15話 飛来した増援
〈タタリ〉を吹き飛ばしながら現れたのは、司だった。彼は、こちらの様子を見て、無事であることを確認すると安堵の表情を浮かべた。
「良かった。無事みたいだね。」
「先生どうしてここに?」
「いやー、優太を向かわせた後、少し経って組織から連絡が来たんだ。紫クラスの〈タタリ〉が発生したって。」
「紫だと!?あいつが!?」
颯介が割って入った。
驚くのも無理はないだろう。聞いた話では〈タタリ〉の階級で最も強いのが紫だったはずだ。それと僕たちが相手していたというのは、にわかには信じられなかった。
「そういうこと。まさか優太を向かわせた直後に、こうなるとは思わなかったからね。純花を置いて飛んできたのさ。」
「どうりでタフなわけだ。でも、そこまで強いとは思えねぞ。」
「それは、君たちの運が良かっただけだね。生まれたてみたいだから、今はそこまでかもしれないけど、時間が経っていれば、一瞬でやられていた可能性もある。それほどの相手だよこいつは。」
「マジかよ。」
「待ってください。じゃあ今倒した方が。」
「そういうこと。ここからは僕がメインでやる。二人にはまず情報共有からしてもらおうかな。」
「ああ!」「はい!」
こうして、僕たちの〈タタリ〉討伐が始まった。
一度、〈タタリ〉から離れて僕たちは司に今までの出来事を説明した。
「君たちの話をまとめると、颯介は、ここに来た時から閉じ込められ、発生した〈タタリ〉を倒し続けていたと。」
「ああ、大変だったぜ。」
「その後優太が合流して〈タタリ〉を全部倒したと思ったら、奴が現れたわけか。」
「はい。」
「なるほど。」
そう言って司は、少し考えあの〈タタリ〉への僕たちの対応について語り始めた。
「まず最初に颯介。君のしようとした対応は間違いじゃない。むしろあれほどの脅威を前にしてよく冷静に考えれたね。」
「やっぱそうだよな!ほれ見ろ。」
「うぅ。」
「優太も一目見てあれには勝てないと思ったろ?」
「それは・・・そうですけど。」
「生き延びることも大事だよ。ヤバい、敵わないと思ったときには、一人で何とかしようとせずにせめて応援くらいは呼ばないと。」
「すみませんでした。」
「とはいえ、あのときそう言う発破をかけたのは僕だし、君は覚悟を示そうとしたわけだ。謝る必要はないよ。ただ、僕たちに必要な覚悟は勝つための覚悟だ。決して捨て身の覚悟を求めている訳じゃない。そこを間違わないようにね。」
「っ!分かりました。」
「でその後のことだけど、攻撃はいくつか試したんだね?」
「ああ、けど、どれも全然効かなかった。」
「そうなると君たちとの力の差はかなりある訳だ。じゃあ僕より強そうかい?」
そう司が尋ねると颯介は即答した。
「それはない。」
「なら、さっさと片づけようか。二人は一応〈心器〉を構えて援護の準備を頼むよ。」
「ああ。分かった。」
二人の慣れたやり取りに、僕は戸惑ってしまった。見かねた颯介が声をかける。
「心配すんな。あいつ、マジで強いから。」
真剣に話す彼の姿を見て僕も司を信じ、サポートに徹しようと思った。
そうして僕たちは再び〈タタリ〉の元へと向かった。〈タタリ〉の方はというと1階の床に埋まったままピクリとも動いていなかった。
「動きませんね。」
「寝ちゃったかな?まあいい颯介。」
「うん?」
「弐式は使えたっけ?」
「〈斬印〉だったらいけるぜ。」
「じゃあ、ありったけの〈霊力〉を込めてあいつにぶつけてくれ。」
「分かった。」
颯介は、あらかじめ構えていた〈心器〉を振りかぶり呟いた。
『弐式斬印 烈波斬』
そう言った後、彼の〈心器〉から大きな衝撃波のようなものが飛び出し、〈タタリ〉へと命中した。するとそれまで反応示さなかった〈タタリ〉が起き上がり始めた。
「今のでビクともしない・・か。」
「言ったろ、なんも効かねえって。今のも結構全力出したんだが。」
「いや、充分な威力だったよ。これは思ってより厄介だね。」
話しているうちに起き上がった〈タタリ〉は、こちらを見ると目を輝かせるようにして言った。
「ヒトガフエテル!マタアソンデクレルノ!」
「さっきまでブチギレてたのに。呆れるぜ。」
すると司が〈タタリ〉に向かって話しかけた。
「うちの部下と遊んでくれたみたいだね。君名前は?」
「ナマエ?・・・ワカンナイ。」
「そうか・・・まあいい。ここから僕が相手をしよう。」
そう言って司は自分の腰にある〈心器〉に手をかけて言った。
『弾け。磁界嵐流。』
すると彼の持っていた〈心器〉の鞘と柄の部分が青白く変色し、鞘から抜いた刀身は黒く染まっていた。
「さあ、鬼ごっこでも始めるかい。」
ここから司と〈タタリ〉の戦闘が始まった。