表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救世主は救わない  作者: nauji
第三章
58/60

第48話 隔絶

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 流石にそう何度も攻撃を行わせてはくれなかったか。


 俺は吹き飛ばされる体を、【リング】による重力制御で減速させてゆく。


 思い出すのは【嫉妬(しっと)魔神(まじん)】との戦闘だった。

 あの時、アイツは【転移(てんい)】後でも見て反応出来ると言っていた。

 当然ながら、【怠惰(たいだ)の魔神】も同じ事が可能だったのだろう。

 せめてもの救いは、致命傷を受けなかったことか。


 結局、雷撃の効果の程を試せなかったが、恐らくは効果はなかったことだろう。


 何か発想の転換とかが必要なのかもしれない。

 それこそ、俺の世界の兵器を再現してみせるような感じで、何か出来ないだろうか。




 眼下では、皆が必死に防戦を維持し続けているのが見える。


執行者(しっこうしゃ)】は、少女以外の全員が近接で対応しているようだった。

 その一人離れている少女が、今まさに、攻撃をしようとしているのが見て取れた。



純潔(じゅんけつ)


救恤(きゅうじゅつ)


勤勉(きんべん)


慈悲(じひ)



美徳(びとく)】を四つも使用してみせた少女。


 纏う漆黒の鎧が、淡く黄色に染め上がる。


 その手に構えているのは弓矢。


 弦が限界まで引き絞られてゆく。


 矢が放たれた。


 到達は一瞬。


 しかし、矢は弾かれてしまう。


 それにも構わず、少女は矢を次々と放ってゆく。




 他方では、老年の【執行者】が低い姿勢で槍を構えているところだった。



≪慈悲≫


謙譲(けんじょう)



 突き出された槍は、一つではなく数十となって怒涛の様に【怠惰の魔神】の身を打ち付けた。


 しかし、どれも僅かばかりも突き刺さる事は無い。




 壮年の【執行者】が両手持ちの大剣を振りかぶっている。



忍耐(にんたい)


≪勤勉≫


節制(せっせい)



 大上段からの一撃。


【怠惰の魔神】の頭へと直撃したそれは、しかし、効果は見られなかった。




 女性の【執行者】が上半身を捻り、大太刀を両手で腰溜めに構えている。



≪勤勉≫


≪節制≫



 横薙ぎの一閃。


 これも【怠惰の魔神】を傷つけることは叶わなかった。




【執行者】達は奮戦しつつも、有効打は与えられていない。


 このままではジリ貧だ。

 どうにかして【救世(きゅうせい)】を体内で発動させ、少しでも弱体化を図らなければならない。


 まずは先程仕損じた雷撃を見舞う事にする。


 都合よく上方に位置している事だし、このまま利用させてもらうとしよう。


 (てのひら)に力を集中させる。


 イメージするのは、全てを切り裂く雷撃。



霹靂(へきれき)



 世界を白く染め上げる。


 次いで、空気が裂けるような轟音が響く。


 直下の【怠惰の魔神】へと直撃する。


 光と音が止んだ後、やはり健在の【怠惰の魔神】がその場には居た。


 これで、光、高温、低温、雷、どれも効果なしとなった訳か。


 だが、必ずしも効果を発揮する必要は無い筈だ。

 例え効果がなくとも、【怠惰の魔神】の口を大きく開かせる事が出来れば良い。


 折角だ、このまま【霹靂】を連続で見舞ってやる。



≪霹靂≫


≪霹靂≫


≪霹靂≫


≪霹靂≫



 都合五つ目となる雷撃を叩きつけてやった。


 果たしてどうだろうか。


 眼下の【怠惰の魔神】と目が合った。



≪転移≫



 反射的に【転移】で撤退を選択。


 間を置かずして、先程俺の居た位置へと砲声が放たれていた。


【怠惰の魔神】の口が大きく開かれているのが見える。


 好機!


 その機を見逃さず、少年が素早く剣を口へと差し入れた。



≪救世≫


≪救世≫


≪救世≫


≪救世≫


≪救せ――≫



 少年が剣ごと吹き飛ばされた。


 だが、少年は確かに【救世】を体内で発動してみせた。


【怠惰の魔神】の様子に、しかし、()したる変化は見受けられない。


 想定通り、否、想定以上に、吸収している魂の総量は途方も無いのかもしれない。


 後、何度繰り返せば、弱体化することが叶うのだろうか。


 しかし、嘆いている暇はない。

 一回でも多く、【救世】を発動してやるしか手はないのだ。




 以降も、奮戦が続けられる。


 時折、口を開けさせる事には成功するのだが、流石に警戒されてしまったのか、上手く武器を突き入れる事は叶わなかった。


【怠惰の魔神】の力が弱まった印象は感じられない。

 焦燥感が皆にも襲い掛かっているのが分かる。


 俺は次に口が開く瞬間をひたすらに待つ。

 掌には、凝縮された雷撃が維持されている。


 武器を突き入れる事が叶わないとしても、雷撃ならば――。


 誰かの攻撃によるものか、【怠惰の魔神】の口が開かれた。


 砲声が放たれる。


 それに合わせるように、雷撃を叩きこむ。



迅雷(じんらい)



