#003毒舌キャラ始めました(仮)
今回話から英語の訳を付けました。
よろしくお願いします
夜。
私は配信サイト「Re:Live」の配信準備画面を前に、深いため息をついていた。
「ほんとにやるの……? 私、毒舌キャラとか、柄じゃないんだけど……」
けど、もはや「癒し系Vtuber・RozeBite」は過去の存在。
昨日の“ミュートし忘れ事故”で、本性バレも英語力バレも全部済んでしまった。
やるしかない。
逃げたら、それこそ“偽り”のままだ。
深呼吸して、「配信開始」ボタンをクリックした。
カウントダウン——
3、2、1……
「――Yo, what's up, losers.」
《やあ、負け犬ども。今日も元気にしてた?》
一瞬の沈黙。そして。
コメント欄が爆発した。
《!?!?!?》
《おかえり!!!!》
《最高の一言》
《もう最初からクライマックス》
《This is the RozeBite we love!!》
⇒《これこそ俺たちのRozeBiteだ!》
《She’s backkkk!!!》
⇒《帰ってきたあああ!!!》
自分でも信じられないくらいスラスラと毒が出てくる。
まるで昨日の事故が、自分の中の“フタ”を外してしまったみたいだった。
「癒し系Vtuber? 誰それ?」
「I don’t know that boring version of me.」
《癒し系やってた私なんて、知らないわよ》
「ていうか、コメント欄のアイコンさ、正直センス無さすぎじゃない?」
「Like, what is that? A clown? Oh wait, that’s your face.」
《それ何?ピエロ?あ、ごめん、それアンタの顔か》
拍手。歓声。スパチャ(=投げ銭)が飛ぶ。
コメント欄が「www」と「LOL」で埋まっていく。
英語も日本語も関係なく、世界中のファンが一斉に私を歓迎してくれていた。
「ほら、言ったでしょ。私は、RozeBite。
バラにはトゲがあるって、知らなかったの?」
《甘く見てたら痛い目見るよ? 私、見た目だけのバラじゃないんで》
自分でも引くほどのドヤ顔を、モデルの口元に貼り付けたまま、配信は続いた。
まさか、こんなに楽しいなんて思わなかった。
癒し系だった頃の配信では、言いたくても言えなかったことがたくさんあった。
遠慮して、気を使って、いつも“良い子”を演じていた。
でも今は違う。
英語も、日本語も、私の全部が、画面の向こうにちゃんと届いてる。
そして、画面の横には、チャット欄の上にひときわ目立つ名前があった。
【同じ事務所の同期Vtuber】Lilith_Ray
コメント:「ちょ、カレン暴走しすぎwww 一緒にコラボしよ?w」
「リリス……アンタも見てたのね。」
「Well, fine. Let’s see if your goth princess act can handle my bite.」
《いいわ。アンタのゴス姫キャラが、この毒舌に耐えられるか見せてもらいましょ》
コメント欄がまた笑いで埋まる。
毒舌は、私の武器になった。
もう、元には戻らない。戻る必要も、ない。
これは、“癒し系”じゃない。
本当の私、RozeBiteとしての、最初の一歩だった。
読んでくれてありがとうございます