ゲーマー男子とゲーマー女子:出会い
どこまでも遠く、手の届かない青。
誰もが焦がれ、そして諦観を抱く。
果てしない努力を続け、ある種の無謀さを持つ者だけがたどり着ける場所。
その光に魅せられた若者たちの物語。
配信者と小説家。
クリエイターを目指す男女のお話。
どこか浮かれた空気と慣れない人の動きに、春が響く。受験を乗り越え、今日から高校生活が始まる。俺とて新たな出会いに思いを馳せたりしなかった訳では無い。多少の期待はあるが、どうなることやら。
「○○市xx中出身で……」
「……部活はサッカー部でした」
卒なく自己紹介が進んでいく。
「では次、園原さんお願いします」
そう担任の教師に促された。仕方ない、やるか。
「園原晴季と言います。△△市□□中学出身です。趣味はゲームとアニメ鑑賞です。そちら方面が好きな方は是非お声掛けください」
着席する。まあ無難に終わったんじゃないかな、うん。とにかくヨシ!
「では次、帯刀さんどうぞ」
後ろの席の女子が立ち上がる。落ち着いてはいるが、独特な雰囲気の子だ。具体的には同属の臭いがするような…
「帯刀楓ですよ。α市β中出身ですよ。ゲームも好きだし、まあいろいろ好きだよ。あとはさっきの男性君とおんなじような感じだから省略するね!」
勢いよく座る。……予想の30倍くらい変な子だったんだが!?というかいきなり同属だと断定して来たな?一先ず許そう。俺は心が広いんだ。
その後も顔合わせは滞りなく進んでいき、今日は解散となった。さて帰るk
「ねえ君!ちょっと話していかない?」
さっきの輩ではないか。たしか……
「私、帯刀楓!君もゲーム好きなんでしょ!ちょっと話していこうよ!」
「.......はい」
「まぁまぁお昼ご飯でも食べながら話しましょうよ。Let’sフードコート!」
「は、はぁ」
連れられるがままに近くのショッピングモールまで来てしまった。早いうちに学校周辺の施設を把握しておけるのは好都合なのでいいのだが。いやいいんだけどさ?!いくらなんでも強引すぎない!?さすがの俺も驚愕だよ。
なんやかんやして、互いの昼食を眼前に用意できた。
「へぇ君はラーメンかい!寿ヤキヤ信者でしたか」
「昔から好きなんだ。そっちは…それは昼飯なんです?」
「なんだいお昼ごはんにドーナツは駄目かい」
「いやダメとは言いませんけど」
当たり障りのない会話が続く。
「さて本題に移るよ。というか名前を聞いてなかったね。君、お名前はなんと?」
「逆に今までよく知らずに話してましたね!?名乗らなかった俺にも非はあるけどさ!?……園原晴季といいます」
「了解、園原君ね。時に園原君や、君はどの畑のプレイヤーさんだい?」
「畑、ね。元々はRPGだったけれど、今はFPSとMMOがメインですね」
「なるほど。FPSのタイトルは?」
「今流行りのEpe」
「Epexだね!?おんなじだ!私もやってるんだよ!!!」
だから勢いがすごいですって。ついていけないんで待ってください。てかやってるの!?
「同年代で女性のプレイヤーさんとは初めて会いました」
「うんうんそうだと思うよ。年上の女性プレイヤーさんとは何回かプレイさせて貰ったけど、同年代とは未だに出会ったことがないからね。して、プレイ歴とプレイスタイルは?」
「基本的にはミドルレンジで…」
「いやー楽しかった!また話そうよ!」
「俺も楽しかったです」
「じゃあまた来週!」
走り去っていた。元気な子じゃのう。儂とは大違いじゃ、ふぉっふぉっふぉ。それはさておき、距離は近いものの不快感はしなかった。連絡先も交換してしまったし。帯刀楓、か。とんでもない奴と出会ってしまったな。