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あーあ……。

「よし揃ったな」

「はい!」

「今日は中一対中二の試合を行う」

「いきなりですか!?」

「ああ」

「まだ見学しかしたことないのに!」

「ああ!」

「無理ですよ!」

「君達には言っておくが、ここでは出来ないとか無理とか、そんな言葉は使うな。やれと言われたらはいと答えろ」

ヨシモトはさらっと流す。

「パワハラじゃん」

「リュウセイうっさいぞ。とにかく着替えて開始線に並べ、一年生は六人だから、今日は二回戦やってもらう」

「はい!」

「球に魔力を当てるのは僕がやろう」

ヨシモトは気前よく言いのけた。

開始線で挨拶をすると、選手たちははけていく。

先鋒はユキムラだ。

「ヘルメット重い……。鎧も、重いし、こんなんで飛べるかよ。何だよこのスポーツ、物好きな奴らもいたもんだな」

「ユキムラ、ぐちぐち言うな!」

「やるよ。やってやるよ。やればいいんだろ」

「始め!」

ヨシモトの太鼓を叩く音でユキムラは加速する。だが、上手く乗りこなせない。空中脱シューズが勝手に前に進む。ユキムラは足に引っ張られる。バランスを保てない。その上、加速だけは一人前で、体がついて行かずに、反対側の観覧席付近の壁にぶつかる。そして、ユキムラは脳震盪で落下しそうになる。薄れゆく意識の中、ユキムラは手を伸ばす。もっと向こうに行かなければ! もっと上に!

ヨシモトは太鼓をたたく。

「ユキムラの壁接触、反則! 三十秒ユキムラは出れません!」

中学二年生のチームの先鋒ヨウジは軽く中一チームの赤い球を切り裂き観覧席の上を周回する。

「なめやがって!」

ユキムラは流石にイラっと来た。

「頑張れ。ユキムラ! 俺達に言えることは特にない」

ミツヒデは励ます。他の生徒は緊張のあまり応援を口にするしぐさはなかった。

三十秒が経過しユキムラが加速する。先ほどのプレーとは非なる者でバランスよく、空中を駆け回る。あっという間に、相手チームの白い球に距離を詰める。五メートル……四メートル……三メートル……。ヨウジは機敏な動きで、右から、地面すれすれを通過して、遠心力を大きく浴び、左に曲がる。そして、ユキムラの方に……。

ユキムラは競技用魔剣気を振り上げる。

「切られる! 俺達のコールド勝ちが!」

ユキムラはにやりとする。

ユキムラは角度を変える。

「ポイントを取る前にてめぇをまず叩き落してやるぜ!」

ユキムラはヨウジの頭蓋骨を強打する。

「ルール上自身の体を覆うこと以外に魔法を使えねぇってのが難儀だよな」

ユキムラは空中にとどまった。にやにやする。下に転がるヨウジを見下ろす。そして、空中脱シューズに力を入れ飛び立つ。

「いいぞ! ユキムラ!」

「ファイト!」

ようやく、ノブナガ達は緊張を楽しみ始めた。

ユキムラは白い球にグイグイ近づく。白い球はまるで生きているかのように、ユキムラから逃げる。だが、ユキムラはそれに追い着き、切り捨てた。そして、相互の二つ目の球が出る。

ヨウジは立て直し、飛び立つ。

ヨウジはブンブンと不良がバイクを飛ばしまくるかのように、荒れ狂う。そして、高速に飛び回る。赤い球は目の前だ。ヨウジは徐々に魔剣気を振り上げる。

「そうはいかんぜ」

ユキムラは白い球を追いかけるのを中断し、宙をくるりと後転した。かなり上空から、真っ逆さまに落ちてくる。高度十メートルの空中に着地する瞬間に足を踏み込む。空中を蹴る。

