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#034 : カウントダウンとそれぞれのおもい



その日、リライブの事務所は異様な熱気に包まれていた。神田マネージャーの呼びかけで、カレン、リリス、宵咲ネア、そして他のメンバーが会議室に集まっていたのだ。


誰もが、明日デビューする新人Vtuberの話題で持ちきりだった。



神田さんは落ち着いた手つきで、プロジェクターのスイッチを入れる。部屋の明かりが落ち、スクリーンに映像が映し出された。



「さて、皆には一足先に、新人のプロモーションビデオを見てもらおう」



流れたのは、スタイリッシュな映像だった。薄暗い宇宙を背景に、紫と銀の光が交錯する。やがて、その光が収束し、一人の少女の姿が現れた。



黒く艶やかな長い髪。切れ長の瞳。どこかクールでミステリアスな雰囲気を持つ、吸血鬼を思わせるキャラクターだった。


映像には台詞はなく、ただ静かにキャラクターの姿を映し出す。 だが、その存在感は圧倒的だった。



「すごい……! かっこいい!」



ネアが純粋な感動の声を漏らす。リリスは腕を組み、冷ややかな視線を向けながらも、その口元は微かに緩んでいた。



「フン……悪くないじゃない。うちの新人、なかなかやるわね」



カレンは、皆の熱気から少しだけ離れた場所で、ただじっとスクリーンを見つめていた。


新しい仲間が増えることへの純粋な喜び。


それはもちろんある。だが、それと同じくらい、自分の居場所が薄れてしまうかもしれないという、漠然とした不安も感じていた。




(この子に、私の癒しと毒舌の居場所が奪われちゃうのかな……)


そんな考えが頭をよぎる。しかし、映像の最後に映し出された、少女が不敵に笑う姿を見て、カレンは背筋が伸びる思いだった。



「明日、いよいよデビューだ」



神田さんがそう告げると、会議室は再び期待の声で満たされる。カレンは皆と共に、新しい仲間を迎え入れる決意を固めた。


その日の夜、美咲はカレンの部屋の隣、秘密裏に借りた配信部屋で最終チェックをしていた。


ディスプレイに映るのは、プロモーションビデオで見た少女、美玲エラのモデルデータ。



「……緊張するな」



美咲は、マウスを握る手に力を込めた。


これは、単なる新しい挑戦ではない。カレンの配信事故を見て、彼女の秘密を知ったあの時、美咲は無力感を味わった。


カレンが一人で戦い、葛藤している姿を、ただ見ていることしかできなかった。




(だから、今度は私が、カレンを支える番なんだ)




美咲は、カレンが「癒し」と「毒舌」の間で揺れていた時、自分も何とかしてあげたいと強く願っていた。そして、この道を選んだ。カレンの隣で、カレンが安心して活動できる場所を、違う形で支えたいと。


「これは、カレンを支えるための、私なりの方法だから」


美咲はそう心の中でつぶやき、覚悟を決める。ディスプレイに映る自分のアバターに、優しく微笑みかけた。




夜遅く。事務所から帰宅したカレンと美咲は、リビングで夕食を共にしていた。


だが、美咲はどこかソワソワしている。箸を持つ手が落ち着かず、時折、腕時計に視線をやる。



「どうしたの? なんかソワソワしてるけど」



カレンが尋ねると、美咲は少しだけ笑顔を見せた。


「ううん、何でもない。ただ、明日、びっくりすることがあるかもねって思って」


美咲はそう言って、冗談めかして笑ったが、その瞳はどこか真剣だった。


F のリライブ公式のニュースが放送されていた。ふと、画面に大きな文字が映し出される。


『リライブプロダクション、明日デビューの新人Vtuber「美玲エラ」のデビュー配信が決定!』


カレンは思わずテレビに視線を奪われた。


「美玲、エラ……」



聞き慣れない名前に、カレンは首を傾げる。しかし、美咲は、その名前を聞いて、少しだけ顔をこわばらせた。


「美咲……?」



カレンは美咲の顔を見た。美咲は、緊張で顔をこわばらせながらも、カレンをじっと見つめていた。



その瞬間、カレンは美咲の瞳の奥に、かつて見たことのある、強い光を見つけた。



それは、配信部屋で見た、Vtuberとしての彼女が放つ光。



そして、カレンの頭の中に、点と点が繋がるように、美咲のこれまでの行動が、一つに繋がっていった。


「まさか……」


カレンの驚きに満ちた声が、静かな部屋に響き渡る。


美咲は、その声に何も答えず、ただじっと、カレンの顔を見つめていた。

頭ぱっぱかぱーです。

次回楽しみですねー

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