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救世主は救わない  作者: nauji
第三章
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第50話 名前 (最終話)

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。


今回が最終話となります。

まだ他の話をお読みで無い方は、先ずはそちらをお読み下さい。

 あれからしばらくの月日が流れた。


 天界の建造物はまだ完全復旧とはいかないが、【神像(しんぞう)】と【水晶球(すいしょうきゅう)】は復元が完了していた。


 俺とメイドさんと少女、少年と女性の【執行者(しっこうしゃ)】が集まっていた。


 集まった場所は女神像の前だ。


 久方ぶりの女神との対話となった。



「――思いがけない展開に、動揺を禁じ得ませんね。ともあれ、皆様、お久しぶりですね」


「女神様、御無事で何よりです」


「フフッ、無事というのも可笑しな話ですね。……皆様、よくぞ【魔神(まじん)】の討滅を成し得て下さいました」


「……まだ、二体残っては居ますがね」



 女神とメイドさんとの会話に、少年がそう横槍を入れる。



「――ちょっと、流石に今それを言わなくても……」


「事実は事実だ。女神よ、状況は変わりました。最早、【魔神】は脅威足り得ません。今後は如何なさる御積もりですか?」



 女性が諫めるも、少年は女神へと問い詰める。



「……確かに、貴方がたは遥か高みにあった【怠惰(たいだ)の魔神】を討滅して見せました。今後、そこまでの脅威となる【魔神】が現れる事も無いでしょう」


「……それで?」


「――しかしながら、予想に反して、事態は急変するかもしれません。突然、力持つ【魔神】が誕生しないとも限りません」


「…………」


「ですから、二人には今後もこのまま居て頂きたく思っております」


「……それが答えですか?」


「えぇ、その通りです」


「――女神様、よろしいでしょうか?」


「……はい、何でしょうか?」



 女神と少年との会話に、今度はメイドさんが割り込んだ。



「私は、この身に取り込んでしまった魂を解放し、私自身も消滅する事を望みます」


「――っ!? 何故そのような事を!?」


「……ずっと、ずっと後悔していたのです。この身に魂を吸収してしまった事を。私が如何様な滅びを迎えようとも構いませんでしたが、この身に取り込んだ魂だけが気掛かりでした」

「ですが、それも最早解消されました。私は贖罪をこそ望みます」


「贖罪というならば、生きて事を成しては如何ですか?」


「……それでは、私が吸収した魂達が何時まで経っても転生する事が叶いません。それは私の望むところではありません」


「…………」


「女神様に見出していただいたこと、未だ感謝に耐えません。ですが、脅威が去った今、私もまた、あるべき最期を迎えたく思います」


「…………」


「今まで、お世話になりました。どうか、これからも世界を良き方向へと導いて下さい」


「……そう、ですか。……それは、とても寂しくなりますね」



 その場に沈黙が降りる。


 あの時、【怠惰の魔神】の最期を見ていたメイドさんは、そんな事を考えていたのか。

 どういう経緯で【魔神】となったのか、聞く機会は終ぞ訪れなかったが、自身にしか理解できない葛藤があったのだろう。


 少年が一歩、メイドさんへと踏み出した。



「――では、僕がその役を務めよう。勿論、異論がなければ、だが」


「構いません。覚悟はとうに済ませています。――ですが最期に一つだけ」


「何だ?」


「【救世主(きゅうせいしゅ)】、貴方のお蔭でこうして望んだ最期を迎える事が叶いました。貴方を選んで良かった。貴方が諦める事無く生きてくれて良かった。貴方に感謝を」