ユキムラのスピードは上がる。風を切る。

ヨウジが魔剣気を振り下ろすと、ユキムラの残像がシュンと、現れる。そこに色が付き、実体が、現れる。

「くたばれ!」

ユキムラは魔剣気を、鋭く打ち下ろす。

ヨウジは、全身の力で受け止める。ヨウジの魔剣気は横に構えることで止めきる。ヨウジの手には木刀で地面を思いっきり叩いたときのような痛みが走る。

「本気でやってほしいな。本気でやってこの実力だったかな?」

ヨウジにはこの上ない屈辱がのしかかる。

「たかが一年の中坊、まだ、まともに練習をした経験がない。そんな俺に負けるんだ」

ユキムラは煽る。

ヨウジは心の底から怒りがにじみ出る。

「もう、初心者だと思って優しくはしないぞ」

「あ~あ」

ヨシモトはやれやれとため息をつく。

ヨウジは先ほどよりもっともっとスピードを上げ、赤い球を狙い始める。

「チッ」

ユキムラも加速する。追いつかない。まるで自動車と自転車が全速力で競っているようなものだった。ボールがもう一セットずつ発射される。三分が経つ。ケンシンが開始線に立つ。ケンシンが次鋒で飛び立つ。それと同時に両者の球が出る。両者の球はビニールボールを全力で投擲とうてきしても届かないほど上空へ。

「さぁ、どうなるかしら」

「ケンシンさんだね。すぐに叩き落してあげるよ」

相対したのは、グリルだ。

ケンシンは出来る限りのスピードで加速する。

「最初から、そんなに飛ばして大丈夫?」

グリルは空中の低いところから腕を組み見物だ。

ケンシンはヨウジを下から、追う。

「ユキムラ大丈夫?」

「見て見ろよ。目で追うのがやっとな動きだ」

「だから諦めて棒立ちってわけなの?」

「諦めてねぇ。あいつが疲れてスピードが落ちるのを待ってるんだ」

ユキムラは天空を見上げ続ける。

「一生来ないわ。そんなタイミング」

ケンシンはさらに上空へと昇り詰める。

「来たか……」

ヨウジは天空に行き来する。自分の球を追いかけ続けている。ちなみに一年生側が守る赤い球は今出たモノ以外はどれもこれも叩き切った後だ。

白い球はヨウジの近くを飛び回っている。

「魔球?」

「安心しろ。今回は公平のため魔球の使用はしていない」

「へーお優しいんですね」

ケンシンはそう言うとすぐさまヨウジの背中にちらつく白い球を壊しに走る。

ヨウジは、ケンシンの進行方向に立つ。ケンシンは右にずれる。ヨウジはケンシンから見て右に傾く。ケンシンは左に。ヨウジはケンシンから見て左へ。ケンシンは右へ左へ動かすが、それに応じてヨウジも左右に動く。

「いいフットワークしてるのね」

「お褒めの言葉有難う」

ケンシンは抜けれない。白い球はヨウジの後ろを今も動いている。ユキムラはそれをただ見つめている。

ケンシンは右へ動きヨウジの身体に背を向け、ぬけるような動きをする。

「無駄だ!」

しかし、ケンシンの狙いはそこではなかった。

右に行くと見せかけて身体を切り返し、左へ。

「わかってねぇ」

ケンシンは相手に背中を一瞬でも見せてしまう事がこの競技における一番の罠だということに気づかなかった。

ヨウジは、目の前で背を見せたケンシンを背中からブンと叩き落す。

ケンシンは「あぁぁぁ!」と声を出し、地面に向かって落下を始める。

間一髪のところで、ケンシンは空中脱シューズで空中に足を引っかける。ケンシンはブランブランと空中で宙づりになった。蝙蝠傘のようになった。

そして、そうこうしているうちに二分が経った。

「私の番だ。行ってくる」

ヒデヨシは上下に軽く二回ジャンプ三回目のジャンプで地面に強く体重をかけた。ヒデヨシは開始線に立つ。

「私に任せろ」

ここにいる全員の目にはヒデヨシからは燃え上がるオーラが見えた。

「ヨウジだけで倒せるのに僕も出るの?」

中学二年生のアケボノは言った。

「なめないで頂きたい。私達の底力」

「へーえ。面白いじゃんやってみなよ」

「三、二、一行くよ!」

選手の入場と共に、赤い球、白い球がそれぞれ飛び出す。

だが赤い球はコートの壁沿いを壁から一メートル離れたところをぐる―っと回り始めた。

「先輩! これはどういうつもりです!?」

ヨウジは怒鳴る。

「ゲームを面白くした」

「何で!」

「これくらいのボーナスは、入りたての一年生には必要だろ」

「こっちも使いますからね、魔球」

「君達、中二はその程度か?」

「……!?」

ヨウジが話に夢中になって、防御をおろそかにしているときにユキムラが、接近していた。

「動かない先輩なんて、空き缶みたいなもんだ。簡単につぶせる!」

ユキムラが全速力で突進してきたので、ヨウジは吹き飛ばされた。

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