城下町
「では皆さん。教科書を買いに、城下町へ行きましょうか」
朝の光が差し込む中、先生の一言を合図に、生徒たちはわくわくした表情で城の外へと向かっていった。
「先ほどとは違って、南側から出ますよ。城下町まではこっちの方が近道です」
先生の案内で南門を出た一行。やや急な石段を下りながら、生徒たちは思い思いにおしゃべりを始めた。
「後でここ登り直すのか……」
「ホント、試練のような愛情だよな、先生の」
ミツヒデが苦笑いしながら呟く。
「ところでミツヒデ、趣味とかあるの?」とノブナガ。
「昔は色々買ってもらったけど、どれもすぐ飽きてさ。続いたものは無いんだ」
「別に続けてなきゃ趣味じゃないってわけじゃないよ」
「ノブナガは?」
「四駆の馬レースかな。自分だけのミニ馬を作って走らせるの、楽しいぞ」
「それ、俺もやったことある」
二人は自然と笑い合った。
門を抜けると、目の前に広がるのは、色とりどりの建物が並ぶ賑やかな城下町。
石畳には活気があふれ、屋台の呼び声や鐘の音、香ばしい焼き菓子の匂いが漂ってくる。
魔法道具や珍獣の露店、飛び跳ねる絵本のパフォーマンスまで、まるでお祭りのようだった。
「ではここからはクラスごとに分かれて行動します」
ノブナガは極楽鳥クラスのアロロス先生についていくことに。
彼はスタスタと先を行く。
歩いているのに、なぜか追いつけない不思議な速さだった。
一軒目の書店に入る。
木造の店内は本の匂いと、微かに香る古文書のインクで満ちている。
高さ3メートル以上ある本棚が何列も並び、通路は人ひとり分。
中央のテーブルにはゴムでぎゅうぎゅうに縛られた教科書の山。
「こんにちは、キントンさん!」
明るく出迎えてくれた女性が微笑む。
「皆さんを心待ちにしていました。教科書は準備万端ですよ」
アロロス先生が号令をかける。
「では、各自一冊ずつ受け取って『六かける六団子』にしまうこと! 準備はいいか?」
「オッケー!」
教科書一覧:
1.一本勝ち(サンジュウシ著)
2.飛び出せ魔術(カヤクマ著)
3.宗教と暮らし(スミス著)
4.妖生物を探せ(ノミニ著)
5.変化の国(ブリザード著)
6.変てこな魔法使い(リョウタロウ著)
7.忍者より(イガグリ著)
8.飛び出せ魔術2(カヤクマ著)
「六かける六団子」は、見た目はただの黒い球体だが、一個体として認識された物をサイズ関係なく無限に収納できる魔法の道具だ。
ノブナガは慌てて本を詰めようとして、あちこちに本を落としまくる。
「うわ、やべぇ、全部逃げてく!」
「どんくさいな」
「お前は毒しか吐かねぇな」
言葉の応酬に、二人は思わず笑いあう。
「さっさと次行くぞ!」
次の目的地は靴屋。店内の中央には、光を受けてきらめくガラスケース。
その中には、空中を歩ける魔法の運動靴「空中脱シューズ」が展示されていた。
「これが士気道よりも軽量な生活用モデル、『伊賀一号』だ」
生徒たちはガラスに顔を押し付けるようにして見入る。
つま先は丸みがあり、足首には手裏剣のマークが施されたデザイン。
すると、店長がドブ水の入ったバケツを持ってきた。
「この水に足を一瞬つけて、靴との相性を確かめます」
「うそでしょ……無理無理無理!」
イエヤスが必死に抵抗。
「お前はもっとドブ臭く生きろ」
先生の冷静なツッコミに、生徒たちは笑いをこらえる。
「先っちょだけでいいから」
イエヤスが親指だけで触れるようにそっと水面をなぞる。
「絶対押さないでよ! 絶対だよ!」
その直後、滑って転倒。ドブ水のバケツは宙を舞い、イエヤスの顔面に直撃。
「記念に一枚!」
先生は六かける六団子からカメラを取り出し、シャッターを切った。
「先生、ひどすぎる……」
一同爆笑の中、次の目的地はペットショップ。
そこは木々が広がる森のような室内。
ムササビやヤマネが自由に飛び回り、上階へ続く階段の横にある通路から彼らを観察できる。
「ここでは宅配にも使えるムササビやヤマネを選んでもらう」
ノブナガはアレキサンドライトの目を持つ、美しいムササビを見つけた。
階段を駆け上がり、手を伸ばす。
「ノブナガ、魔法で捕まえた方が安全だ!」
アロロス先生が呪文を唱えると、ムササビは宙で優しく絡め取られた。
「さあ、時間も押している。授業、延長したくないだろ?」
「はい!」
魔法の街での冒険はまだまだ始まったばかりだった。




