馬が合う
二人はビール箱を踏み台に、各馬にまたがる。ノブナガは巨大カブトムシにまたがった時の要領で馬にまたがったのだ。イットウサイ先生は六かける六団子から、試合用魔剣気を取り出し、ノブナガとヒデヨシ、それぞれの近くに行き、手渡しする。
生徒達は沈黙を守る。
「いいか、お前ら、今から地獄のゲームを始める。馬から落ちた方の負け、落馬するまで攻撃を続ける。もしくは降参と言ったほうの負け。もちろん殺しはダメだ」
ノブナガは、自身の顔に得意のゲンゴロウの仮面を押し当てる。ヒデヨシは真っすぐ真剣な目で、それを黙認する。
一角獣と、神馬はにらみ合う。互いに目を離すことなく、渦を巻くようにして、動き始める。ノブナガと、ヒデヨシはにらみ合う。
「行くぞ!」
「こい! ヒデヨシ!」
ヒデヨシの魔剣気はノブナガの胸をめがけて、発射される。ただまっすぐに、ひたすらまっすぐに。軌道を変えることなく、放たれた一撃は、ノブナガに近づく。ノブナガは、反射的に刀を振った。すると、地面に、炎の玉が、ハエたたきで落とされたハエのように落下する。
「やるな」
「へへーん」
ヒデヨシは手綱を叩き神馬を加速させる。
「近寄ってきやがって!」
ノブナガは、焦った。だが、もう遅い。ヒデヨシがノブナガの方に飛び込んできた。ヒデヨシの魔剣気は振り下ろされる。
「くっ」
ノブナガの魔剣気は切っ先を斜め上に傾け受け止めながら下向きに力を入れ打ち落とした。ノブナガは、無慈悲な一撃をヒデヨシの頭上に叩きこむ。しかし、ヒデヨシも、すぐに魔剣気を振り上げる。だが、もう遅い。ノブナガの上からの叩き込みを防ぐ事が出来ず、脳震盪を起こし、ふらっとなる。神馬から転がりそうになる。だが、意志の強さなのだろうか、ヒデヨシは、神馬に乗り続けた。
「私は負けんぞ!」
ヒデヨシは正面に堂々と構える。まるで怖がっていない。あいつに恐怖なんてあるのだろうか、そう思わせる。声なき気迫だ。ノブナガは、その気迫に押されそうになる。汗が静かに流れる。ミストをかけられ続けているような水滴だ。
両者の馬はあとづさりする。
こいつはヤバいことになった。あいつ、勝つまでやるつもりか……。だが、俺が、下手に負ければ、あいつは俺をずっと恨むだろう。ノブナガは馬の上で足をカタカタと震わせていた。




