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16話 初任務終了

「オニゴッコ。イイネ、オモシロソウ。ジャア」

「僕が鬼だね。」


 (つかさ)は〈タタリ〉の背後にいつの間にか移動しそのまま切りかかった。一瞬の出来事に、不意を突かれた形となった〈タタリ〉は辛うじて攻撃をかわしたが、右腕を切り落とされていた。


「アレ?キラレテル。」

「真っ二つにしたつもりだったが、片腕だけか。よくかわしたなお前。」

「フン、コレクライナントモナイ。ネエ、モウイチドオニシテヨ、コンドハニゲテミセル。」


 そう〈タタリ〉が言い終えたときには、先ほど落としたはずの右腕が再生していた。


「もう、戻ってる。」

「〈タタリ〉はほっとくと〈(まが)〉を使って再生しちまう。だから一撃で仕留めたり、封印したり、逃がさず再生前に仕留めきることが重要だ。ただ、それを加味してもこの再生速度は異常だ。あいつの言ってた、紫レベルの〈タタリ〉っていうのも噓じゃないみたいだ・・・気ぃつけろよ。いつこっちが標的になるかわかんねえからな。」

「うん。」


 僕は今一度(いまいちど)気を引き締めた。


「いいよ、3秒あげる。逃げてごらん。」


 〈タタリ〉は待ってましたとばかりに、一目散にその場から消え去った。


「先生!今奴を逃がしたら・・・」

「大丈夫、大丈夫。まあそこで見てなよ。」


 僕の心配をよそに(つかさ)は笑みを浮かべながら、〈心器(じんぎ)〉を体の正面に構えて3秒数えていた。


「さーーん、にぃーーー、いーーーーーち、ぜろ。」


 1。彼がそう言ったとき〈心器(じんぎ)〉の青白く輝いた刀身から、小さな(かみなり)のような光がバチッバチッと音を立てて発生した。

 0。彼はそう言うと背後に振り向いて、構えていた〈心器(じんぎ)〉の刀身を勢い良く突き出した。その瞬間、逃げたはずの〈タタリ〉が奥の方から物凄い勢いで飛んできたのだ。


 まるで刀身に引き寄せられるかのようにして現れた〈タタリ〉は、その勢いのまま(つかさ)の〈心器(じんぎ)〉に突き刺さった。


「ナ、ナ、ナン・・デェ?」

「残念、また逃げれなかったな。」

「マ、マ、ダコレ、カラ。」

「いいや、遊びは終わりだ。」

「イヤダ、マダ、アソb」

参式斬印(さんしきざんいん) 破形(はけい) 牙王連斬(がおうれんざん)


 〈タタリ〉が言い終える間もなく、(つかさ)は、何やらつぶやきながら突き刺さった刃を、そのまま振り上げ体を引き裂き、続いて更に連続で切っていった。すると〈タタリ〉の姿が跡形も残らず消え去っていった。


「ふぅー、これで一件落着かな?」

「やっぱ流石だな。あんだけ苦労したのに、あんたにかかれば一瞬じゃねえか。」

「司先生今のは?」

「ああ、あれかい?僕の〈心器(じんぎ)〉の力でね、刀や刀に触れたものに磁力を付与できるんだ。刀身がS極、鞘と(つか)がN極になってるんだよ。」

「ああ、それで。でも、それだと鞘にくっついたりとかしません?それにさっきの〈タタリ〉にはいつ磁力を?」

「磁力のオンオフは僕の自由なんだよ。好きな時に発動できるから上手く切り替えてるんだ。それと奴には、腕を切り落としたときに(つか)に触れさせてN極を付与しておいた。後は、刀身を向けておけばS極に引き寄せられた奴が現れるってわけさ。」

「へえ、すごいですね。なんか色々巻き込んじゃいそうで怖いですね。」

「磁力は込める霊力に応じて強さが増すんだ。その辺を上手く調整すれば〈タタリ〉だけを狙って引き寄せることもできるし、逆に攻撃してきたときは弾くことだって可能さ。」

「そんなこともできるんですね。」


 〈心器(じんぎ)〉に触れさせさえすれば、対象を自由に引き寄せたり弾いたりできるって、もうそれは何でもありなのでは?

 つまり彼はさっき、磁力を操って〈タタリ〉を倒したわけだ。あの状況の中でSとNのどちらを使用するか、磁力の強さや範囲はどうするのかを全て調整して戦っていたことになる。その上で僕たちが苦戦した〈タタリ〉をいとも簡単に倒して見せた。

 どうやら僕が想像していた以上に、この人は強いみたいだ。


「さて、それじゃあ戻ろうか。」

「ああ。」「はい。」


 こうして僕たちは、校門の前に立つと、〈颯介(そうすけ)〉が真っ先に出入りが可能か試したのち全員がこの廃校を出ることになった。

 これが僕の初任務で起きた出来事だった。色々なことがあったけど、僕はこの任務を通してもっと強くならないといけない、そして〈タタリ〉や〈心器(じんぎ)〉についても、もっと知っていかなければいけないと思わされた一件だった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


――――夜の廃校――――


 あの一件後、1階廊下の無作為に散らばったがれきをあさる何者かの姿があった。


「お、あった、あった。ふうぅ、一時はどうなるかと思いましたが、ふふ、まだ片腕は消えずに残ってましたね。流石は最初の子ども、片腕だけでも生き延びようとする生命力は見事なものです。少しお待ちを今〈(まが)〉を与えますので。」


 するとその片腕がみるみるうちに変化し、姿形を取り戻し始めた。そして現れたのは、あの一件より一回り小さくなった〈タタリ〉だった。


「うぅ、うぅ、いたかったよぉ。」

「まあ、それは大変でしたねえ。」

「きみだれ?」

「通りすがりのものですよ。」

「ふうん。まあ、いいや、だれでも。ありがとうねもどしてくれて。」

「いえいえ、こちらもあなたに消えてもらうわけにはいかなかったのです。」

「ぼくに、ようじでもあるの?」

「いえいえ、そんな、あなたには()たるべき時に、また遊びに行っていただく、それだけで良いのです。」

「あそんでいいの!?やったー!またあのこたちともあそびたいなあ。とくにあのでかいひとつよかったぁ。こんどはちゃんとたのしまないと。へへ。」

「ですが、しばらくは大人しくしててくださいね。」

「えぇーーー」

「体も万全な方が楽しく遊べますよ。」

「それもそっか。」

「よろしければ、いい休息場所を紹介しますよ。」

「ほんと!じゃあおねがい!」

「では行きましょうか。ふふ。」


 こうして、人知れず事態は大きく動きだした。

 僕たちがこの事に気付いたのは、3ヶ月以上もたったあとの事だった。

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