丈夫だよ、美咲は美咲のままでいいんだよ。私を支えてくれるのは嬉しい。でも、美咲も、美咲自身の夢を見つけてほしい。美玲エラとして、美咲が本当にやりたいことを見つけてほしい」



 カレンの優しい言葉が、美咲の心を温かく包み込む。美咲は、カレンの腕の中で、静かに涙を流した。


「ありがとう……カレン……」


 美咲はそう言って、カレンを抱きしめ返した。二人の間には、言葉はいらなかった。ただ、お互いの温もりを感じるだけで、心が通じ合っているのが分かった。


「さてと、そろそろ準備しないとね」



 美咲はそう言って、カレンから体を離した。美咲の顔には、もう不安の色はなかった。そこには、カレンへの感謝と、Vtuberとしての活動への期待が満ち溢れていた。


「そうだね、美咲。明日の配信、楽しみだね!」


 カレンはそう言って、美咲に笑顔を向ける。二人の間には、以前よりも深い絆が生まれていた。


 翌日の配信に向け、二人は前向きな気持ちで準備を再開する。



 それは、単なるコラボ配信の準備ではなく、二人の未来を拓くための、新しい一歩だった。

次回コラボ配信回だと思います!

読んでくれてありがとうございます。

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