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救世主は救わない  作者: nauji
第三章
55/60

第45話 死守

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 上空から睥睨(へいげい)する少年の【執行者(しっこうしゃ)】。

 それに対し、宙を(にら)み付ける【嫉妬(しっと)魔神(まじん)】。


 どうやら、ようやく援軍が駆け付けて来てくれたらしい。

 これで少しは負担が減りそうだ。



「――ご無事……ではありませんね。大丈夫ですか?」



 すると、すぐ傍から声が掛けられた。

 そちらを見れば、そこに居たのはメイドさんだった。



「遅れてしまい申し訳ありませんでした。しかし、良くここまで持ち堪えましたね」


「……ははっ、間一髪でしたけどね」


「その僅かな時間をこそ、貴方がたの頑張りが生み出してみせたのですよ」


「火事場の馬鹿力ってヤツですかね。ともかく、来てくれて助かりました。ありがとうございます」


「いえ、お礼は不要に願います」


「……その台詞、久々に聞いた気がしますね」


「……そうでしたでしょうか? それで、まだ動けそうですか?」


「まぁ、何とか。【聖衣(せいい)】があるお蔭でゾンビアタックが可能ですからね」


「……? ぞんびあたっく、ですか?」


「あぁ、いえ、治癒任せに無茶出来るって感じです」


「……成程。しかし、致命の一撃を受ければ、間違いなく死んでしまします。くれぐれもお気を付け下さい」


「はい、肝に銘じておきます」



 こうして、メイドさんと会話を続けていられたのは、既に【嫉妬の魔神】がこの場には居なかったからに他ならない。


 奴は少年へと挑みかかっていたのだ。



「まさか、こんなにも早く、決着を付けられようとは思わなかったぜぇ?」


「まさか、こんなにも早く、再び貴様のその面を拝む羽目になるとはね。不愉快に過ぎるよ」


「「…………」」



 何かの力場でも生じているのか、両者の間の景色が歪んで見える。



「ここで討滅する!」


「ここでぶっ殺す!」



 両者が遂に激突する。



七美徳(ななつのびとく) 励起(れいき)



 少年の全身が白光に包まれる。



狂乱(きょうらん)



 対して、【嫉妬の魔神】の全身が赤いオーラに(おお)われる。



 ぶつかり合う両者。

 吹き飛ばされたのは少年の方だった。


 やはり、単独で敵う相手ではない。


 今回は退けるだけでは駄目だ。

【魔神】にこの世界の魂を吸収させない為にも、【執行者】にこの世界を消滅させない為にも、ここで仕留めてみせなければならない。


 何か方法はないだろうか。

 俺は先程の光景を思い出す。


【嫉妬の魔神】の口腔内へと剣を突き入れ、雷撃を食らわせた。

 その際、外部からでは効果の見られなかった雷撃が、体内からでは効果があったように見受けられた。


 ならば、体内からならば、他の攻撃も効果があるかもしれない。



「さっき、奴の口腔内へ雷撃を放った際、効果があったように見えました。もしかしたら、体内への攻撃は有効になるかもしれません」


「――そうでしたか。それは良い情報となるかもしれませんね。【伝達(でんたつ)】を使い、皆に共有しておきましょう」


「はい、お願いします」


「――おぃ、そろそろ準備は良いか? 早く行かないと、あのガキ死んじまうぞ?」



 声を掛けてきたのは【色欲(しきよく)の魔神】の少女だった。



「――そうですね、そろそろ私達も加勢に向かいましょう」


「よっしゃあ! さっさと【嫉妬】の野郎にお礼参りと行こうぜ!」


「はしゃぐのは結構ですが、また不意を突かれないように気をつけなさい」


「うっせぇ! もう行くぜ!」



溺惑(できわく)



 少女の全身が赤いオーラに覆われる。



赫怒(かくど)


純潔(じゅんけつ)



 次いで、メイドさんの全身も赤いオーラに覆われる。


 両者の姿が掻き消える。


 見上げると、【嫉妬の魔神】の周りに三者が集っていた。

 俺も向かおうと立ち上がり、しかし、その前に女性の【執行者】の安否を確認することにした。


 もう一つのクレーターへと向かう。

 その中心で、彼女は片膝をついた状態で居た。



「大丈夫ですか?」


「……えぇ、何とか、まだ動けそうです」


「武器は……何処かに飛ばされてしまいましたか……」


「そのようですね。私はそれを探してから向かいます。貴方は私に構わず、先に向かって下さい」


「……分かりました。では先に向かいます」


「はい、くれぐれもお気お付けて」


「はい、貴女も。それでは、また」



 彼女をその場に残し、俺も【嫉妬の魔神】の元へと急ぐ。



転移(てんい)



