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#010 世界の声が届いた日


カレンが目を覚ましたとき、スマホの通知は400件以上だった。


──え、なにこれ。壊れた?

一瞬そう思ってしまうほど、Fの通知、StreamLinkのメンション、Voisyncのタグ付き動画が嵐のように押し寄せていた。



昨夜、海外Vtuberたちとのコラボ配信は大盛況だった。

視聴者数は同時接続で10万人を超え、Voisyncでは早くも切り抜き動画が数百本上がっている。




「RozeBite's sass is ICONIC lol」

「RozeBiteの毒舌は伝説級(笑)」 


「She roasted Cabin Marin and he LAUGHED?? Queen behavior」

「キャビン・マリンをイジって笑わせたの!?女王すぎるでしょ!」


「I didn't know she spoke English like THAT. Instant sub.」

「あんな流暢な英語話せるなんて知らなかった。即チャンネル登録だわ」




英語での賞賛の声が、画面に次々と流れていく。

いつもの「おやすみボイス」とはまるで違う、あの毒舌でハイテンションなRozeBiteが、

世界のどこかで「最高のエンタメ」として消費されている。




「……本当に、届いたんだ」


呟きながら、カレンはFを開く。




新着フォロワーは6万人を超えていた。


Fのトレンドには「#RozeBiteSassQueen」「#GlobalRoze」が並んでいる。



一瞬、迷った。



けれど――今の彼女には、もう隠す理由も、恐れる理由もなかった。



彼女は投稿画面を開き、指を止めることなく英語で書いた。


【Post on F】

Thank you for watching our collab!

コラボを見てくれてありがとう!


I was nervous, but… you all made me feel welcome.

すごく緊張してたけど、みんなが暖かく迎えてくれて嬉しかった。


More sass next time? lol

次も毒舌でいこうか?(笑)


Love you guys

みんな大好き!



それは彼女にとって、初めて「自分の言葉」で世界に向けた発信だった。

投稿からわずか10分で、1万いいねを超えた。




「……見たぞ、初英語ポスト」

事務所のオフィスで神田マネージャーが軽く笑った。


「これからは“癒し系”と“毒舌”のハイブリッドでいくか?」


カレンはソファに座りながら、苦笑いを返す。



「知らないですよ……私、ただ英語で喋っただけですから」


「それが良かったんだろ。素だったから、世界が動いたんだよ」


その言葉が、胸にすっと染みた。


その夜、カレンは再び配信部屋のマイクに向かった。

サムネには、ふざけたような英語タイトルが並ぶ。



「So, I kinda broke the Internet...? Let's talk.」

「ちょっとネット壊しちゃったかも?話そうか。」


英語と日本語が混ざる彼女の配信に、チャット欄は世界中のファンで溢れていた。


「KAREN I LOVE YOU」

「カレン、愛してる!」

「マジで最高です」

(日本語のファンも混ざっていた)

「She’s OUR queen now!」

「彼女はもう、俺たちの女王だ!」

癒しでも、毒舌でもいい。



そのどちらも、本当の自分ならば。




橘カレン――RozeBiteは、ようやくそのスタートラインに立ったのかもしれない。

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