滝とノブナガ3
「今日は無理みたいね……。もう、会えないかもしれない」
その女性の目にも、涙が溢れていた。
それからしばらくの時が過ぎ、ノブヒデはこの世を去った。
葬儀の日、ノブナガの親族たちが集まる中、彼は人混みをかき分けながら叫んだ。
「母さん! 母さんはどこだ!」
目を血走らせ、あちこちを見回しながら、必死に母親の姿を探す。
だが、どこにも見当たらない。
「なんでなんだ! どうしてこんな時まで、予定のほうが大事なんだ! 父さんが死んだっていうのに、どうしていないんだよ!」
そんなノブナガに、誰かが静かに告げた。
「ノブナガ君の母親はね、ノブヒデさんの最期には立ち会っていたのよ」
だが、ノブナガは首を振る。
「嘘だよ。おばさんは、俺の母さんのことなんて何も知らない……」
そう言いながらも、ノブナガにはどうすることもできなかった。
ただその場に立ち尽くし、棺の中を見つめる。
綺麗な顔をした父親が、静かに仰向けで横たわっている。
まるで眠っているようで、今にも起き上がりそうだった。
けれど、動くことはない――死という現実が、そこにある。
ノブナガは、棺の上に花をそっと添え、父の好物だった酒をかけてやった。
やがて、棺は大きなエレベーターに乗せられ、ゆっくりと運ばれていく。
火葬場へと向かうその姿を、ノブナガは黙って見送った。
火葬の間、親戚たちとともに、これからのことを話し合う時間が静かに流れていった。
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