きっと世界が広がっていく(田舎に住む中学生リスナーの話)
※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。
※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。
※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。
※2022年12月1日~7日までの更新となりますプッチン。
*お気軽に、ポイント、感想などなどお待ちしておりますプッチン*
思いがけないところから世界は広がる。
あなたも、あなたも、そしてわたしも。
ひょんなことから世界が広がる。
ちょっとした勇気と、携帯の充電と、
素敵な配信に出会えたら、…きっと。
【きっと世界が広がっていく】
学校の帰り道。中学3年生。もうすぐ受験を控えた身でありながら、物寂しさを感じつつ電車の窓をみる。
田畑が広がる風景は、ここが田舎臭いことを私に嫌でも訴えてくる。
いつかここを旅立ちたいとは思う。
でも、それはきっと今ではない。正直、攻まりくる受験の嵐に太刀打ちすることしかできない。隣町の高校に進学することくらいしか頭になく、東京の学校に通うだとか、別の地方の専門学校に行くだとかの考えは、正直ない。
いつかはここを旅立ちたい、とは思う。
結局、それはいつか、なのだ。現状は我慢できる。田畑が広がり、あまりコンビニがないところも。
夜になると虫の鳴き声が響き渡るところも。多少は我慢ができる。電車に乗れば、ある程度都会である町にもでることができるからだ。
でも、……でも、だ。
「いつかはここを旅立ちたい…」
とは思う。
田舎の世界の、なんと狭いこと。中学生という世界の、なんと狭いこと。私の世界の、なんと狭いこと。
電車に揺られながら思う。
でも、新しい土地に一人で行ける年齢ではない。来年の進学したとして、下宿をする勇気もない。寮のついた学校を選ぶ気力もない。
中途半端だな、自分。
自分の中途半端な気持ちにため息をつく。
電車がガタンと揺れたと同時に、画面をゆびでタップをしていたらしい。勝手に開いたnicotube。
『はい、今日も生放送やってくよ~!』
電車内に響き渡るおじさんの声。
最近ではゲームの参加型の配信が人気って聞いたけど、本当なんだな。こんなおじさんまでやってるんだもん。
あれ?でも……よくみたら、
「これ、新作じゃないじゃん」
動画の画質も荒め。チャンネル登録者も100人ちょっと。同接数は10人ちょっと。あと特徴的なのは…配信主のおじさんの声が大きいだけ。同じクラスの男子にも声が大きいやつがいたっけな。誰かがいってたけど、女子の気を引きたいとかどうとか。私には関係ないけど。
『そういえば、今日久しぶりに牛乳飲んだんだけどさあ…』
ゲームはモンスターを狩るゲーム。
配信主のおじさんは、モンスターを狩りながら全然関係ない話をはじめてる。
…え?なに?牛乳?それ関係なくない?
『めっちゃ美味しかった!』
その報告に対して、コメント欄は『ふーん』とか『へえ』とかそんなもんしか流れてない。それでも、配信者は気にしないで話してる。
……でも、興味なさそうなリスナーさんたちもなんだかんだ楽しそうに話してて……。
配信者がコメントを拾って、話を広げて、リスナーがまた話す。これの繰り返し。
『あ!魔法少女さん、こんばんは〜』
おこめてすと、というのは挨拶なんだろうか。
数人がおこめてすと、と返事を返した。
「なんか……仲良い配信だなあ……」
それぞえがそれぞれで仲がいいみたいだ。
『はい!大型モンスター討伐おーわり!はいじゃあ、次は誰かクエスト貼っていいよ』
誰かがまた何かのクエストを選択したらしい。
『うわっめっちゃ強いやつじゃん!』なんて嫌そうな声をあげた配信者。
それに対して、がんばれ、とコメントが流れる。
ここにコメントを残している人たちって……きっとみんな知らない人同士なんだろうな。
住む場所も、役職も、年齢も。全部違う人たちなんだろう。
敬語を使う人もいれば、使わない人もいる。
この配信の空気ってなんか落ち着く…かも?
『そういえば、後半戦なんだけど……なんかいいゲーム知らない?次はRPGとかやりたいな』
色んなゲームタイトルが並んだのを次々読み上げる配信者。本当に全部のコメント読むつもりなのかな。
なんかこの配信者…
「……おもしろ」
さっきまで進路で悩んでたっていうのに。
すっかり配信画面に齧り付いて見てる自分がいた。
電車の窓にうつる先ほどの悩んだ顔とは違う。
口角があがった私が映っていた。
やたらたくさんの言葉の数。不正って言葉もあるけど、みんな賑やかでワイワイしたコメント。ゲームと関係あるコメントもあるけど、それとは全然関係ないコメントもあったりして。それに頑張って反応してる配信者がいて。たくさん、笑ってる。…声、でかいけど。
うわ。なんか。なんか。…なんかさ。
「…こういうの、ちょっといいな」
いつかこの田舎から出たいと思っていた。
でも。
世界が広がるってこういうことなのかな?
モンスタグラムも、ブックフェイスも、チュリッターも、私にあわなかった。友達とはマインだけで繋がってるだけ。
誰かと繋がれる方法って、配信っていう方法もあるんだ。
リスナーも配信者も同じ話題で盛り上がって。雑談したり、共感したり。ゲームに参加する人もしない人もいて。みんなで笑い合う。
そういう場所は、私にはあってるのかもしれない。
ずっとずっとこの田舎から出て行きたいと思っていた。
でも、それはまだまだ先の話なのかも。
もう少し配信を見ようと思っていた矢先、電車が目的地についたらしい。
山袋~ 山袋~!
「降りなきゃ!」
ついた駅から急いで降りて、がらんとした駅のホーム。階段を降りて改札を出る。ゲコゲコって蛙の声。リンリンって虫の声。飽き飽きするほどの田舎。
「…よし」
光る画面はスマホのもの。先ほどから食い入るようにみていた配信のコメント欄。
緊張して手が震える。私がここにコメントしたら、暖かく迎えてもらえるのだろうか。
文字を打ち出す。何度も書いては消して…書いては消して。やばい、こういうの緊張する。これでいいのかな。他の人、変だとか思わない?
『こんばんは』
『ん?初見さんかな?来年は受験生さん、こんばんは~!』
私がハードリスナーになるとか、きっと私でさえ想像出来なかった。あーあ、来年は受験だってのに!
【Fin】
読んでいただきありがとうございましたプッチン。よければ、ポイント、感想、誤字脱字報告などなどお気軽に頂けたらと思いますプッチン!
次回も読んでいただけたら、嬉しく思いますプッチン~!