告白と提案
時は流れて7月も中頃。
「ところで晴季君や、夏休みのご予定は?」
「今の所は無いかな」
「なら一緒にランクマッチを回さないか。……話したいこともあるし」
「うん?別に構わないが」
「よし、じゃあそういうことで。じゃあまた明日、ネット越しで」
走り去っていった。……妙だな。いつもと違って語尾に!が付いていない。体調でも悪いんだろうか。
~夏休み初日~
「晴季君ごめん、一人取り逃した」
「任せな!よし、片付けた」
「ありがとう、助かったよ」
「落ち着いてる暇は無いぞ。西側、次来るぞ!」
「.......わかった、回復する時間だけ稼いで欲しいな」
「承った!」
「いやーごめん!あそこで私が落とされなければ良かったんだけどね」
「まあ健闘した方じゃないか?」
「そろそろいい時間だね。ご飯食べに行ってくるよ」
「俺もそうするよ」
夕食を終えて自室に戻る。昼間も一緒にゲームをやっていたが、どうも帯刀の様子がおかしい。上の空というか、落ち着きがないというか。とりあえず本日も後半戦、気合を入れなおそう。
「戻ったぞ」
「お帰り」
「……」
「……ねえ晴季君!」
「な、なんでしょうか」
「私ね、小説を書きたいの!」
「どうした急に。やりたいならやればいいじゃないか」
「……否定しないんだね」
「やりたいことがあるのは良いことだ。今すぐにでも実行に移せばいい。PCの扱いは手慣れてるだろ?」
「.......女の子同士のコミュニティって複雑でさ。ちょっとでも異端って判断されると容赦なく切り捨てられるんだ。当然こういうゲームをやってる子はいなかったから、私も排斥された」
「.......」
無言で見守る。
「だから仲良くなれた人に、また否定されるのが怖くって。それで中々言い出せなかったんだ。」
合点が行った。帯刀は俺に突き放されたくなかったんだ。実際、創作をする人を指さして笑う奴等は存在する。
「心外だな。俺がそんな人間に見えたのか?」
「.......!」
「オタク界隈ではクリエイターは創造神様なんだぞ?その芽を摘み取るなんて、勿体ないことする訳ないじゃないか!書けたら見せてくれよ、そのお話。長文の感想を送り返してやる」
「.......ありがとう!」
パッ、と声色がいつもの3倍くらい明るくなる。
「ところで、さ。一つ提案なんだけど」
「なんでございましょ」
「晴季君もクリエイターになるつもりはない?」
「.......は?」
間の抜けた声が出てしまった。
「だってゲームやってる時すっごく楽しそうなんだもん。その楽しさを他の人にも共有してみない?」
「話が見えてこないんですが。結論に飛んでもらってもいいですか?」
「配信者になろう」
「なるほど。」
うん、合点が行った。合点は行った。だが、ちょっと待て。