 そこでは、三者が【嫉妬の魔神】を囲み、絶えず攻撃を行っていた。


 少年が二剣を振り、メイドさんと少女が拳や足で攻撃を加えている。


 俺は接近するのを諦め、遠距離攻撃を行う事にした。


 イメージするのは、細い光。


 掌に集まる力を収束させてゆく。


 より小さく、より細く、より密度を増して。


 白熱したそれを解き放つ。



貫光(かんこう)



 極細の白光が【嫉妬の魔神】を襲う。



「ぐはぁっ!?」



 その体を貫いてみせた。


 全力で、且つ、収束させれば、あの【魔神】相手にも通用する。


 これで切れる手札が増えた。

 ようやく俺も戦力の一員と成り得そうで安心する。


 この時、俺は確かに油断した。


 その隙を見逃されることなどあろうはずもなく、俺の体が袈裟斬(けさぎ)りにされた。



「ギッ、ギャアァァァァ!?」



 頭と体を焼くような激痛が襲う。

 俺はほぼ左上半身のみとなって、地上へと落下する。


 落ちゆく俺を、【嫉妬の魔神】が見下ろしている。

 その手には、未だ【執行者】の長刀が握られていた。


 俺はあれで斬られたのか……。

 もし袈裟斬りではなく、唐竹などで斬られてたら、脳も心臓も両断されていたところだった。


 とにかく、体の修復を待たなければ――。


 そこに【嫉妬の魔神】が降って来た。


 刀を逆手に持ち、俺の脳天を貫くつもりらしい。



≪転移≫



 その姿を視認した瞬間、俺は反射的に離脱を(はか)った。


 危ないところだった。

 あらかじめ逆袈裟で斬られていたら、【リング】が無くなり、【転移】が出来なくなるところだった。

 そうすれば、今の一撃で俺は死んでいただろう。

 薄氷を履むが如き、命の危険が連続する。


 一撃加えたぐらいで、この有様か。

 倒す前に、殺されてしまいかねない。


 魔術だけに頼っている場合ではない。

傲慢(ごうまん)】を使わないと、地力の差ですぐに押し負けてしまう。


 未だ治りきらない体を地面に横たえる。

 追って来る気配は今のところ、ない。


 考える。

 体を動かせない今だからこそ、勝つ為の方法を。


【嫉妬の魔神】に有効だったのは、二つ。

 体内への攻撃と、全力を一点集中させた攻撃だ。


 前者は接近を、後者は間合いと時間を必要とする。


 相手の力量を考えれば、二つとも、先程のように、こちらが致命傷を負いかねない。

 だが逆に、致命傷を(いと)わなければ、有効打は与えられるという事でもある。


 全力を体内にぶち込む。

 これが現状、最適解となるだろうか。


 先程の【貫光】を、収束ではなく、体内で拡散させてやれば、内側から崩壊してくれないだろうか。

 ……流石にそんなに簡単ではないか。

 もっとこう、最強火力的なモノがあれば良いのだが……。


 そろそろ体も治ってきた。

 また、皆の元へ向かうとしよう。



水晶眼(すいしょうがん)



「――っ!?」



 不味い。

 先程よりも街に近づいてる。

 下手をすると、街に被害が出かねない。

 どうにか場所を移させないと。



≪転移≫



【嫉妬の魔神】の周りを、四者が囲っていた。

 女性の【執行者】も既に合流していたようだ。


 俺は街とは反対側の位置へと陣取る。

 そして、こちらへと注意を引くために攻撃する。



≪貫光≫



 しかし、俺の攻撃は【嫉妬の魔神】を貫通しなかった。

 焦り過ぎて、力の収束が弱過ぎたようだ。


 だが、構わず連射する。

 今は、ダメージではなく、ヘイトを稼ぎたい。


 顔面を集中的に狙う。


 こっちに来い!

 そこから離れろ!


