ゆ〜き〜む〜ら〜!
極楽鳥のクラスの女子たちの部屋の一室で密会が行われていた。
「兄貴に勝ちたい!」
「どうしたの? イエヤスさん」
ケンシンは自身の寝室から出てきた。
「ああ、彼女は、今度行われるスポーツ大会にて、兄を倒したいらしいんだ」
ヒデヨシは目をつぶって応える。
「へぇー」
「人数がそろわない!」
「ヒデヨシさん出てあげたら?」
「ああ、一応私は出ることになっている。それでも足りないんだ」
「そうなんだ……」
「ケンシンも出て欲しい!」
イエヤスは、ケンシンに鋭い野生動物のような眼光で訴えかける。
「わかった。わかったからあんまり怖そうな目はしないでほしい」
効果は抜群だった。
「でも、これで、三人、あと三人必要なの!」
「ノブナガ君とかは?」
「いいかも! でも、そんな仲良くないし。それにあいつ頭おかしいよ」
「でも、ノブナガは案外いい奴だぞ。私にはわかる」
ヒデヨシは、目をつぶってうんうんと自分の意見に頷く。
「眠気覚ましなよ!」
「うんうん」
「聞いてる?」
「うんうん」
「ヒデヨシ!」
イエヤスはヒデヨシの肩をゆする。
「とにかく、ノブナガね」
その時、ノブナガは、ピンチに陥っていた。ノブナガはミツヒデと城内を歩いている。
「クッソ!」
「どうした、ノブナガ?」
「まさか、馬四駆の大会にメンバーが七人必要とは知らなかった!」
「あ、そうなのか」
「ああ、やっちまったぜこれは」
「馬四駆好きだって言ってたもんな」
「魔法も使えるようになったし、チャンスなのに!」
ノブナガはイライラして壁をける。壁は、鉄のように硬く、足の骨にひびが入りそうな痛みが駆け巡った。ノブナガは右足のつま先を両手で押さえ飛び回る。
「痛てぇ!」
「俺が出てやるよ」
「ミツヒデ……」
ノブナガは、ミツヒデの肩に手を添え、頭を下げた。
「お前ってやつは……。お前ってやつは……」
「あと、五人どうやって集める?」
「う~ん」
リュウセイはもちろん、タクミですらチームに引き入れたくない。タクミはリュウセイと仲が良いからだ。
ノブナガとイエヤスはばったり寮の近くの廊下で出会う。
「ノブナガ、次のスポーツ大会に一緒に出てくれない? 同じチームで! 乗馬の奴」
「飛んで火にいる夏の虫だな」
「ちょっと違くね」
「う~んどうしようかな?」
ノブナガはバレバレの下心を隠してイエヤスに交渉を持ちかける。
「……。わかったわ……」
イエヤスは悲しそうに下を向き、とぼとぼ廊下を歩き始める。悲しそうな涙をこらえてさえ見える哀愁漂う動きだった。イエヤスは腰も曲げノブナガの横を通り過ぎようとする。ノブナガは慌てて、イエヤスに声を掛ける。
「馬四駆の試合に一緒に出てくれれば出てやるぜ」
イエヤスは振り向く。
あぶねぇ。タイミング逃すところだった。ノブナガはほっとする。
「いいの!?」
「いいも悪いも、これはWinWinの戦略だ。助け合おう」
イエヤスはノブナガの近くに歩き出し、目をゆっくり上に持ち上げると、上目遣いでノブナガを見る。ノブナガはこの程度で恋に落ちるほど甘くはない。「へぇー」とイエヤスを見下ろす。
「でも、まだ足りねぇどうにかしねぇと」
「それなら私達も力を貸そう」
ノブナガの後ろからヒデヨシが現れる。
「私も出ようか?」
ケンシンもやってきた。
「後二人か」
しかし、ノブナガは最後の二人を見つける事が出来ないまま、放課後士気道の練習に来た。
「おい、中学一年! ユキムラがきていないんだが」
ヨシモトは怒鳴る。
「すいません! 今呼んできます!」
ノブナガは返事をする。一年生はユキムラを探しに散らばった。
「あのバカ!」
リュウセイはキレる。
「俺は寮に探しに行く!」
「私は、家庭科室!」
「じゃあ、私は、北の城下町に行くわ」
「じゃあ、俺は、南」
「じゃ、じゃあ、私は、東」
「オッケー、俺は西に行くわ」
ノブナガは寮、ヒデヨシは、家庭科室、ケンシンは、北の城下町、ミツヒデは、南の城下町、イエヤスは東の城下町、リュウセイは西の城下町に走り込む。
「いない」
「いない」
「いない!」
「見つけたぞ! おい、ユキムラお前何やってるんだ!」
ユキムラは家庭科室で見つかった。
「!?」
ユキムラは、ヒデヨシの目を見るやいなや教室の廊下側にあるカーテンに包まるように隠れた。
「やめてあげてください!」
魔文芸部の生徒は震えながら言った。
「何?」
「ユキムラ君は、今一生懸命馬四駆を作ってるんです。それも士気道をやり始めるうんと前から」
「だが」
「帰ってください」
ユキムラはカーテンにグルグル巻きに絡まって出てこない。
「そうか……。人数は集めたのか?」
「いや、集めてないよー」
ユキムラはか細い裏声で応える。
ユキムラは馬四駆の大会に出たかった。しかし、仲間がいない。でも、馬四駆を作らざるを得なかった。熱意がユキムラを動かしたのだろうか。
「そうか、じゃあノブナガと一緒に出ると良い」
「!?」
「まず……。士気道をやってからだ。来たくなったら来い。私は待ってるぞ」
ヒデヨシは教室のドアから出ようとする。
「え、待って!」
「!?」
「俺行くよ。行けばいいんだろ?」
「ああ。行くぞ」




