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救世主は救わない  作者: nauji
第二章
43/60

第33話 魔術

この作品はフィクションです。


重要語句は【】、能力使用時は≪≫で記載しております。

 屋敷内の侵入者への対処をし終えた使用人達が謁見の間へとやって来るまで、女王との遣り取りは続けられた。

 駆け付けた使用人達に、何やら生暖かい目を向けられてしまった。


 敵対国の王を仕留めたからといって、戦闘が終結した訳では無い。

 侵攻して来たのは二国と怪物達なのだ。


 騎士や怪物達の相手は女王や兵士達に任せて、俺は指揮系統を潰す事にしよう。

 差し当たっては、穀倉地帯の国の騎士団長と魔術研究所所長。

 そして、草原の国の国王といったところだろうか。


 先ずは、穀倉地帯の方を処理してしまおう。

 巨人の様な兵器が複数存在している可能性もあるし、他の兵器を用意している可能性もある。

 危険度が高いのはこちらの方だろう。


 女王にその旨を伝え終えた俺は、敵の捜索を開始する。

 本来であれば探すのに一苦労しそうではあるが、今回は問題無い。

大罪(たいざい)】を得た事による恩恵というか、何というか。

 ともかく、特徴さえ分っていれば、捕捉する事が可能になった。


水晶眼(すいしょうがん)


 騎士団長を捕捉する事が出来た。

 どうやら、騎士団と共にこの街中に進軍を果たしているようだ。


転移(てんい)


 騎士団長の眼前へと現れる。


 流石は騎士団長と表するべきか、俺を視認するよりも早く反射的に剣を抜き放ち、こちらを斬りつけてみせた。

 以前は対処する事が難しかったであろう剣速に対し、今の俺は反応してみせる。


 片手で白刃取りする。

 反応速度が以前のそれとは別次元の様にさえ感じられる。


 ようやく俺を視認した騎士団長は、驚愕をすぐに収めてみせた。


「貴様、やはり現れたか! 昨日の屈辱、ここで(そそ)がせて貰うぞ!」


 騎士団長は剣を手放し、俺へと殴りかかって来た。

 俺は掴んでいた剣を、相手の足の甲へと投げつけた。


 剣が足を貫く。

 痛みで騎士団長の動きが鈍くなる。


 俺は、迫る拳を外側へと払いのけ、胴体を正面から蹴りつける。

 騎士団長の体は蹴りの威力のままに、突き立った剣で足を裂かれ、吹き飛ばされる。



 今度は周りにいた騎士達が俺に反応した。

 全員即座に抜剣し、こちらに斬りかかってくる。


威圧(いあつ)


