世界に色がついた日(自殺を考えたリスナーの話)
※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。
※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。
※2022年12月1日~7日までの更新となりますプッチン。
*お気軽に、ポイント、感想などなどお待ちしておりますプッチン*
あなたの言葉に、はなしに、笑い声に。
きっと僕はすくわれる。
僕の世界に色が付いた日。
【世界に色がついた日】
真っ黒だった。真っ黒で、真っ暗で、何も見えない夜だった。
ただ、学校で友達なんて一人もいなくて。お父さんは単身赴任だし、一緒に暮らしている祖父母と母は仲が悪かった。お母さんは、おばあちゃんと一緒にいるから毎日毎日イライラしていて。
僕は、…僕だけは、部屋のすみっこでじっとしていた。電気もつけず、真っ暗な部屋でひとりっきり。誰も僕をわかってくれる人なんていない。僕は世界で独りぼっちなんだ。
友達もいない。家族も仲良くない。
でも、特にいじめられているわけでもなく、家族から暴力を受けているわけでもない。自分よりも、もっと状況が悪い人はたくさんいる。だから。…だけど。
――ブブブ、ブブブブ。
携帯のアラームが19時半のバイブアラームを鳴らす。そろそろ夕飯の時間だと、顔をあげようとすると、いつものように「夕飯だから、降りてきなさい!」と叫ぶ母の声。若干、ヒステリック。また祖母か祖父に嫌味を言われたのだろう。仕方がない、と立ち上がり、部屋からでる。途中、延長コードやらなにやらを踏んだけど、気にせずに。真っ暗な部屋から出て、階段を下りる。
とん。とんとん。とんとんとん。
ダイニングテーブルにはメインのおかずであろうコロッケが、サラダと一緒に中央に置かれている。炊き立てのごはんが茶碗によそっており、ほくほくと湯気が出ていた。祖母はもう席についていて、「こっちに座りな」と笑いかけている。母はまだお味噌汁の鍋をかき回していて、席につけそうにないようだ。祖母の隣に座ると、母は「どうしてそっちに座るの」と小さな声で言った。
「別にどこに座ったっていいけどね。あんたは私と一緒に食べることは許さないよ」
祖母にも聞こえていたらしい。母も負けじと言葉を返す。それに祖母も言葉を返す。それの繰り返し。それがどんどんエスカレートしていって、怒鳴りあいみたいになっていく。
父は単身赴任で家にはいないし、いたとしても知らぬ存ぜぬという態度。自分ばかりが被害にあっているように思えて、もくもくとコロッケを食べ始めた。
「息子はなんでこんな嫁をもらってきたんだろうね」
「そんなのは私が一番知りたいです」
ああ、全然コロッケの味がしない。ごはんもなんだかゴムを噛んでいるような感覚しかない。本当ならもっと美味しいご飯なのだろう。
なんの味もしない。
ただ口内に入ってきたものを咀嚼して飲み干すだけ。言い争いをする母と祖母を横に見て、コロッケを食べ続ける。
美味しくない。
祖母と母の言い争いを横目に、早々に箸をおいた。ごちろうさま、と食べかけの夕飯を置いたまま、席を立つ。
「お前が美味しくないものを作るからあの子が食べないじゃないか」
「このぐらいの時期は偏食なものですからね!不健康よりはいいんです」
その言い合いは、未だに続いている。中央にいる僕にどうしろっていうの。二人のどちらの味方にも付くことができずに、俯きながら階段をあがっていく。
断頭台に上る道みたいだ。
一歩一歩、確実に。
そうしてようやく部屋へと買ってきた、電気もつけていない部屋は暗くて、怖い。部屋に入り、ガチャリ、とドアを施錠した。
再び部屋の隅に座り込んで、頭を抱える。
ああ、明日はまた学校だ。
……学校に行きたくない。
でも、行かねばならない。
世の学生たちは、みんな勉学に励んでいる。自分だけ特別ではないのだ。頭ではわかっているつもりでも、現実だとうまくいかない。そんなもんだ。
「……はあ。……しにたい」
思わず口から出る言葉。きっと自分が世界で一番…不幸のように感じて、手元にあった延長コードを手に取ってみる。
これで、首を絞めたら、死ねるのだろうか。
ポケットに入っていた携帯電話を手に取り、調べようとして、…辞めた。首吊り、なんて調べたら怖いものが出てくるんじゃないかと内心ビビる自分がいる。あまり詳しく知りたいわけじゃない。
薬、なんてどうだろう。
薬を大量に摂取すると死ねるって聞いたことがある。これならどうなのだろう、と再び携帯を取り出して、今度こそ調べてみた。しかし、「確実に死ねない可能性もある」とあったり、「薬をひと箱二箱飲む必要があり、それだけでも大変」とあった。何より、植物状態になったとき、誰がお金を払ってくれるのだろう。……考えるだけで恐ろしい。
薬は辞めよう。
練炭…もだめだ。密閉空間が見当たらない。
リストカット…もだめだ。深く刺す勇気がない。
誰かに殺してもらう?…もっとだめだ。
俺のせいで誰かを人殺しにしたくない。
「はあ」
再び大きなため息。しぬのにもよほど頭を使うことが判明した。響いてくる祖母と母の声。
あー、うるさい。
生きることもつらい。しぬこともつらい。じゃあ、どうすりゃいいんだっての。一人で考え事もできない
下から響いてくる声のけたたましいこと。明日の学校がいやでいやで仕方がないこと。
体勢を崩して膝を抱えようと、足を立てようとする。思わず、手元の携帯が床に落ちて、楽しそうな声が聞こえた。
『はーい、じゃあ今日も放送はじめるよー!』
何かに反応して開いてしまった動画アプリ。生放送の文字と、荒い画面に映し出される懐かしいゲーム画面。
……俺もあのゲーム、持ってたな。
そうだ、と立ち上がってから机のほうへ駆け寄る。部屋は真っ暗で何も見えない。仕方がない、と特に理由もなく消していた部屋の電気をつけて、勉強机に駆け寄る。確か…この辺に、机の右側の引出し。小学生の頃からずっとゲームをいれていたんだっけ。
ゲーム画面には続々と、『/参加希望』の文字が見える。
なるほど…、こうやって配信者とこれを聞いてる人が交流するのか。思わず関心する。すっかり頭の中は、さっきまで考えていることが消えてしまった。
時間は19時30分。
「もう少し、この配信をみていてもいいかもしれないな」
机の中から発掘された携帯ゲーム機。
起動するまで、あと十数秒。
【Fin】
読んでいただきありがとうございましたプッチン。よければ、ポイント、感想、誤字脱字報告などなどお気軽に頂けたらと思いますプッチン!
次回も読んでいただけたら、嬉しく思いますプッチン~!