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#032 : 期待と不安の狭間で



リリスとのコラボ配信を終え、カレンの心には久々に穏やかな朝が訪れていた。ベッドの中でスマホを手に取ると、画面には無数の通知が並ぶ。Fのタイムラインには、リリスとのコラボ配信の切り抜きがいくつも上がっていた。




「RozeBite, back with a bang! The sass is back!」

⇒RozeBiteが華々しく復活!あの毒舌が帰ってきた!

「リリスとRozeのコンビ、やっぱ最高!」

「おかえり!ずっと待ってたよ」


好意的なコメントの波に、カレンは安堵のため息をついた。その言葉一つひとつが、自分が選んだ道は間違っていなかったのだと、静かに肯定してくれるようだった。



その時、神田マネージャーからのメッセージが届く。


『今日の14時、今後の配信方針について話したい。事務所に来れるか?』



カレンは少し緊張しつつも、「はい、大丈夫です」と返信した。


約束の時間に事務所を訪れると、神田は落ち着いた表情でカレンを迎えた。


「カレン、元気そうだな。配信、良かったぞ」 


「ありがとうございます……」


神田はそう言って、パソコンの画面をカレンに見せる。そこには、過去の配信データや、視聴者の動向を分析したグラフが並んでいた。



「今回の件で、お前のファン層は大きく広がった。日本だけでなく、海外からの流入も多い。特に海外からの流入率は、ミュート忘れの事故後から15%から70%にまで跳ね上がっている」


カレンは驚きを隠せない。自分が思っていた以上に、世間は彼女の「素」を求めていたのだ。


「じゃあ……今後も、このままでいいんでしょうか?」


「ああ。だが、一つだけ気を付けてほしいことがある」


神田はそう言って、リライブが提携している貸しスタジオの資料をカレンに見せた。



「今後は、ここでの配信を推奨する。最新の機材と、セキュリティも万全だ。もう二度と、私生活を覗かれるようなことはあってはいけない」



カレンは、美咲との出来事を思い出し、少し複雑な表情で頷いた。


「はい……分かりました」


神田はそんなカレンの表情を見て、優しく微笑んだ。


「無理はしなくていい。自分のペースで、楽しんでやってくれ」


その言葉に、カレンは再びVtuberとして活動していく勇気をもらった気がした。





一方、カレンが事務所にいる頃、美咲は一人、大学近くのカフェでパソコンに向かっていた。


画面には、Vtuberの活動に関わるような企画書や配信機材のリストなどが並んでいる。


美咲は、誰かと電話で真剣な顔で話していた。


「はい、全て準備が整いました。あとは、カレンに内緒でお願いします……。はい、絶対にサプライズ成功させますので」


美咲の口から漏れる言葉は、カレンの知る彼女とは違う、プロフェッショナルなものだった。電話を終えると、美咲はパソコンの画面を閉じる。



「カレン、もう少しだけ待っててね」



美咲は、遠くの空を見つめながら、決意を新たにしていた。

カレンと美咲、それぞれの場所で、それぞれの物語が動き始めていた。

読んでくれてありがとうございます

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