#019: 画面の光が消えるとき
急なんですけど、昨日夜散歩してたら気づいたら隣にお婆さんがいてめちゃびっくりして夜の散歩やめようって思いながら家にダッシュで帰宅しました。皆さんも夜の怖い経験あったりします?
夜の配信を終え、カレンはマイクのスイッチを切った。
ヘッドセットを外すと、耳に残っていた自分の声が、静けさに溶けていく。
机の上には、まだ温かいままの紅茶のマグカップ。
チャット欄で流れていた笑い声や応援の言葉が、頭の中でふわふわとリフレインする。
「今日も……楽しかったな」
RozeBiteとして過ごす時間は、まるで舞台の上に立っているような感覚だ。
スポットライトの下で笑い、時に毒を吐き、それでも最後には「また会おう」と手を振る。
けれど、それはあくまで“配信の中の自分”。
モニターを閉じた瞬間、部屋の空気は現実の色を取り戻す。
ライトの暖色が壁に広がり、カレンはようやく深く息をついた。
ふと、机の端に置かれた大学の教科書が目に入る。
明日は1限から授業だ。
提出期限が迫っているレポートも、まだ半分しか終わっていない。
「……やらなきゃな」
Vtuberとしての活動と大学生活、その両立は簡単じゃない。
配信準備や動画の確認で夜更かしする日も多く、翌日の講義でうとうとすることもある。
それでも、どちらも自分にとって大事な時間だ。
机の引き出しからノートを取り出しながら、カレンは思い出す。
最近、大学の友人――中学からの親友・美咲に「また会おうよ」と誘われていたことを。
美咲は、カレンがVtuberをやっていることを知らない。
いや、正確には“言えていない”。
心の中で何度もタイミングを探しながら、結局は「また今度」で流してきた。
スマホの画面に、StreamLinkからの通知が届く。
Lilith_Rayからだ。
【Lilith_Ray】:
「配信お疲れー。明日はオフなんでしょ?ちゃんと寝ろよ」
くすっと笑いながら返信する。
【カレン】:
「はいはい、わかってますよ」
スマホを置くと、視線は再び教科書へ。
現実と配信、その境界線を行き来する生活が、今日も続いていく。
美咲と会えば、Vtuberの自分ではなく、ただの“橘カレン”としての時間が流れる。
その時間が、少し怖くて、でも楽しみで仕方なかった。
カレンはマグカップの紅茶を飲み干し、机に向かう。
その瞳の奥には、次の配信ではなく、近づいてくる週末の景色が映っていた。
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