 速度重視の雷撃。


【嫉妬の魔神】と同じだとすれば、体内になら雷撃が通るかもしれない。


 果たして、【怠惰の魔神】は痺れを覚えたのか、僅かではあるが体を硬直させた。


 そこに剣が突き入れられる。



≪救世≫


≪救世≫


≪きゅ――≫



 再び、少年が剣ごと吹き飛ばされた。


 硬直時間が想定以上に短すぎる。


【救世】も僅かしか発動出来てはいなかった。


 かなり厳しい。

 せめて、口以外からも武器を体内へ侵入させ得なければ、手数が圧倒的に足りていない。


 それに、口ばかり狙っていては、相手に警戒されてしまうだけだ。



 あの硬い体表を貫ける何か……。


 ……確か、プラズマで金属を切断出来た筈だ。

 それを再現出来れば、あるいは、あの体表を切り裂く事が出来ないだろうか。


 詳細な原理は知る由もないが、確か、熱で溶かし気流で溶けた箇所を吹き飛ばす、みたいな仕組みだった筈だ。


 俺は両手の間に力を循環させ、次第に高速化させてゆく。


 加速、加速、加速、加速、加速。


 両手の間が凄まじい熱を帯びていくのが分かる。


 果たして、これで合っているのだろうか。

 そんな疑問が浮かびもするが、望む結果さえ得られれば、仮定の成否など問うまい。


 ……そろそろいいだろうか。


 両手の間に生じる雷光の線。

 そしてこれを……どうすればいいのだろうか。


 維持するには両の掌を向け合っている必要がある。

 これで切断しようとするなら、腕を振りかぶって、両手の間に対象を捉えねばならない。


 何だかイメージしていたモノとは違った。

 とはいえ、効果さえあれば、見た目も使い勝手も二の次だ。



≪転移≫


雷切(らいきり)



 遮二無二(しゃにむに)に両手を振るう。


 リーチが余りにも短すぎる。


 だが、不幸中の幸いと言うべきか、【怠惰の魔神】が俺に対し腕を振るってきていた。


 その腕の来る方向へ両手の位置を無理矢理合わせる。


 腕が俺に当たり、俺の体が吹き飛ばされた。


 駄目だったか!?


 距離を離された【怠惰の魔神】の姿を確認する。


 すると、その片腕が無くなっていた。


 切断した!?


 使い勝手は最悪に近かったが、期せずして、カウンターとして機能してみせたようだ。


 後は、腕の切断面に武器を突き刺す事が出来れば――。



 眼前に足が迫っていた。


 理解する間も無く、反射的に身を後ろに反らす。


 顔が蹴り飛ばされる。


 顔の表面が蹴りにより、削り飛ばされた。


 視界が一時的に失われる。



≪転移≫



 俺は出来る限り上空をイメージしてその場から逃れた。


 眼球の治癒を待つ。


 瞬間、背後に殺気。



傲骨(ごうこつ)



 俺の全身が赤いオーラで覆われる。


 殺気の方向へ体を向け、両腕を盾にし、衝撃に備える。


 両腕が一瞬で粉砕され、そのまま胴体へと衝撃が加えられた。


 俺の体が地表へと激突する。


聖衣(せいい)】による治癒が追い付かない。


 治る前に怪我が増やされてしまう。


 そこに更なる衝撃が降って来た。


【怠惰の魔神】が俺を追って落下して来ていたのだ。


 今度は両足が潰されてしまった。


 激痛に次ぐ激痛。


 最早声も出せない。


 更に殺気が俺に浴びせられる。


 轟音。


 ……しかし、衝撃は加えられなかった。



「――っくぅ、は、早く退避しなさい」


「――ぐくぅっ、貴様、さっさと退け、邪魔だ」


「――っ、腕を切られた事で、流石の【怠惰】も怒ったようですね」


「――重い重い重いー。さっさとどっか行ってくれないと、ボクこのままじゃ押し潰されちゃうよ」



 どうやら声から察するに、皆が俺を庇ってくれたようだ。



≪転移≫



 一旦、無明の闇へと離脱した。


 流石にここまでは追って来ない……筈だ。


 余り自信は無かったので、人の居ない場所を選んではおいたが。


 ともかく、【聖衣】の治癒を待たなければ――。



 途端、何かに頭を鷲掴みにされた。


 何かなどと、相手は決まりきっていた。


 ここまで追ってくるなんて――。


 思う間もなく、頭を掴まれたまま、どこかに叩きつけられた。


 未だ戻らぬ視界がホワイトアウトした。


 痛みは許容範囲を超えたのか感じられず、衝撃だけが伝わって来る。


 ヤバ、い……。


 流石にこのままだと、死ぬ。


 再びどこかへと頭を叩きつけられた。


 頭が(ひしゃ)げたのを感じる。


 ……これは、次で頭が完全に潰されるな。


 どこか冷静に分析している自分がいた。


 度重なる怪我により、【聖衣】の治癒は一向に進まない。


 骨ごと砕かれ、手も足も動かせない。


 ……クソッ、どいつもこいつも、寄ってたかって、俺の体を好き勝手に壊しやがって。


 思えば、世界を渡る度に、怪我を負っていた気さえする。


 いや、それこそ最初は、俺の世界でイヌザルに食われてからだろうか。


 世界の歴史上、俺程怪我した人間も居ないんじゃないだろうか。


 まぁ、普通なら何度となく死んでるしな。


 時間が間延びしているのか、中々最後の時は訪れない。


 だが、今なお頭は鷲掴みにされているのが分かる。


 ……これで終わりなのか?


 ……これが俺の死なのか?


 ……こんな何処とも知れぬ場所で殺されて終わるのか?


 ……こんな終わりを迎える為に、俺は、俺は。


 ……あぁ、ちくし――。


 そこで俺の意識は途切れた。






ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』
連載中です!

気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです

小説家になろう 勝手にランキング

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