「……いえ、そんな。俺の方こそ、貴女には沢山助けていただきました。俺の方こそ、今までありがとうございました」


「……フフフッ、お礼は不要に願います」


「……ハハハッ、そうでしたね」


「――では、お願いします」


「――分かった、では、いくぞ」



 メイドさんの体に、少年の剣が突き立てられる。


 間を置かず、【救世(きゅうせい)】が連続して発動されていく。


 メイドさんの気配が希薄になってゆく。


 その表情は、安らかに見えた。


 やがて、メイドさんの姿は消滅した。




「――ちっ、勝手に勝ち逃げしやがって」



 沈黙が支配する場に、そんな声が響く。



「これじゃあ、ボクの相手が居なくなっちまったじゃねぇか。……なぁ、ものはついでだ。ボクにもやってくれ」


「…………それで良いのか?」


「ボクだけ残ってても仕方ないだろ? 別にボクに後悔なんて微塵もないけど、どうせ目的なんて無いしね」


「――では」


「――待って下さい」


「……何だ?」


「私にやらせて下さい」


「……それは彼女に尋ねたまえ」


「貴女はそれでも良いかしら?」


「別に、誰がやろうとボクは構わないよ。好きにしたら良いさ」


「……分かった。なら君に任せる」


「はい、ありがとうございます」



 少女と少年の遣り取りに、女性がそう申し出た。


 女性が刀を少女へと突き立てる。


 そして間を置かず、【救世】を発動し続ける。


 少女の気配が希薄になっていき、ほどなく、その身体が消滅した。



「…………仇は取れましたか?」



 女性は、誰ともなくそう呟いた。




 思いがけず人数の減った室内。


 気まずい沈黙が場を支配する。


 俺は意を決して、言葉を発した。



「行きたいところがあります。案内して貰えませんか?」



 俺は少年にそう言った。



「……何処だ?」


「それは――」




 俺は、かつて一度だけ訪れた事のある部屋に居た。


 正面には壁一面もある巨大な彫像。



「――久しいな」


「えぇ、お久しぶりです」


「して、此度は何用で参った?」


「以前お渡ししなかったモノを、今回こそはお渡ししようかと」


「――【救世】か」


「はい」


「以前は頑なに拒んでみせたが、どのような心境の変化だ?」


「もう【救世】を使おうとは思いませんから」


「要らぬからくれてやる、と?」


「そう居丈高(いたけだか)なつもりはありません。あくまで不要なのでお渡ししたいだけです」


「――【救世】を失えば、最早【救世主】ではなくなる。その身の【聖衣(せいい)】も失われよう。それでも構わぬのだな?」


「おっと!? その前に、代わりの服を用意していただけると、大変助かります」


「――――」


「【聖衣】を解除すると、全裸になってしまうので」


「――用意させよう。しばし待て」


「お手数をおかけします」



 俺は用意された衣服を、【聖衣】の上から着込む。

 とりあえずはこれで、いきなり全裸になることはない。



「――では【救世】をこちらへ」



 俺の体に何かが入り込むのを感じる。

 不快感を覚えるが、それを堪え、成すがままにされる。


 そして【救世】が俺の体から摘出された。

 同時に【聖衣】が掻き消える。


 生まれてから、共にあった【救世】。

 それが失われた事による、喪失感がある。


 だが、それで良い。

 最早、俺には無用の長物だ。



「――して、これからどうする?」


「……貴方がそれを決めるのではないのですか?」


「――我々は強制も強要もしてはならない、と、とある神に言われてな。自身で選択せよ」



 俺の脳裏に、最近姿を見なくなった幼神の事が思い浮かんだ。



「市井に紛れて、大人しく余生を送る、とかは駄目ですかね?」


「――その身に【大罪(たいざい)】を宿している限り、その身を自由にする事は出来かねる」


「そう、ですか……」


「――だが、条件付きであれば、叶えられない事もない」


「……え?」





「……それで、私について来い、と?」


「えぇ、まぁ。もう【リング】も返してしまいましたし、移動も翻訳も誰かにお願いする他ありません」

「それに、俺の知り合いで頼めそうなのは、貴女しか居ませんし……お願い出来ませんか?」


「……はぁ、仕方のない人ですね」


「それじゃあ?」


「分かりました、分かりましたとも。貴方が【大罪】を悪用しないよう、監視、兼、通訳として同行すれば良いのですね?」


「えぇ、はい、その通りです」


「それで、何時まで?」


「それは勿論、死ぬまでです」


「……誰が?」


「俺が」


「……それまで、私について回れと?」


「言葉は頑張って覚えますよ。ですので、監視という名目の休暇と思って、どうかここは一つ、お願いします」


「…………はぁ。まぁ、貴方にはそれぐらいの借りはありますしね。なら、精々長生きして、私の休暇を出来る限り長くして下さいね?」


「約束は出来ませんが、前向きに善処致します」


「はいはい、それじゃあ行きましょうか?」


「えぇ、って、まだ何処に行くか伝えてませんけど……」


「そんな事、聞かなくても見当ぐらいつきますよ。ほら、早く! 随分と顔を見せていないんでしょ?」


「……じゃあ、お願いします」





 辿り着いたのは、とある屋敷の前だった。


 俺は緊張の面持ちで扉をノックする。


 すると程なく、使用人が出迎えてくれた。



「――――――――――」



 何を言っているか理解出来ない。


【リング】無き今、これから改めて言葉を一から覚えなければならない。


 これは前途多難だな。


 言葉の分からない俺に代わり、女性の【執行者】が取り次いでくれた。


 屋敷の中へと案内される。


 通された先は、客間ではなく、謁見の間だった。


 視線の先の玉座には、しばらくぶりに見る女王の姿があった。


 俺の姿を視認した女王だったが、その表情が怪訝そうなものに変わる。


 俺がそれを疑問に思っていると、耳元で囁かれた。



「貴方の姿が【聖衣】の無い状態へと戻ってしまったから、その容姿の変化に戸惑っているんですよ」



 なるほど、そういうことだったか。


【聖衣】が無い俺は、黒髪に戻っているし、服装も違っている。

 顔が同じでも、見た目の印象がこうも変わっていれば、戸惑って当たり前か。


 俺達は玉座の前へと進み出る。


 女王が声を掛けてくる。



「――――――――――」



 勿論、何を言っているかは分からない。

 例によって通訳してもらった。


 要約すると、容姿の変化に対する質問と、長らく姿を見せに来なかった事への文句だそうだ。


 女王の目元には光るものが見て取れた。

 思っていた以上に心配をかけていたらしい。


 俺は通訳を頼む。

 事の経緯と俺の現状についての説明を。


 女王がそれを聞き、内容を確かめるように、女性の【執行者】といくつか遣り取りを交わす。


 とりあえずは、承知してくれたらしい。


 その上で一つ、頼みごとを通訳してもらう。




 貴女の名前を教えて下さい、と。






以上、元救世主となった彼の物語は、これにて完結となります。


構想から実に二カ月余り、初作品がこうして無事終わりを迎える事が出来ました。

お読みくださった皆様、本当にありがとうございました。


後日、登場人物や能力一覧の更新を行わせていただきます。

また、活動報告にて、この作品に関する事と、今後の活動に触れようかと思います。

こちらも、また後日、改めて記載させていただくつもりです。


よろしければ、ご感想をいただけると嬉しいです。


それでは、改めまして、ここまでお読み下さり、誠にありがとうございました。

また、何れかの作品でお目に掛かれますと幸いです。

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