ケンカ始まる!
ヨウジは腐った木のように骨を砕かれ力なく落ちていった。
「ハハハ、これで一角を崩したぜ」
ユキムラの高笑いを、ヨウジは聞き漏らさなかった。とはいえ、今のヨウジに出来る行動はなかった。
ユキムラもただただ立って高笑いする姿勢は出来なかった。
「君は調子に乗りすぎだ」
「同感!」
グリルとアケボノは挟み撃ちを仕掛ける。右からはグリル、左からは、アケボノだ。
「恐ろしいスポーツだぜ」
ユキムラは急加速で空を突き抜け、雲の上まで飛んでいく。
「逃げられないよ!」
グリルは距離を詰めて行く。
「任せろ! ユキムラ! お前一人にはさせん!」
ヒデヨシは赤い瞳を光らせる。ヒデヨシはぐんぐん高度を上げる。
「私が今のうちに白いボールを切ればいいってわけ?」
ケンシンは上をちらちらと見ながら、白いボールを一つ、また一つと、切っていく。
「すべて壊しても、六個大丈夫だ」
「ユキムラとかいう奴をボコしたほうが楽しそうだしね」
グリルと、アケボノは、ユキムラを狙い続ける。ユキムラは全身から汗をかく。汗がヘルメットの中で、滴り落ちる。目に入る。
「染みるぜ」
ユキムラは右旋回する。
ユキムラはグルグルと、螺旋階段を上るかのように逃げ回る。
「しつこい! しつこすぎるぞ! 来るな!」
ユキムラはとうとう音を上げ騒ぎ始める。
「ハハハ、その声が聞きたかったよ。まぁ、僕達一度決めたことはやめないから」
アケボノはにやにやしている。ユキムラは肝を冷やした。
「殺される……」
「魔力で守られている人間はそう簡単には死なないさ。ただ結構痛いから気を付けてね」
グリルは助言する。
ユキムラは何を思ったか、下に向かって急加速し始めた。
「!?」
ここにいる全員、選手だけじゃない、強化武の先輩である観客までもは度肝を抜いた。
「ハハハ!」
「ストレスをかけすぎた! ハイになってるよこれ!」
アケボノはにやにやしている。ユキムラはそのままアケボノを押し込み、重力に屈した。アケボノと、ユキムラはこの後地面に勢いよくぶつかり、全身の骨を折り、退場した。
「恐ろしい奴だユキムラってやつは」
ノブナガはそう言うと苦笑した。副将、中一チームミツヒデ、中二チームガロンが開始線に立つ。
「……」
「……」
ミツヒデとガロンは何も言わずに加速する。同時に両者の球が排出される。
ガロンはまず、壁すれすれを移動している球を狙う。
「ガロンそう言うことか、魔球として使える球は一つだけ、あれさえ壊せばあとは楽勝だ」
グリルは空高くから見下ろす。
「それに上は俺に任せるということだな」
グリルは上空にある赤い球を狙って動き始める。
「ケンシン止めるぞ!」
「わかったよ。ヒデヨシ!」
三人はまるで箒に乗ってる魔法使いのように加速し、右足を前に、左足を後ろに、雲から下に急加速で降りてくる。
ノブナガはがくがく足を震わせながら見ている。その目は少し暗くよどみ、笑っていた。
飛行機雲のような線が、空に浮かぶ。
「今年の一年はヤバいな! ハハハ」
グリルは左右にくねくねと蛇行する。
「逃がさん!」
ヒデヨシは刀を振る。グリルはそれを、ノールックでお辞儀のような姿勢でかわす。
「後ろから切るなんて卑怯だぞ」
「そうなんですか、申し訳なかったです」
ヒデヨシは謝る。そして固まる。
「いいのよ、ヒデヨシ。そう言うスポーツよ!」
ケンシンは加速をやめない。
だが、そう言っているうちにグリルとの距離はどんどん離れて行く。




