表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【オムニバス】君へ紡ぐための物語  作者: きよたプッチン
3/20

やっぱり、少し勇気が足りない(ROM専リスナーの話)

※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。

※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。

※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。

※2022年12月1日~7日までの更新となりますプッチン。


*お気軽に、ポイント、感想などなどお待ちしておりますプッチン*

あなたとお話しするための勇気が足りない



【やっぱり、少し勇気が足りない】



毎日毎日。同じ時間。同じ電車に乗る女子学生を見かける。自分と同じ駅から乗り、毎日同じ車両の同じ席に座る子だ。友達といるわけでもなく、かといっていじめられているような雰囲気でもない。きっと帰りの方面が違う友達ばかりなのだろう。


自分も同じだ。


毎日、同じ時間に乗る電車。友人は誰もこっち方面に帰ってはいかない。

学校の帰り道。いつもの電車を待つ駅で、あの子を見かける。同じ車両の端に座るあの子。自分はそのシートの反対側の端っこへ腰を下ろす。



ゆっくりとしまったドア。


鳴る音楽。



電車内には自分たちしかいない。彼女はポケットから伸びるイヤホンを耳につけ、窓の外を見つめている。右手には携帯電話。

俺もそれと同じで、少し違うのは窓の外は見ていないってことだけ。


夕焼け色のオレンジが彼女の顔を照らす。時折、携帯の画面に目線を移し替えるようにしてちらちらと彼女を見ていた。



「きれーだなあ……」



あまりじっとは見ていると変質者扱いされかねないので、再び携帯の画面に目線を移す。携帯はずっと待ち受け画面の時計表示のまま。



たまには話しかけてみようか。



そんなことを考える。



でも、待て。それって、完全に不審者じゃないか!



自分がもしあの子側…女子学生だったとしよう。二人きりの電車の中で、「こんにちは」と声をかけてきた男と楽しくお話しするだろうか?


絶対、無理。


どう考えても事案が発生するのは目に見えている。お友達になりたいです、なんて口が裂けても言えるわけない。


はーあ、と電車内に響き渡る大きなため息。


彼女はイヤホンをしているから聞こえていないはず。話しかけるのなんて夢のまた夢だ。そんなことを考えていたら、降りる駅についてしまった。


ボタンを押して、電車のドアを開ける。もう一度彼女を見てから、急いで電車を降りていく。彼女はずっと窓の外を眺めていて、こちらを見ようともしなかった。昨日も、一昨日もそうだった。


変わらない日常。


せめて、俺か彼女がこの電車を使わなくなるまでは、寂しい電車内であの子を見るのは許してもらおう。話しかけることはできなくても、だ。






無人駅の改札をくぐり、家路へと急ぐ。

もうすぐ19時半になる。毎日毎日。同じ時間。同じゲーム。同じ人が配信している生放送があるのだ。



『はーい、じゃあ今日も生放送やっていくよー』



時刻は19時30分…ちょっとすぎ。その配信者がやっている参加型のゲームはちょっと古くて、4・5年前のものを毎回配信している。粗い画質。時々止まる放送画面。でも、それすらも楽しそうに笑いながら配信する男。



それを毎日見るだけの、俺。



仕事から帰ってきて、夜ご飯を食べながら見るその動画。ゲームの話もせず、ただずっと雑談をしているこの配信者。

俺はこの配信が始まった最初からこの配信を欠かさず見ている。


ただ。…そう、ただ、コメントだけはどうしても残せなかった。


いつも、書いては消し、書いては消しを繰り返し……今日まで書いたことがない。

閲覧者はだいたい平均して8人くらいだが、多くて15人くらいが放送を眺めているようだ。登録者数は100人は超えているが、200人に届くかどうかはわからないくらいの人数。収益化は目指していない、といいながら、意外と数字に気を取られる配信主に呆れつつも毎日見ている自分がいた。



『ん?初見さんかな?来年は受験生さん、こんばんは~!』



コメントを全部読んでもらえる、という配信スタイルからなのか、コメント欄は常ににぎわっていてリスナー同士も仲がいい。リスナー同士の会話を禁止している配信もあるようだが、ここは特殊…というか配信主の『楽しければなんでもいい』という性格に助けれているように思う。……だからこそ、余計に今更自分が入っていくのはどうかと思ってコメントを書くことができない。


新しいリスナーが入ってきて、空気が悪くなる、ということは決してない。決してないが……どう入っていけばいいのかも悩ましい。



仲良くなりたい。


話しかけたい。


あわよくば、一緒にゲームがしたい。


だが、どうしてもコメント欄に入力ができない。



「やっぱり、明日にしよう…」



まさに『こんばんは、初見です』と書いてあったコメントを消し、食べ終わった食器を片付け始める。ネットでもリアルでも、俺は変わらず、ROM専らしい。



『聞いてるだけのリスナーさんも、コメント残していいんだからね~!』



そう配信主はいうけれど。

……やっぱり、少しだけ、勇気が足りないのだ。



【Fin】

読んでいただきありがとうございましたプッチン。よければ、ポイント、感想、誤字脱字報告などなどお気軽に頂けたらと思いますプッチン!

次回も読んでいただけたら、嬉しく思いますプッチン~!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