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隠れ場所

作者: 荻野ケヴィン

 ここは隠れた場所だ。僕が今座っている石の台座は丁度岩陰に入るようになっている。ここまでは崖沿いを一本道で来た。一本道の、今僕が座っている所から見て、切り立った崖は左手側である。

 僕はなぜこんな所まで来たかというと、一人で静かになりたかったからだ。

 左耳から水しぶきの音が入ってくる。眼下では河の流れが眺められる。

 僕は一日の大半をここでこうして、水の音を聴きながら、石のイスに座ってボーっとするのが好きだ。

 ボーっとしていると色々なことが分かる。どこか遠い国から旅をして来たのだろう小鳥が鳴いている。水の底には魚影がいくつか見えた。

 僕にはここが、僕だけのために用意された場所なんじゃないかと思える。なぜなら、岩山を掘り進めて少し曲がった所を、台座を一つだけ作ってあるからだ。

 僕がここを見つけたのは随分前のことだ。それは岩山の近くの森で木の実を集めていた時のことだった。いつもは取らない場所まで歩みを進めたら、その森の中にけもの道を見つけたのだ。そしてその道を行ってみたら、ここに着いたというわけだ。

 岩陰に隠れて座り、水の音を聴いていると思うことがある。姉のことだ。

 最近はずっと「木の実を取ってくる」と言っては帰りが遅いから、きっと心配していることだろう。

 そんなことを思いながら水しぶきの音に集中していると、僕の心に響くものがあった。何だったろうと思っていると、段々と僕の心は澄み切っていった。

 僕の心の中に青い大空ができあがる頃には、僕は夢から覚めたかのような気分だった。

 青空にありて紅きもの。その瞳に何を映す。

 白雲の線が細くなる頃に僕は旅に出る。


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