 俺の願いも空しく、場所は更に街へと近づいていく。

 俺の攻撃は全て無視されてしまっていた。


 不味い不味い不味い。


 手数で駄目なら、これならどうだ。


 俺は全身に雷を纏うイメージを浮かべる。


 より派手に、力を溜めているような見た目になるように。



雷鎧(らいがい)



 全身を幾筋もの雷が包む。

 更に雷の光量を上げてゆく。


 全身が白光に包まれた。


 これ見よがしに、両手を【嫉妬の魔神】へ(かざ)す。


 そして(てのひら)に力を集中させてゆく。


 ……どうだ?

 まだ、こちらに反応は見せないのか?




 俺の予想に反し、事態はより悪い方向へと転がってしまった。


【嫉妬の魔神】の姿が、その場に無い。


 一体どこに――?


 答えは背後からの衝撃により得られた。



「がはぁっ!?」



【雷鎧】が解除されてしまう。

 俺の体が吹き飛ばされる。

 それも、最悪な事に街側へと。


 正面から来ず、背後から来るとは!?

 そういえば、この戦闘中、背後からの攻撃が多かったようにも思う。


 だが、そんな分析も、今更手遅れだ。

 早くこの場から離れないと。




 まだ、最悪の事態は続く。


【嫉妬の魔神】は俺に向かって、今度は正面から迫り来る。


 俺の背後には街がある。


 避けるのは不味い。

 だが、食らうのも、吹き飛ばされるので不味い。


 もし、もしも、屋敷に被害が出てしまったら。

 その中に居る、誰かが怪我を負ってしまったら。

 女王が死んで――――。


 頭が真っ白になる。

 次いで沸き上がるのは、自身への憤り。


 ――絶対に、やらせるな。

 ――アイツを、ここで、どうにかするんだ。

 ――全力を出せ。

 ――ふり絞れ。

 ――出し惜しみなどするな。

 ――相手の好きにさせるな。

 ――もう、何にも、誰にも、奪わせるな。



傲骨(ごうこつ)



 俺の体が赤いオーラに覆われる。


 自ら、迫り来る【嫉妬の魔神】へと全速力で向かって行く。


 両者の接触までの間は一瞬。



≪転移≫



 接触の寸前で、数瞬前までの位置へと【転移】する。


 俺の眼前で、【嫉妬の魔神】の攻撃が振るわれる、が、こちらには当たらない。


 俺は攻撃が終わった直後を狙い、【嫉妬の魔神】の顔面を左手で鷲掴みにする。



≪転移≫



【嫉妬の魔神】を引き連れて現れたのは、無明の闇が占める空間。


 相手の姿が見えなくなる。


 しかし、俺は相手の顔を掴んでいる状態だ。


 そこに向かって、今度は右手を突っ込ませる。


 狙いは口。


 抵抗を無視して腕まで突き入れる。


 俺の持ちうる、最強火力を叩き込む。



救世(きゅうせい)



 それは、世界を消滅させる力。


 一発では終わらせない。

 連続して発動する。



≪救世≫



≪救世≫



≪救世≫



≪救世≫



≪救世≫



【嫉妬の魔神】の気配が弱まってゆくのを感じる。


 効果があったのか!?


 だが、ここで油断は出来ない。


 ひたすらに叩き込む。



≪救世≫



≪救世≫



≪救世≫



≪救世≫



≪救世≫





 どれほどの間、続けていたのだろうか。

 気が付けば、【嫉妬の魔神】の抵抗が止んでいた。

 その気配が急速に希薄になっていっている。


 ……まさか、消滅してきている?

 相変わらず、視界には何も映りはしない。


 だが、掴んでいる筈の手の感触や、突き入れている腕からの感触も、次第に希薄になってきていた。


 しばらくすると、何の感触も得られなくなってしまった。

 同時に、【嫉妬の魔神】の気配も消えてしまった。


 ……倒せた……のか?


 自身で成した事とはいえ、実感が湧かない。



≪水晶眼≫



【嫉妬の魔神】を探してみるも、やはり、その存在を見つけられなかった。


 更に幾分かの時間、その場に留まり、辺りの様子を伺ってみた。

 だが、状況に変化はなかった。


 もしかしたら、俺に気取られる事なく、先程の世界に戻ってしまっている可能性も在り得る。

 俺には皆との連絡手段がない。

 急いで戻ってみた方がいいかもしれない。



≪転移≫



 俺はその場を後にした。






22/08/04 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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お読みいただき有難うございます!

『勇者は転職して魔王になりました』
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