傲慢(ごうまん)】を用いて、周囲の動きを止める。

 斬りかかって来た騎士達は、皆一様に歯の根が合わず、体を震わせて立ち(すく)んでいた。


 周りの騎士達には構わず、騎士団長の元へと歩を進める。


 見れば、騎士団長は甲を縦に裂かれた足を引きずりながらも、こちらへと向かって来ていた。


「一体、何者なのだ貴様は!? やはり【魔術師(まじゅつし)】なのか!?」


「……だたの罪人ですよ、俺は」


「貴様が罪人なのは先刻承知だ! 馬鹿にしているのか、貴様は!」


「いや、そういう意味では無いんですがね」

「……貴国の王も俺が殺してしまいましたし、あながち間違いではないのかも」


「何を馬鹿な、【魔術機甲(まじゅつきこう)】に一個人が敵う訳がなかろうが!」


「まぁ、生憎と証拠は持ってきていませんが、国王が亡くなったというのは本当の事ですよ」


「戯言を! 貴様の妄言など、聞く価値も無いわ!」


「……それでは、問答は無用だと?」


 返って来たのは言葉ではなく、拳だった。

 俺は迫る拳に合わせ、殴り返した。


 拳が砕ける。

 無論、俺のではない。


 激痛に腕を引っ込めた騎士団長に対し、一歩踏み込む。

 腹部へと下から拳を叩きこむ。


 相手の足が地面から離れ、体が宙に浮く。

 強制的に息を吐き出させる。

 首を掴み、そのまま足が着かぬように持ち上げる。

 顔を真っ赤にして息苦しそうに(あえ)いでいる。


 俺は相手に問いかける。


「……助けて欲しいですか?」


 相手は藻掻(もが)きつつも、首を横に振ってみせる。


 俺は掴む力を強める。

 相手の顔が強まった苦痛に更に歪む。


「……許しを請いますか?」


 相手は気丈にも首を横に振る。

 赤から青へと顔色を変えながらも、頷きを返さない騎士団長。


「貴方の仕える国王は、俺がこの手で殺しました」

「今回の戦闘は勿論の事、国王不在のまま戦闘状態が未だに継続している責も、貴方が負う事になるのではないですか?」


 相手の抵抗が弱まる。

 それは、息苦しさ故か、それとも、意思の弱まり故か。


「速やかに戦闘行動を停止して下さい」

「拒否する場合、以降の降伏を認めず、貴国の侵略者全員を処断します」


 相手の身が震える。


「……これが最終通告です。降伏を認めますか?」


 相手の首が縦に振られた。

 俺はそれを確認し、手を離す。

 騎士団長は、激しく咳込みながらも、久方ぶりの酸素を(むさぼ)る。


屈従(くつじゅう)


【傲慢】を使用する。

 騎士団長は地面に平伏してみせた。

 これで、逆らう事はあるまい。


「貴国の全軍を、速やかに停戦させて下さい」


「……(かしこ)まりました」





 返事を聞き終えた俺は、次の標的へと思考を切り替える。


≪水晶眼≫


 相手はこの街には居ないようだった。

 その居場所こそが、研究所なのだろう。


≪転移≫


 そこは研究所というより、工場といった施設だった。

 高い天井に広い室内。

 雑多な機材が所狭しと置かれている。


 その場には、捕えられた怪物の姿もあった。

 ここで解剖するのか、あるいは、魔改造でもするつもりなのだろうか。


 目的の人物はこちらに背を向け、手術台のような物の前に立っている。

 手術台の上には、怪物の横たわる姿があった。


畏怖(いふ)


