文句の矛先
「出来た」
「お!」
「じゃあ、走らせてみるよ」
「お願いします!」
「クリリアン号は新鮮な成風により息を吹き返した! 今こそ力を開放せよ!」
ヨシモトはノリノリで話す。生徒達はヨシモト一人をそんな危険な妄想の世界に送ることはしない。
「キャプテン!」
「行くぞ!」
「はい!」
「出発進行!」
パーン!
鈍い音が鳴り響いた。その音はみんなを妄想の世界から連れ戻した。
クリリアン号は成風の力に負け、弾け飛んだのだ。
誰もかれもがピクリとも動かない。完全な静寂。シーンという音が部室内を駆け巡った。
その後、何も出来ずに時間だけが過ぎ去った。やったことといえば、馬車を失った乗客たちの反省会だ。だが、誰もヨシモトを責めない。ノブナガがここがダメだった。ノブナガが、こうあるべきだった。口々にノブナガを責めた。普段あまり話さないユキムラが躍起になって話した。ノブナガの悪口を。
その日からずっと進歩のない日々が続いた。新着のない日々。新しい、馬四駆を探そうにも、ユキムラは自分の馬四駆がはじけ飛ぶのを恐れ貸さなかった。
「しょうがない。もう時間がない。俺、ムササビに頼んで新しい馬四駆買うわ。結構高いけど」
「そうか、確かにそれが良いかもしれんな」
ミツヒデは同調する。
ノブナガは城の下から一つ目の階の図書室に行き、メニュー表をいじる。
「ダメだ。売ってねぇ。何でだよ!」
メニュー表を見ると、何一つ馬四駆が売っていない。あれもこれも、入荷待ちだ。
「誰か買い占めやがった!」
「いよいよヤバくなってきたな」
ノブナガとミツヒデは士気道の練習に行く。
早く来た人から、鉄の棒に取り付けてあるタイヤに向かって魔剣気を打ち込み、空中脱シューズの魔力によってタイヤの横を抜けていくという練習をしている。
ノブナガは迷いながら打つ。
魔剣気の素振り、自身の魔剣気を横に構え相手に撃たせる。鎧を付けて相手に鎧の部分を打たせる。そして、試合というのが、いつもの流れである。ノブナガ達一年生は試合などやらせてもらえない。先輩の姿を目に焼き付ける以外の選択肢は、許されていないのだ。しかしだ。
ノブナガは違った。馬四駆のことで頭がいっぱいだった。ヨシモトはノブナガをちらりと見たが、何事もなかったかのように、中三のAチームと中三のBチームの試合を見直した。
中三といえどタックルは凄まじいほどだ。
ノブナガもそれには度肝を抜くが、そんな事実今のノブナガには関係ない。
そして、士気道が休みの日再びノブナガ達は奇々怪々部の部室に集まった。




