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【オムニバス】君へ紡ぐための物語  作者: きよたプッチン
2/20

きっと世界が広がっていく(田舎に住む中学生リスナーの話)

※こちらの文章を書くにあたり、語尾プッチンの省略をお許しくださいプッチン。

※また、こちらのお話はフィクションですプッチン。実在の人物・団体・出来事とは関係ありませんプッチン。

※電車で移動中の際に作成をさせていただきましたため、誤字脱字をお許しくださいプッチン。

※2022年12月1日~7日までの更新となりますプッチン。


*お気軽に、ポイント、感想などなどお待ちしておりますプッチン*


思いがけないところから世界は広がる。

あなたも、あなたも、そしてわたしも。

ひょんなことから世界が広がる。

ちょっとした勇気と、携帯の充電と、

素敵な配信に出会えたら、…きっと。




【きっと世界が広がっていく】




学校の帰り道。中学3年生。もうすぐ受験を控えた身でありながら、物寂しさを感じつつ電車の窓をみる。

田畑が広がる風景は、ここが田舎臭いことを私に嫌でも訴えてくる。


いつかここを旅立ちたいとは思う。


でも、それはきっと今ではない。正直、攻まりくる受験の嵐に太刀打ちすることしかできない。隣町の高校に進学することくらいしか頭になく、東京の学校に通うだとか、別の地方の専門学校に行くだとかの考えは、正直ない。


いつかはここを旅立ちたい、とは思う。


結局、それはいつか、なのだ。現状は我慢できる。田畑が広がり、あまりコンビニがないところも。

夜になると虫の鳴き声が響き渡るところも。多少は我慢ができる。電車に乗れば、ある程度都会である町にもでることができるからだ。

でも、……でも、だ。


「いつかはここを旅立ちたい…」


とは思う。

田舎の世界の、なんと狭いこと。中学生という世界の、なんと狭いこと。私の世界の、なんと狭いこと。

電車に揺られながら思う。

でも、新しい土地に一人で行ける年齢ではない。来年の進学したとして、下宿をする勇気もない。寮のついた学校を選ぶ気力もない。


中途半端だな、自分。


自分の中途半端な気持ちにため息をつく。

電車がガタンと揺れたと同時に、画面をゆびでタップをしていたらしい。勝手に開いたnicotube。



『はい、今日も生放送やってくよ~!』



電車内に響き渡るおじさんの声。

最近ではゲームの参加型の配信が人気って聞いたけど、本当なんだな。こんなおじさんまでやってるんだもん。

あれ?でも……よくみたら、


「これ、新作じゃないじゃん」


動画の画質も荒め。チャンネル登録者も100人ちょっと。同接数は10人ちょっと。あと特徴的なのは…配信主のおじさんの声が大きいだけ。同じクラスの男子にも声が大きいやつがいたっけな。誰かがいってたけど、女子の気を引きたいとかどうとか。私には関係ないけど。


『そういえば、今日久しぶりに牛乳飲んだんだけどさあ…』


ゲームはモンスターを狩るゲーム。

配信主のおじさんは、モンスターを狩りながら全然関係ない話をはじめてる。

…え?なに?牛乳?それ関係なくない?


『めっちゃ美味しかった!』


その報告に対して、コメント欄は『ふーん』とか『へえ』とかそんなもんしか流れてない。それでも、配信者は気にしないで話してる。

……でも、興味なさそうなリスナーさんたちもなんだかんだ楽しそうに話してて……。

配信者がコメントを拾って、話を広げて、リスナーがまた話す。これの繰り返し。


『あ!魔法少女さん、こんばんは〜』


おこめてすと、というのは挨拶なんだろうか。

数人がおこめてすと、と返事を返した。


「なんか……仲良い配信だなあ……」


それぞえがそれぞれで仲がいいみたいだ。


『はい!大型モンスター討伐おーわり!はいじゃあ、次は誰かクエスト貼っていいよ』


誰かがまた何かのクエストを選択したらしい。

『うわっめっちゃ強いやつじゃん!』なんて嫌そうな声をあげた配信者。

それに対して、がんばれ、とコメントが流れる。

ここにコメントを残している人たちって……きっとみんな知らない人同士なんだろうな。

住む場所も、役職も、年齢も。全部違う人たちなんだろう。

敬語を使う人もいれば、使わない人もいる。

この配信の空気ってなんか落ち着く…かも?


『そういえば、後半戦なんだけど……なんかいいゲーム知らない?次はRPGとかやりたいな』


色んなゲームタイトルが並んだのを次々読み上げる配信者。本当に全部のコメント読むつもりなのかな。

なんかこの配信者…


「……おもしろ」


さっきまで進路で悩んでたっていうのに。

すっかり配信画面に齧り付いて見てる自分がいた。

電車の窓にうつる先ほどの悩んだ顔とは違う。

口角があがった私が映っていた。


やたらたくさんの言葉の数。不正って言葉もあるけど、みんな賑やかでワイワイしたコメント。ゲームと関係あるコメントもあるけど、それとは全然関係ないコメントもあったりして。それに頑張って反応してる配信者がいて。たくさん、笑ってる。…声、でかいけど。

うわ。なんか。なんか。…なんかさ。



「…こういうの、ちょっといいな」



いつかこの田舎から出たいと思っていた。

でも。


世界が広がるってこういうことなのかな?


モンスタグラムも、ブックフェイスも、チュリッターも、私にあわなかった。友達とはマインだけで繋がってるだけ。

誰かと繋がれる方法って、配信っていう方法もあるんだ。

リスナーも配信者も同じ話題で盛り上がって。雑談したり、共感したり。ゲームに参加する人もしない人もいて。みんなで笑い合う。


そういう場所は、私にはあってるのかもしれない。


ずっとずっとこの田舎から出て行きたいと思っていた。

でも、それはまだまだ先の話なのかも。


もう少し配信を見ようと思っていた矢先、電車が目的地についたらしい。



山袋~ 山袋~!



「降りなきゃ!」


ついた駅から急いで降りて、がらんとした駅のホーム。階段を降りて改札を出る。ゲコゲコって蛙の声。リンリンって虫の声。飽き飽きするほどの田舎。

「…よし」

光る画面はスマホのもの。先ほどから食い入るようにみていた配信のコメント欄。

緊張して手が震える。私がここにコメントしたら、暖かく迎えてもらえるのだろうか。


文字を打ち出す。何度も書いては消して…書いては消して。やばい、こういうの緊張する。これでいいのかな。他の人、変だとか思わない?


『こんばんは』


『ん?初見さんかな?来年は受験生さん、こんばんは~!』



私がハードリスナーになるとか、きっと私でさえ想像出来なかった。あーあ、来年は受験だってのに!




【Fin】

読んでいただきありがとうございましたプッチン。よければ、ポイント、感想、誤字脱字報告などなどお気軽に頂けたらと思いますプッチン!

次回も読んでいただけたら、嬉しく思いますプッチン~!

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