【傲慢】を使用する。

 相手――魔術研究所所長、且つ、【魔術師】らしき老人の体がビクリと震える。


「貴国の王は崩御し、騎士団長もこちら側に下りました」

「速やかにあらゆる作業を停止し、全ての研究に関する事物を処分して下さい」


「……そんな指示に従える筈があるまい」


「出来る出来ないで言えば、出来る筈ですが?」


「断じて否じゃ! 我ら【魔術師】こそが、最も優れた種なのだ! 我らの行い以上に優先される事象などありはせん!」


「御自慢の魔術とやらも、国王諸共に片付けてしまいましたが?」


「はっ、たかが【魔術機甲】如きを破ったぐらいで、調子に乗るでないわ!」


「……そんな物に国王を乗せたんですか?」


「あれは【魔術師】では無い者が扱う為に(こしら)えさせられた代物、【魔術師】が扱う為の代物ではないわ」

「魔術とはこういうモノを言うんじゃ!!!」


 振り向き様に手の平を向けられる。

 そこに何かが集まっている。


 青色の炎。


 嫌な予感に逆らわず、その場を横へと飛びずさる。


 放たれた青色の炎は、横に伸びた柱のように、その厚みを変えず真っ直ぐに伸び行く。

 施設の壁に当たったところで炎は消滅した。


 炎の通った後には、抉られた床や壁があった。

 溶けたというより、消滅したような有様だ。

 どれ程の高温だというのか。

聖衣(せいい)】で耐えられるかを試したいとは、とても思えない。

 食らう前に制圧するべきだ。


 今度は両手を腕ごと左右に広げてみせた。

 そこに青白い光が身を這うように生じる。


 青白い稲光。


 両手の五指の先から辺り一帯へと細く枝分かれした稲妻が放たれた。


 見て躱せる速度ではない。

 たまらず食らってしまう。


【聖衣】は耐えてみせた。

 だが、俺の無事を見て取った老人が雷撃を強める。


 目を開けられぬ程の光量を宿し、先程とは比べ物にならない極大の雷が俺を襲う。

 その様はまさにスーパーボルトの如し。


 俺を消し炭にしかけた【鬼神(きしん)】の放った雷撃に匹敵し得る一撃。

 俺は全身が炭と化す様を幻視する。


 雷が止む。


 戻る視界に、俺の姿は確かに在った。

 晒された高熱に湯気を上げてはいるが、かつての様に炭と化してはいなかった。


【大罪】により攻撃力だけでなく、防御力も強化されたのか。

 そういえば、【鬼神】の雷撃を食らった【色欲(しきよく)】の【魔神(まじん)】は【聖衣】が無いにも関わらず無傷だった。

【大罪】による力は余程埒外(らちがい)のようだ。


 俺の姿を視認し、流石の老人も驚愕の表情を浮かべている。


 例え無傷であろうとも、何度もは食らいたくない。

 これ以上、魔術と言う名の超兵器の使用を看過する訳にはいかない。


 (おそ)れだけでは行動を防げなかった。

 ではこれならどうだろうか。


畏敬(いけい)


 再び【傲慢】を使用してみせる。


 僅かにたじろいでは見せたが、こちらに従う様子は無い。

 先の騎士団長と同じように、心を折ってやらねば効きが弱いようだ。


 つまりは、魔術を真っ向から打ち破って見せなければならないと言う事か。


 これは【大罪】によるバフに期待する他あるまいか。


 ……いや、そういえば、魔術では宙に浮けないんだったか。

 それならば、手っ取り早く空から落としてやるとするか。


 俺は一息に老人へと距離を詰め、襟元を掴む。


≪転移≫


 すかさず老人を(ともな)って上空へと場所を移す。

 そして手を離した。


 見る間に小さくなってゆく老人の姿。

 ある程度地面へと近づいた段階で再び【転移】により、上空へと連れてくる。

 後は、これを繰り返してやるだけだ。




 この世界に落下する際に感じるマイナスGを娯楽とする文化はあるまい。

 今まで経験した事の無い感覚に晒され続ける老人。

 程なく、老人は降伏を申し出て来た。


 しかし、研究を破棄させたとしても、この老人のような【魔術師】をどうしたものだろうか。

 この世界における魔術は極めて威力が高く、殺傷性も当然高い。

 一個人が戦術兵器を有しているような状態だ。

 危険極まりない。


 出来れば命を奪わずに事を収めたかったが、想定した以上に【魔術師】は危険だ。

 能力を封印でも出来ればいいのだが。



 ふと、良い事を思いついた。

 いっその事、貰ってしまえば良いのだ。

 老人に触れ、【傲慢】を行使する。


接収(せっしゅう)


 ……ふむ、特に変わりはないな。

 全く持って魔術が使えるという実感が湧いてこない。


 老人は魔法の詠唱みたいな事は行っていなかった。

 イメージとか力の制御とか、専用の手順が必要なのかもしれない。


 一先ず、脅威度の高い二つは抑えたのだ。

 多少の時間の猶予は生まれたことだろう。

 それこそ、残りは女王の有する戦力で制圧可能かもしれない。


 ここは、少し時間が掛かるかもしれないが、老人から魔術を習う事にしよう。

 手札は多いに越したことは無いのは、今までの経験から身に染みている。

 いつまでも弱者に甘んじている訳にもいくまい。


 何せ天界には【魔神】が2体も居る訳だし。

【大罪】を有した以上、これからは【執行者(しっこうしゃ)】や【天使(てんし)】に狙われる事になるかもしれないし。

 自分の身を守る術を確かな物にしておきたい。


 それが例え、象と(あり)に等しい差であるのだとしても。






色々と書いていく上で調べものも増えていきますね。

今回だと、青い炎やスーパーボルト、マイナスG辺りですか。

本当に、インターネットが無いと調べ物も一苦労どころではないです。


青い炎は約1万度に達し、金属を蒸発させるそうです。

スーパーボルトは通常の雷と比較し、100倍以上も明るい雷を指すそうです。

マイナスGは、落ちる際のフワッという感覚ですかね。


21/07/20 誤字修正


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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『勇者は転職して魔王になりました』
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