形勢逆転!
「時間だ」
ヒデヨシはそう言うと上昇する。ノブナガは穏やかな目で見つめる。
「大丈夫だ。ノブナガ。私に任せろ」
颯爽と立ち上がるヒデヨシはノブナガには神の類に見えた。だがよく見ると、ヒデヨシは複雑そうな顔をしている。ノブナガにはその顔の意味が分からなかった。
ヒデヨシは白い球に向かって上昇する。グリルは「それ来た」と言って、上空から落ちるように降下する。グリルは横回転し魔剣気を振りかざす。
ヒデヨシはグリルの魔剣気に叩きつけられる。大きな風が、試合会場内にドーム状に吹き荒れる。ノブナガは目を腕で覆う。
ヒデヨシの魔剣気はカタカタと、音を立てる。
「刀の持ち方いいね。よく壊れなかった! 偉いな」
「そうだろう」
「だが、君では勝てないよ。僕の方が強いから」
グリルは魔剣気のつばを押し込む。ヒデヨシは押し返す。その瞬間だ。グリルは、左に体さばきをし、力を逃がした。ヒデヨシはふっと前のめりになる。グリルは左に振りかぶる。斜めに魔剣気を振る。まるでバッティングボックスに立った野球のアマチュア選手みたいだ。ヒデヨシは吹き飛ぶ。そして、魔剣を右手に握ったまま地面に叩きつけられた。だが、ヒデヨシは空中脱シューズで踏ん張ったおかげで、大事には至らなかった。
次に狙われたのはミツヒデだった。そりゃそうだ。この試合場の中には赤い球はない。選手もミツヒデ一人。ミツヒデは震えていた。
「すぐ楽になるさ」
グリルは脅す。
ミツヒデは固まる。
ミツヒデは何もできないままグリルに距離を詰められ地面に叩き落とされた。
そして、とうとうノブナガの番になった。対するは大将グリズだ。身体が大人のヒグマぐらいある。
ノブナガは、がくがくのまま開始線へ。
「辞退するなら今だぞ」
グリズは助言する。
だが、ノブナガはたった今、脳内物質の作用で、高揚していた。
「やってやる」
「!?」
ノブナガは、右足に体重をかけて、左足をぶらぶら。左足に体重をかけて右足をぶらぶら。そして、二回ジャンプして、三回目に体重を地面にかける。
ノブナガ出陣と共に両者の球十個目が試合会場に出た。
「すぐに終わらせてやる」
「やってみろ」
ノブナガはグリズに言い捨てて加速する。グリズはしばらく動揺して、「俺、先輩だぞ」と言って、上昇する。
ノブナガが狙ったのは、一番上を飛んでいる白い球だ。
「最後の一人!」
グリズはノブナガを目で追う。
「一つぐらいくれてやってもいいが」
グリズはそう言うとノブナガを追って上昇した。
グリズはノブナガのスピードを追い越す。ノブナガのみぞおちに強烈な右拳を突き付ける。
「グホッ」
あまりの痛さにノブナガは口から胃液を出す。
「汚い!」
グリズは反射で胃液をかわす。
ノブナガはにやりと笑う。
「やはりそのレベル。俺は負けん」
ノブナガは左手で腹を抑え、さらに上空に加速した。
グリズは驚きの余韻に浸っていた。
ノブナガは白い球に向かう。と思われたが、ノブナガは白い球よりさらに上空に飛んでいった。
「どういうつもりだ!」
グリルは気づく。
「まさか!」
ノブナガは魔剣気を振り上げる。上段の構えになる。そのまま、魔剣気を振り下ろしながら急降下する。
「近寄れない!」
グリズは動けなかった。
白い球の一つは切り捨てられた。さらにノブナガの振り下ろした魔剣気の一直線上に白い球が移動した。
「運が奴の味方か」
ガロンは上空を見渡す。
ノブナガは高度十メートル地点で急停止した。ノブナガの足腰はビクンビクンと軽く痙攣した。
「あと一つ」
ガロンはいち早く動き始める。赤い球を狙って。
「時間はもう少ない」
ガロンは呟く。
そこにノブナガは上から魔剣気を振り下ろす。ガロンは十字に受け止める。カタカタ音を立てて、魔剣気同士が震える。
グリズは上空から急加速して落ちてきた。まるでひもなしバンジージャンプだ。グリズは魔剣気を振りかぶり振り下ろす。ノブナガは、空中脱シューズの足の力を抜く。背中から、地面に向かって落ち、ひらりとかわす。まるで鳥に襲われて、葉っぱから落下するテントウムシのようなフットワークだ。ノブナガは、地面に着く前に、空中に足を止めた。
グリルはそのままの勢いでガロンの魔剣気に自身の魔剣気を叩き落としてしまいガロンの魔剣気を破壊した。ガロンはその力に耐えきれず地面に吸い寄せられる。グリルは空中で前転した。そして、空中の重力下に投げ出される。
ガロンもグリズも空中で何とか足を止める。だが、立っているのがやっとの状態だ。
白い球はノブナガの目と鼻の先だった。グリズも走る。間に合わない。




