新入生6
ノブナガは、空にそびえる光の防壁を見上げながら、胸の奥にまだざわめきを抱えていた。
(……ここが、これから俺が生きていく場所なのか)
刀を握った右手がまだ微かに震えているのを、自分でも気づいていた。
するとすぐそばから、ジュラの優しい声が届いた。
「大丈夫。あなただけじゃないわ。最初はみんな怖いの。だけどね……いずれ、あなたも誰かを守る側になる。それが、この世界の本当の意味よ」
彼女の言葉は、ノブナガの胸にふわりと染み込んでいった。
傷にそっと手を当てるような、静かな癒やしだった。
霧の中へと消えていった仮面の男たちの残像が薄れゆく頃、アヴァルトが凛とした声で一行に声をかけた。
「では、皆さん。改めて……アズチ魔法学校へ出発しましょう」
川沿いの道を歩き出すと、空はすでに夕焼けに染まりはじめていた。山の向こうから差し込む斜陽が、水面を金色に染め、葉の裏をきらめかせていた。
緊張の余韻が残る中、ドークが不意に口を開いた。
「さっきの戦いで怯えたなら、今のうちに帰ってもいい。魔法学校は遊びじゃない」
その声に、数人の新入生がぎょっとする。しかし、ジュラがやんわりと言い添えた。
「ドーク先生の“優しさ”、分かってあげてね。命を守ることの重さを、最初に伝えたかったのよ」
「……優しさ? あれが?」
ユキムラがぽつりと漏らした声に、何人かが愛想笑いをした。
「笑うな。命に関わるぞ」
ドークが低く言うと、また空気が引き締まった。
やがて、一行の前に大きな川の合流点が現れた。二筋の流れがぶつかり、混ざり合いながら音を立てて渦を巻いている。
その向こうに――それはあった。
霧が引いたその先に、夕日を受けて光り輝く巨大な防壁がそびえていた。
その防壁は滑らかに波打つ魔法の膜で覆われ、空の色や雲の形をゆっくりと映している。
そしてその内側――高台に、そびえ立つ建造物があった。
それはまさに「城」だった。
面白ければブックマーク評価お願いします!




